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54.彼の獣耳
しおりを挟むディミドラに無理やり迫らなかったために退化した彼を、眺めながらディミドラはため息をついた。
「なら、発散したら・・・この耳は元に戻ってしまいますか?」
「・・・そうだな。戻るだろうな」
「・・・」
ディミドラはしばし考える。発散しなければ元には戻らない。でもお互いに触れ合うなら、発散する行為の流れにはなってしまうだろう。
だが、やはり触りたいと・・・。
「この状態が長く続けば、後でつらい状況になるのは君だがな・・・」
彼は不吉な事をいう。
「・・・それは、どういう意味ですか?」
「そのままの意味だ・・・。退化が長いと、理性が薄れる。番への執着が増し優しくなどしてやれなくなるぞ」
そういえば、ララもそのような事を言っていたなと思い出す。
「聞く耳を持たなくなると言う事ですね・・・」
それは確かにディミドラが受ける被害が目に見えていた。
「わかりました。どうせ元に戻さなくてはならないなら、しっかり堪能させてもらいます」
ただの獣になられるよりはマシかと考え、ディミドラは彼を見た。
ディミドラは抱え上げられ、バスタブからでてバスローブを着させられると、髪を軽く乾かされた後、ベッドに運ばれた。
彼はディミドラに尽す気満々なようで、既に甲斐甲斐しい。
ベッドの背もたれに彼は身体を預け、ディミドラを上に抱えて跨がせるように座らせた。そして、彼は獣耳をディミドラの前にさしだすように頭を下げてきた。
「触ってもらっていいぞ」
獣耳は柔らかくて、毛はふわふわだが弾力があった。ディミドラは感触に見た目にやられ、表情がにやけてしまった。
「ふわふわですね。気持ちいい・・・」
ディミドラは遠慮なく彼の獣耳を堪能した。
その間彼は動かず、身体が度々ぴくついていたのだが、ずっと耐えていた。
「そんなに好きか?」
「はいッ。私、動物と触れ合う事がことがなかったので、こんな風に触るのが初めてで。癒されますね」
「こっちは違う感情だがな・・・。そんなに好きなら早く俺の子を産んで愛でるといい、子は成長するまで耳と尾があるからな」
彼には勝負をして負けたので、婚約は前向きに見当はしようと思っていた。
だが、彼がいつまでも番の枠でしかディミドラを見ないならば、ディミドラにとっては幸せな結婚とはいかないかもしれない。
「獣人の子は更に可愛らしいでしょうね・・・」
彼と結婚すれば、番だから子は成しやすいだろうし、獣人の確率はかなり高いはずだ。
「デラと俺の子だ。可愛いだろうな・・・」
彼は、もう先の未来を考えているようだ。
「早く俺達の子を愛でるために、今から子づくりしようか」
彼は顔をあげ、ディミドラのバスローブに手をかけながら、耳もとで囁くのだった。
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