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38.彼の頭はめでたい

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 門番の人に伝言を頼み、ディミドラは以前リンジェーラと来たカフェで待つ事にした。


 ここでは以前、誘拐犯が声をかけてきたのだが、お店自体は気に入っていた。
 前回はたまたま狙われただけなのだろうが、彼をまつ短い間にまたしても、知らない男性に声をかけられてしまっていた。


 以前の事があり、この人もまた犯罪者だろうかと疑ってしまう。だが誘いを断ると、しつこくはされずに去っていく。

 彼がわかりやすいようにテラス席にしたのが、声をかけられてしまう原因かと思い移動しようかと考えていた。


 3人目に話かけてきた人は、いかにも女性なれしてそうなイケメンだった。顔はイケメンではあるが、ディミドラのタイプには該当しない。体格が不合格だ・・・。

 
 何やら彼は自分に自信があるのか、かなり積極的に話しかけてくる。
 自分的には、やはり体格はがっちりしていて、いかにも強いとわかる人が好きだなと考えながらあしらっていた。話しかけてくる彼から視線を外すと、真横にディミドラのタイプの体格をした人がいつの間にか立っていた。


「俺の女に話しかけるな」
 ディミドラがタイプだと思った体格の人は彼だったようで、いつもの口調に、声でわかった。 


 ディミドラの真横に立たれたため、近すぎて顔は見上げないと見えなかった。
 ディミドラがタイプの体格が彼だなんてと思ってしまったが、確かに彼はディミドラのタイプなのだから仕方ない。つい抱かれた時を思い出してしまう。


 ディミドラが別の事を考えている間に、目の前にいた男はいなくなっていて、代わりに彼が椅子に腰掛けていた。


「ぼーっとしてどうしたんだ?まさか・・・あの男に何かされたのか?」
 彼は鋭い目つきをして真剣に聞いてくる。


「別に何もされてませんよ。彼が一方的に話していただけですから、話の内容も覚えてはいませんし」
 違う事を考えていたので、話なんて聞いてはいなかった。


「そうか・・・相手にもなっていなかったようだな」
 彼は満足気に足を組む。その仕草に、やっぱりかっこいいんだよなぁと思わず考えてしまった。


「それで、これからどこかに行くんですか?その前にここで食事していきましょうか。まだでしょう?」


「そうだな。食べ終わったら行こう」
 何処に行くのかは知らされていないが、彼は女性関係があったのだから、こういうのも慣れているんだろうなと思った。
 それでつい、口を滑らせてしまう。


「そういえば、待ち合わせの場所で、女の子達が貴方の事を話してましたよ。貴方の周りにいる女性達を、実はタイプじゃないって言って振ってるって」

「もしかしてそれで、待ち合わせ場所をかえたのか?」
 少し彼の肩が揺れたのがわかる。今までの女性関係の事を私が知っていて動揺でもしたのだろうか・・・。
 

「貴方といるのを見られたら、いらぬ争いに巻き込まれそうだったので、場所をかえさせてもらいましたわ」
 


「俺を取り合う争いか・・・」
 だが、何故か彼は嬉しそうな表情をする。


「私は取り合うつもりがなくても、貴方の振り方に問題があるから被害にあうでしょと言っているんです」
 彼の勘違いを正すために、取り合うつもりはないとハッキリ言ってやる。


「そうだな・・・俺は既に君のだから、取り合うも何もないな」
 彼はやはり都合のいいように考えて、自分は私のものだからなと顔を赤らめた。

 何を言っても本当にめでたい頭をしているようで嫌になる。なんだか訂正するのも面倒くなり、運ばれてきた昼食を食べ始めるのだった。
 


 

 
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