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31.彼のテリトリー
しおりを挟む団長室に入ると、彼はディミドラの為に甲斐甲斐しく、もてなしを始めた。ソファに座るように手を引いて座らせ、彼自ら紅茶を入れてくれだした。
まさか、彼が自分で紅茶を入れてくれるとは思わずに、唖然としてしまい、ついリンジェーラがそばにいないのに気づくのが遅れてしまった。
気づいた時には、リンジェーラはまだ、ドアの前に立ったままで副長がリンジェーラに近づいて行くところだった。
「どうした?俺が入れた紅茶が気に入らないか?」
リンジェーラを気にしていたため、手が止まっていたため、彼は聞いてくる。
「いえ・・・頂きます。けど、私だけではなく、彼女にもきちんとした対応をしてください。あんなところに立たせたままなんて」
リンジェーラの方に視線をむける。
「すまない・・・。君が俺のテリトリーに来ただけで、つい嬉しくてな」
番しか見えないのは仕方ないのかもしれないが、巻き込まれたリンジェーラに申し訳ないと思った。
「私は、私が大切にしているものを、大切にしてくれない人は嫌いです」
「・・・・・・わかった。だが、彼女はゾディアスにかまってもらっているから、君は俺にかまわれてくれ」
そう言い、また甲斐甲斐しく、ディミドラに膝掛けを渡したりクッションをおいたり、また世話をやきだした。
ディミドラは普段、弟の世話を焼いたりする事はあっても、メイド以外に世話を焼かれる事はないため、なんだかかなりむずがゆかった。
彼は甘い視線をむけてもくるため、ディミドラはたまらずについ視線をそらす。
どうしたものかと思いながら、リンジェーラに視線をおくってみたが、苦笑いされてしまった。
さすがに助けてもらうのは無理そうだと思っている間に、彼は何故かディミドラの手を引いて、膝に座らせてきた。
「なッなにして、下ろして下さい。人の目があるのにッ」
ここは彼のテリトリーだろうが、この部屋にはリンジェーラも副長もいるのだ。いきなり密着する行動に出られ抗議する。
「二人きりならいいのか?」
彼はまた、人の揚げ足を取る事を言ってくる。
「違いますッ、人の話を聞きなさい!」
彼はがっちりとディミドラの腰を抑えて離さない。
「ちゃんと聞いている。ずっと聞いていたいくらいだ。ディミドラが足りないんだ。補充したい」
いつもは名前を呼ばないのに、こんな時は名前で呼んでくる。肩口に頭をおしつけてきて、匂いを嗅がれる。
「ちょッ、髪がくすぐったいッ、離れて」
ディミドラは抵抗するが、やはり力が違うために難しい。ましてや態勢が悪い・・・。
「この態勢が嫌なのか?」
嫌なのは、態勢だけではない。・・・何気に彼の手がディミドラのお尻をなでる。
「当たり前でしょ。私はこんなの許可してないわ。触るのも!」
ディミドラのお尻を撫でている手をつねってやる。
「許可か・・・。なら、そうだな・・・・・・膝枕をしてくれるなら、やめてやる」
だが彼は、やめる条件に別の事を要求してきた。今の体勢よりはマシではあるのだろうが・・・彼の条件をのむのは癪に触る。
「・・・・・・」
ディミドラは悩むが、その間にも彼は、両手で腰からお尻をいやらしく撫で続けてきた。こうしている間にも部屋にいる2人には見られてしまっている・・・と思うと耐えがたかった。
「・・・ッ、わかったから、いいかげんに撫でるのをやめてッ」
しつこい彼の手に、今の体勢よりは膝枕の方がましだと、了承してしまう。
「ゾディアス、ちょっと席を外せ・・・俺は休息をとる」
彼は副長に声をかけ部屋から出て行くように言った。見られていた事に恥ずかしくなり、両手で顔を覆い無意識に、彼の胸に寄りかかってしまう。
そして2人は、いつの間にか部屋から出て行っていたのだった。
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