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30.彼の扱い方

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 彼から上手く逃げて、リンジェーラと予定通りに行く予定だったお店を巡ってから帰った。

 帰ったのだが、リンジェーラは出先のことを伝え聞いた兄と父にお説教をされてしまう。ディミドラが絡んだ事で、彼が告げ口でもしたのだろうと思う。


 だからか、リンジェーラの父は明日にでも、彼にきちんとお礼を言いなさいとリンジェーラに言った。一応お礼は言って去ったのだが、手土産を持っていきなさいとも言われてしまっていた。
 

 おそらく彼はディミドラに逃げられたため、リンジェーラの方に圧をかける作戦できたのだろう・・・。手土産は逃げられる場合を考慮してなのだろうが・・・。
 

「リンジー1人だけじゃ行かせられないから・・・私も行くわ。嫌だけど」
 ディミドラは側で話を聞いていたため、リンジェーラと行くことにした。




 次の日、言われた通り、リンジェーラとしぶしぶだが、彼の元を尋ねた。リンジェーラが一緒のため騎士団本部に入れたのだが、嬉しくはない。

 団員が出迎えてくれ、団長室へ案内してくれる。団長室までの間に、案内してくれた団長はリンジェーラに詫びていた。


 どうやら知り合いのようだが、彼はリンジェーラに好意をよせているのだろう。部屋前まで案内してくれ、去り際に、副長に捨てられたら嫁にもらってやるからな、と言っていた。

 だが、彼は速攻でリンジェーラに遠慮しますと断られる。


「リンジーはモテるわね」
 案内してくれた団員がいなくなった後、部屋に入る前にディミドラはリンジェーラを見て言った。


「まあ・・・ある程度はね。デラだってモテそうだけど?」


「まぁ、こちらも・・・それなりにはね。でも自分より弱い人に興味はないわ」
 ディミドラはリンジェーラの言葉に謙遜はしなかった。リンジェーラは自分の容姿がいい事は知っているし、ディミドラも然りだ。


 部屋の前で話をしていたため、声で気づかれたのか、団長室のドアが中から開けられた。


「ほお・・・それなり。それはぜひ聞きたいな」
 開いたらドアからは彼が現れる。番への執着心丸出しな表情だ。


「あら、お耳がよろしいのね。そんな無駄な事をお聞いてどうするおつもり?」
 女の子の話に男が入ってくるのは野暮というものだ。


「別に、知っておきたいだけだ・・・。どうもしない」
 どうもしないという感じではなさそうだ・・・。大方言い寄った相手を把握して牽制でもしたいのだろう。獣人は独占欲が強い。


「なら知らなくても問題ありません。せっかく差し入れを持って来たのですから、部屋に入れてもらえます?それともお忙しいようでしたら、渡してすぐ帰りますが?」
 ディミドラの帰るという発言を聞き、彼はすぐに部屋への道をあける。


「入ってくれ」


「では、失礼します」
 ディミドラは室内へ歩みをすすめた。彼は相変わらずディミドラの手の上で転がされてくれる。

 扱いが簡単なのだ。番なのだから、何をしても嫌われはしないとわかっている・・・。今だって会えただけで嬉しそうにこちらを見ているのだった。



 



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