獣人の番!?勝手に結んだ婚約なんて破棄してやる!〜騎士団長の求愛と番の攻防〜【完結】

ドール

文字の大きさ
上 下
18 / 75

17.彼の思い違い

しおりを挟む


 彼から難なく逃げたディミドラだったが、彼は匂いで嗅ぎつけてすぐに追いかけてきた。ディミドラは匂いを誤魔化すために料理街を通ったりして時間をかせぎ、今日の目的であった魔道具の店に到着する。


 魔道具はあまり使った事はなかったが、髪色を変えたり、瞳の色を変えたりできるものがあるらしかったので、今日はそれを探しに来たのだ。
 姿をかえて、彼を騙して戦いを挑もうとディミドラは考えているのだ・・・。もちろん匂いでバレてしまうので、リンジェーラに誤魔化せる香りを頼もうと思っている。


 どうしても、彼の高い鼻をへし折ってやりたかったのだ。自分が守られるだけの女ではないことをしめしたかった。そして、自分が彼の脅威になりえるとも・・・思わせたかった。

 実際自分の力がどれほど通じるかは、絶対の自信はないが、簡単に負けるとは思っていない。

 
 無事に魔道具を購入し終えて、店から出ると、いきなり手を取られる。
 もちろん手を掴んできたのは、彼だった。



「随分と逃げるのが上手いな・・・だが最後は絶対に俺が見つけ出す」
 目的を果たしたので、そろそろ逃げ回るのは終いにする。


「獣人の方は嗅覚が優れているから、探し人は簡単に見つけられますものね。羨ましいですわ」
 匂いがあるからわかっただけだろうと言ってやりたい・・・。

 

「番の匂いは、特に魅力的で惹きつけられるからな。必ずみつけてやれるぞ。迷子になっても、みつけてやるからな、安心しろ」
 自信満々に彼は此方をみてくる。

 何に安心したらいいのかはわからないし、迷子になんてなるわけがないのに・・・。この男は、ディミドラの事を子どもと思っているのだろうか。子供扱いされるほど、そんなに歳は離れては見えないのに。


「迷子になんてなりませんから問題ありません。大して歳だって違わないのに、子供扱いしないでください」
 ディミドラは掴まれた手を払い除けた。今度は普通に手が離れる。


「人族で言うと俺は成人くらいだが、歳はすでに80超えているぞ。獣人は寿命が長い。特に上位種の獣人はさらに長くて150は超えるだろう。だから俺が君を子供扱いしてもおかしくはない」
 そういい、今後は完璧に子供扱いだと分かるように頭を撫でてきた。


「貴方が何歳だろうと・・・私はもう子どもという年齢ではないので、扱いをきちんとしてください。撫でるのは禁止です」
 関わりがなかったからか、獣人が長命というのをすっかり失念していた事が恥ずかしくなり、頭を撫でていた彼の手を払いおとした。


「現に8年前だったか、君の子ども時代を見ているのもあって、ついな。君は危なっかしい所がある」
 ディミドラは、彼が覚えていたのかと少し驚いた。


「そんな子どもの私を襲った、気狂いな獣人はどこの誰でしたかしらね」
 子供扱いする癖に、女として抱けるのかと思い、嫌味をかえしてやる。


「絵姿をみた時にはまだ幼いと思ったが、抱きたいとは思っていたぞ。俺が釣書を見て思うのは抱けるかどうかではなく、抱きたいかどうかだ。釣書はよく届くが1番の好みだった」
 

「私の釣書・・・?」
 自分の釣書なんてあったのかと思った。それに彼はディミドラを好みだと、抱きたいと思っていたと言った。


「君の父親から送られて来たぞ、知らなかったのか?」
 父が釣書なんて作って、送っていたのは知らなかった。大方父の事だから、この討伐に彼が来たのも手回しをしていたに違いないと考える。

 
「それに討伐後は、もともと君と見合いの予定だったじゃないか。見合いを了承しているという事は、受け入れる気があるということだろう」
 爆弾発言だ・・・。そんなのは父からは一言も聞いていない。ディミドラが求婚者を、ことごとく叩きのめして追い返すから、父が勝てる相手に釣書を送ったということだろう。

 
「すみませんが、私は聞いてません」
 彼は見合いをディミドラが承諾しているから、受け入れていると思い、番でもあって、勢いのままディミドラを抱いたということなのだろう。
 だが自分は知らされていないし、何も承諾はしていない。彼にしたら逃げるディミドラがおかしくみえただろう。もしくは結婚前に抱いたので、怒っているくらいにしか思っていないのかもしれない。



 彼はディミドラの発言で表情を曇らせるのだった。

 
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします

文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。 夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。 エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。 「ゲルハルトさま、愛しています」 ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。 「エレーヌ、俺はあなたが憎い」 エレーヌは凍り付いた。

断る――――前にもそう言ったはずだ

鈴宮(すずみや)
恋愛
「寝室を分けませんか?」  結婚して三年。王太子エルネストと妃モニカの間にはまだ子供が居ない。  周囲からは『そろそろ側妃を』という声が上がっているものの、彼はモニカと寝室を分けることを拒んでいる。  けれど、エルネストはいつだって、モニカにだけ冷たかった。  他の人々に向けられる優しい言葉、笑顔が彼女に向けられることない。 (わたくし以外の女性が妃ならば、エルネスト様はもっと幸せだろうに……)  そんな時、侍女のコゼットが『エルネストから想いを寄せられている』ことをモニカに打ち明ける。  ようやく側妃を娶る気になったのか――――エルネストがコゼットと過ごせるよう、私室で休むことにしたモニカ。  そんな彼女の元に、護衛騎士であるヴィクトルがやってきて――――?

獣人公爵のエスコート

ざっく
恋愛
デビューの日、城に着いたが、会場に入れてもらえず、別室に通されたフィディア。エスコート役が来ると言うが、心当たりがない。 将軍閣下は、番を見つけて興奮していた。すぐに他の男からの視線が無い場所へ、移動してもらうべく、副官に命令した。 軽いすれ違いです。 書籍化していただくことになりました!それに伴い、11月10日に削除いたします。

急に運命の番と言われても。夜会で永遠の愛を誓われ駆け落ちし、数年後ぽい捨てされた母を持つ平民娘は、氷の騎士の甘い求婚を冷たく拒む。

石河 翠
恋愛
ルビーの花屋に、隣国の氷の騎士ディランが現れた。 雪豹の獣人である彼は番の匂いを追いかけていたらしい。ところが花屋に着いたとたんに、手がかりを失ってしまったというのだ。 一時的に鼻が詰まった人間並みの嗅覚になったディランだが、番が見つかるまでは帰らないと言い張る始末。ルビーは彼の世話をする羽目に。 ルビーと喧嘩をしつつ、人間についての理解を深めていくディラン。 その後嗅覚を取り戻したディランは番の正体に歓喜し、公衆の面前で結婚を申し込むが冷たく拒まれる。ルビーが求婚を断ったのには理由があって……。 愛されることが怖い臆病なヒロインと、彼女のためならすべてを捨てる一途でだだ甘なヒーローの恋物語。 この作品は、他サイトにも投稿しております。 扉絵は写真ACより、チョコラテさまの作品(ID25481643)をお借りしています。

番から逃げる事にしました

みん
恋愛
リュシエンヌには前世の記憶がある。 前世で人間だった彼女は、結婚を目前に控えたある日、熊族の獣人の番だと判明し、そのまま熊族の領地へ連れ去られてしまった。それからの彼女の人生は大変なもので、最期は番だった自分を恨むように生涯を閉じた。 彼女は200年後、今度は自分が豹の獣人として生まれ変わっていた。そして、そんな記憶を持ったリュシエンヌが番と出会ってしまい、そこから、色んな事に巻き込まれる事になる─と、言うお話です。 ❋相変わらずのゆるふわ設定で、メンタルも豆腐並なので、軽い気持ちで読んで下さい。 ❋独自設定有りです。 ❋他視点の話もあります。 ❋誤字脱字は気を付けていますが、あると思います。すみません。

君は番じゃ無かったと言われた王宮からの帰り道、本物の番に拾われました

ゆきりん(安室 雪)
恋愛
ココはフラワーテイル王国と言います。確率は少ないけど、番に出会うと匂いで分かると言います。かく言う、私の両親は番だったみたいで、未だに甘い匂いがするって言って、ラブラブです。私もそんな両親みたいになりたいっ!と思っていたのに、私に番宣言した人からは、甘い匂いがしません。しかも、番じゃなかったなんて言い出しました。番婚約破棄?そんなの聞いた事無いわっ!! 打ちひしがれたライムは王宮からの帰り道、本物の番に出会えちゃいます。

番探しにやって来た王子様に見初められました。逃げたらだめですか?

ゆきりん(安室 雪)
恋愛
私はスミレ・デラウェア。伯爵令嬢だけど秘密がある。長閑なぶどう畑が広がる我がデラウェア領地で自警団に入っているのだ。騎士団に入れないのでコッソリと盗賊から領地を守ってます。 そんな領地に王都から番探しに王子がやって来るらしい。人が集まって来ると盗賊も来るから勘弁して欲しい。 お転婆令嬢が番から逃げ回るお話しです。 愛の花シリーズ第3弾です。

勘違い妻は騎士隊長に愛される。

更紗
恋愛
政略結婚後、退屈な毎日を送っていたレオノーラの前に現れた、旦那様の元カノ。 ああ なるほど、身分違いの恋で引き裂かれたから別れてくれと。よっしゃそんなら離婚して人生軌道修正いたしましょう!とばかりに勢い込んで旦那様に離縁を勧めてみたところ―― あれ?何か怒ってる? 私が一体何をした…っ!?なお話。 有り難い事に書籍化の運びとなりました。これもひとえに読んで下さった方々のお蔭です。本当に有難うございます。 ※本編完結後、脇役キャラの外伝を連載しています。本編自体は終わっているので、その都度完結表示になっております。ご了承下さい。

処理中です...