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9.私達の秘密
しおりを挟む胸の内を晒したあと、今度はディミドラが気になっていた事を質問してみることにした。
「貴方は何故、今日のパートナーと?彼は貴方の恋人?」
「いいえ、本当にただ都合が良かったのでしょう・・・パートナーは頼まれただけです。彼は獣人だから・・・私が結婚する事はないでしょう。私は・・・獣人が苦手なのです。正直、番だと言われて団長に捕まってしまったディミドラ様に同情致します。襲われたディミドラ様の事を聞いた時、団長を軽蔑致しましたし・・・本当はそんな人とは関わり合いたくはありません」
リンジェーラ嬢は獣人が苦手だと言った。彼の行動を軽蔑しているとも・・・こちらの事情を彼女は知っている。
彼が私との仲を取り持つように頼んだから、経緯を彼から聞いたのだと話してくれた。ディミドラが番なのは、誰にも話せない様に契約魔法を施されているとも・・・。
「貴方は、襲われたと表現したわね・・・。実際は担がれて攫われ、ベタベタに愛されたのだけど・・・まあ、それでも無理やりには変わりないけど。酷い言い方だと、襲われたね・・・。貴方も・・・経験が?」
リンジェーラ嬢の言い方から、彼女もかもしれないと思った。
リンジェーラ嬢こちらの問いに頷いた。
「私は10歳の頃に、複数の獣人に・・・未遂ではありますが、嫌な記憶です」
「そう・・・その年齢ならトラウマね。・・・決して他言はしないわ」
10歳ならば、獣人が苦手になっても仕方ないと思う。彼女はディミドラの秘密をまもってくれる契約まで結び、自分の秘密まで明かしてくれた。
「秘密を話させてしまって、ごめんなさい」
申し訳なさと、話してくれた嬉しさでリンジェーラ嬢の手を握る。
「私だけディミドラ様の秘密を知っているのは・・・不公平なので」
リンジェーラ嬢は恥ずかしそうにしていて、かなり好感がもてた。
「貴方は誠実なのね・・・。ねぇ、リンジーと呼んでもいい?私はデラでいいわ。秘密を打ち明けあったのだから・・・もうただの顔見知りではないと思うの!敬語もいらないわ。同じ伯爵位だし、年齢も同じでしょ?」
なんだか仲良くなりたくてつい、ぐいぐい距離を詰めてしまった。
「まぁ・・・その方が話しやすい、けど。いいのかな・・・」
彼女も受け入れてくれたのか、すぐに素がでた。
「お互いがいいならいいんじゃない?同じ歳の友達なんて嬉しい」
周りには同年代で友達と呼べる人はいなかった。討伐に参加するような令嬢と仲良くする人はいなかったから・・・。
だから、本当に嬉しいと思って、自然に笑みが浮かんでいた。
なのに、背後から殺気が彼女に向けられて飛んできたのだった。
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