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4.父は辺境伯
しおりを挟むルルの助言通りに街の料理街にある宿屋に身を潜めた。ルルは信用できるので、もし彼が探しに来ても話しはしないだろう。
騎士団は王都に帰ると言っていたし、数日たては引き上げているだろうから、合図を出すように指示していた。
2日後にはララから合図があり、一応警戒しながら屋敷に戻った。
追手はいなかったが、戻るなり早々、待ち構えていた父に捕まり執務室に連れてこられる。
「今まで何処にいた。勝手な外泊をするな」
いつもなら何も言わない父が珍しく、説教をしてくる。
「いつもは気にもしないのに、珍しいですね」
父が珍しく説教するから、長くなると思いソファに腰かけ、仕方なく相手をする事にした。
「ディミドラ・・・私の言いたい事が何か、わかっているのだろう」
父は私から言わせたいようだ。だが、こちらからは話を振る気はない。
「あら、何がですか?」
「・・・しらばくれるな。先日、騎士団の団長がお前を嫁にと言って来たのだぞ」
父は真剣な表情だ。
「だからどうしたというのですか?お父様は私との約束があるのですから、もちろん条件を突き付けたのでしょう?」
父は約束は破らない男だと思っている。
「だが・・・既に純潔はもらったと言われたのだ。それにお前は彼の番だと言うじゃないか」
父にはあまり知られたくない事実ではあるが、あの男は話したのだろう。辺境伯令嬢が純潔でないという事実は、婚期にはかなり痛手だ。
「上位種の白虎獣人で、騎士団団長の番だぞ・・・。誰よりも強いしお前の望む相手には申し分ない。地位だってあるし、あの見た目だ」
父は彼の強さに関しては、一目置いていたようで、彼を優良だと推してくる。父は根っからの武人だから、強い者が好きなのだ。
何より娘の好みを把握しているような口ぶり・・・。確かに彼の見た目が私の好みなのは否定しない。
「随分と勧めてきますね・・・。でも、私はあんな無理矢理な人だとは思わなかったので、もう会いたくありません。だから今まで逃げてたんです。攫って裸で屋敷に閉じ込めるような人と結婚なんて嫌です」
ディミドラははっきりと父に意思表示した。
「お前を閉じ込めるなら、縛り上げて檻にでも入れておかないと逃げられるに決まっているのにな。あの男も甘い・・・」
父が娘にする発言でなはないため、睨んであげた。
「彼は諦めが悪そうだからな・・・、私はお前の夫が彼なら賛成するつもりだが、嫌なら自分で彼をなんとかするんだな」
父は辺境伯として彼と身分的には近いのだが、彼を気にいっているようで、こちらに匙を投げて来た。
「随分と、酷いお父様ですね。本人が嫌だと言っているのに・・・」
「彼が嫌なら、全力で逃げるか、抗えばいい。仮にも辺境伯の娘だ。自分の事は自分で対処できるだろう」
「こういう時だけ、そのように言うんですから。辺境伯として、父として、たまには守ってくれてもいいのではないですか・・・」
父は娘に甘いというが、我が父にはその考えは当てはまらない。
何事も自分の身は自分で守れ、問題は自分でかたをつけるのが父の考えだ・・・。今まで甘やかされた事は記憶にない。
私を甘やかしていたのは母だけだったから・・・。だから弟を甘やかすのは、この屋敷では私の役目だと思っている。
「私がそのような父ではないことは、お前がよくわかっているだろう。それよりも、お前には辺境伯令嬢としての役目はしてもらわなければな」
父は役目と言って、戦勝パーティーを開くので功労者である彼のパートナーを務めるように指示してくるのだった。
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