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1.奴は騎士団団長
しおりを挟む身体が痛い・・・。
気怠くて、力が入りにくく、伝い歩くのがやっとだ。鏡の前に立つと身体の至るところにある赤い印が目につく。
私は昨日、王都から討伐のために来ていた、白虎獣人として噂が絶えない騎士団団長に抱かれた・・・。それも同意などなく、攫われるように、この見知らぬ屋敷に連れてこられて・・・。
討伐が終わって、騎士団と辺境部隊が集合したので、武装を解いていたら、いきなり目の前に彼が現れた。
クセのある黒い長髪を一つにまとめた、上位種の白虎獣人・・・獲物を、とらえたような目つきで見下ろし、その赤い瞳に私を映して・・・。
「俺の・・・番は、こんな所にいたのか」
彼が何を言ったのか、意味を理解する前に私は担がれた。
私は辺境伯令嬢として、夜会よりも魔物の侵入を防ぐため、日々鍛えて討伐に参加してきた。
身体強化の魔法にだって自信はあったし、いくつもの討伐で実績だってあったのに・・・。
こんなに簡単に攫われ、抵抗虚しく、あっさりといただかれてしまって、かなりの屈辱を味わった。
素手でなければ・・・きちんとした決闘であれば、ある程度は勝負できたはずだ。
だがそんな暇も隙もなく、ただ襲われただけだった。
それに自分は、結婚までは純潔を貫く派だったのに・・・。自分と勝負して自分より強い者の求婚しか受けないと、父に結婚の条件に関して、了承までさせていたというのにだ・・・。
だから、かなり悔しい・・・。
襲われたのは事実だが、彼は終始愛を囁きまくり、しつこいくらいの愛撫をしてきた。
初めが痛いだけで、あとは意識が飛ぶほどにイクという感覚を身体に覚えさせられた。
さすが女性関係の噂が辺境伯に届くほどだけある。彼の活躍や女性関係は辺境地であろうと街に行けば、社交場に出れば耳に入った。
彼に会ったのは、実はこれが2度目で、1度目は私が8歳の時だ。
あの時、私の母は弟を産んだ後の肥立ちが悪く、父が討伐に出発後に容態が悪化した。まだ間に合うと思い、私は馬に乗って1人で討伐に向かった父を追いかけたのだ。
父達は交戦中で、私が来たため魔物が標的を変えてこちらに向かってきてしまった。その時、いち早く魔物に襲われかけたのを助けてくれたのが彼だ。
今と変わらないクセのある黒い長髪を揺らして、魔物を倒す姿は雄々しくてかっこいいと思ったものだ。もしかしたら初恋だったのかもしれない。
・・・だが、今はどうだろう。あの時の彼が、こんなことをする人とは思わなくて、かなり失望した。あの時の彼は自分の中でかなり美化されていたのだろう。
彼は、私を何度も抱いて、身体中に証を残し、私の中に種を蒔いていった・・・。中から溢れ脚を伝うものが、その瞬間を思いださせた。
そして、自分をこんな風にした彼は、もうこの部屋にはいない。
「お前は俺の番だ・・・愛している。少し野暮用を片付けてくるから大人しく部屋で待っていろ」
起き上がれない私を残し、愛していると言って、部屋を出て行った・・・。
意識がはっきりしない中で思った事は・・・何が愛してるだ・・・ふざけるな、という怒りの感情だった。
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