2 / 75
1.奴は騎士団団長
しおりを挟む身体が痛い・・・。
気怠くて、力が入りにくく、伝い歩くのがやっとだ。鏡の前に立つと身体の至るところにある赤い印が目につく。
私は昨日、王都から討伐のために来ていた、白虎獣人として噂が絶えない騎士団団長に抱かれた・・・。それも同意などなく、攫われるように、この見知らぬ屋敷に連れてこられて・・・。
討伐が終わって、騎士団と辺境部隊が集合したので、武装を解いていたら、いきなり目の前に彼が現れた。
クセのある黒い長髪を一つにまとめた、上位種の白虎獣人・・・獲物を、とらえたような目つきで見下ろし、その赤い瞳に私を映して・・・。
「俺の・・・番は、こんな所にいたのか」
彼が何を言ったのか、意味を理解する前に私は担がれた。
私は辺境伯令嬢として、夜会よりも魔物の侵入を防ぐため、日々鍛えて討伐に参加してきた。
身体強化の魔法にだって自信はあったし、いくつもの討伐で実績だってあったのに・・・。
こんなに簡単に攫われ、抵抗虚しく、あっさりといただかれてしまって、かなりの屈辱を味わった。
素手でなければ・・・きちんとした決闘であれば、ある程度は勝負できたはずだ。
だがそんな暇も隙もなく、ただ襲われただけだった。
それに自分は、結婚までは純潔を貫く派だったのに・・・。自分と勝負して自分より強い者の求婚しか受けないと、父に結婚の条件に関して、了承までさせていたというのにだ・・・。
だから、かなり悔しい・・・。
襲われたのは事実だが、彼は終始愛を囁きまくり、しつこいくらいの愛撫をしてきた。
初めが痛いだけで、あとは意識が飛ぶほどにイクという感覚を身体に覚えさせられた。
さすが女性関係の噂が辺境伯に届くほどだけある。彼の活躍や女性関係は辺境地であろうと街に行けば、社交場に出れば耳に入った。
彼に会ったのは、実はこれが2度目で、1度目は私が8歳の時だ。
あの時、私の母は弟を産んだ後の肥立ちが悪く、父が討伐に出発後に容態が悪化した。まだ間に合うと思い、私は馬に乗って1人で討伐に向かった父を追いかけたのだ。
父達は交戦中で、私が来たため魔物が標的を変えてこちらに向かってきてしまった。その時、いち早く魔物に襲われかけたのを助けてくれたのが彼だ。
今と変わらないクセのある黒い長髪を揺らして、魔物を倒す姿は雄々しくてかっこいいと思ったものだ。もしかしたら初恋だったのかもしれない。
・・・だが、今はどうだろう。あの時の彼が、こんなことをする人とは思わなくて、かなり失望した。あの時の彼は自分の中でかなり美化されていたのだろう。
彼は、私を何度も抱いて、身体中に証を残し、私の中に種を蒔いていった・・・。中から溢れ脚を伝うものが、その瞬間を思いださせた。
そして、自分をこんな風にした彼は、もうこの部屋にはいない。
「お前は俺の番だ・・・愛している。少し野暮用を片付けてくるから大人しく部屋で待っていろ」
起き上がれない私を残し、愛していると言って、部屋を出て行った・・・。
意識がはっきりしない中で思った事は・・・何が愛してるだ・・・ふざけるな、という怒りの感情だった。
0
お気に入りに追加
569
あなたにおすすめの小説
【完結】番を監禁して早5年、愚かな獣王はようやく運命を知る
紺
恋愛
獣人国の王バレインは明日の婚儀に胸踊らせていた。相手は長年愛し合った美しい獣人の恋人、信頼する家臣たちに祝われながらある女の存在を思い出す。
父が他国より勝手に連れてきた自称"番(つがい)"である少女。
5年間、古びた離れに監禁していた彼女に最後の別れでも伝えようと出向くと、そこには誰よりも美しく成長した番が待ち構えていた。
基本ざまぁ対象目線。ほんのり恋愛。
国から見限られた王子が手に入れたのは万能無敵のS級魔法〜使えるのは鉱石魔法のみだけど悠々自適に旅をします〜
登龍乃月
ファンタジー
「どうしてこうなった」
十歳のある日、この日僕は死ぬ事が決定した。
地水火風四つの属性を神とする四元教、そのトップであり、四元教を母体とする神法国家エレメンタリオの法皇を父とする僕と三人の子供。
法皇の子供は必ず四ツ子であり、それぞれが四つの元素に対応した魔法の適性があり、その適性ランクはSクラスというのが、代々続く絶対不変の決まり事だった。
しかし、その決まり事はこの日破られた。
破ったのは僕、第四子である僕に出るはずだった地の適性ランクSが出なかった。
代わりに出たのは鉱石魔法という、人権の無い地の派生魔法のランクS。
王家の四子は地でなければ認められず、下位互換である派生魔法なんて以ての外。
僕は王族としてのレールを思い切り踏み外し、絶対不変のルールを逸脱した者として、この世に存在してはならない存在となった。
その時の僕の心境が冒頭のセリフである。
こうした経緯があり、僕としての存在の抹消、僕は死亡したということになった。
そしてガイアスという新しい名前を授けられた上で、僕は王族から、王宮から放逐されたのだった。
しかしながら、派生魔法と言えど、ランクSともなればとんでもない魔法だというのが分かった。
生成、複製、精錬、創造なども可能で、鉱石が含まれていればそれを操る事も出来てしまうという規格外な力を持っていた。
この話はそんな力を持ちつつも、平々凡々、のどかに生きていきたいと思いながら旅をして、片手間に女の子を助けたり、街を救ったり世界を救ったりする。
そんなありふれたお話である。
---------------------
カクヨムと小説家になろうで投稿したものを引っ張ってきました!
モチベに繋がりますので、感想や誤字報告、エールもお待ちしています〜
俺、悪役騎士団長に転生する。【11月9日発売につき11月頭削除】
酒本 アズサ
ファンタジー
「お兄ちゃん怒……貴様ら叱責されたいのか!」前世は八人兄弟の長男だった青年の物語。
八人兄弟の長男で、父が亡くなり働く母親の代わりに家事をこなして七人の弟達の世話をする毎日。
ある日弟が車に轢かれそうになったところを助けて死んでしまった。
次に目を覚ますと図書館で借りた小説そっくりな世界の騎士団長になってる!
この騎士団長って確か極悪過ぎて最終的に主人公に騎士団ごと処刑されるんじゃなかったっけ!?
俺の部下達はこれまでの俺のせいで、弟達より躾けがなってない!
これじゃあ処刑エンドまっしぐらだよ!
これからは俺がいい子に躾け直してやる、七人のお兄ちゃんを舐めるなよ!
これはそんなオカン系男子の奮闘記録である。
◇ ◇ ◇
毎日更新予定、更新時間は変更される場合があります。
カクコン参加作品のため、少しだけカクヨムが先行してます。
君は番じゃ無かったと言われた王宮からの帰り道、本物の番に拾われました
ゆきりん(安室 雪)
恋愛
ココはフラワーテイル王国と言います。確率は少ないけど、番に出会うと匂いで分かると言います。かく言う、私の両親は番だったみたいで、未だに甘い匂いがするって言って、ラブラブです。私もそんな両親みたいになりたいっ!と思っていたのに、私に番宣言した人からは、甘い匂いがしません。しかも、番じゃなかったなんて言い出しました。番婚約破棄?そんなの聞いた事無いわっ!!
打ちひしがれたライムは王宮からの帰り道、本物の番に出会えちゃいます。
婚約破棄されなかった者たち
ましゅぺちーの
恋愛
とある学園にて、高位貴族の令息五人を虜にした一人の男爵令嬢がいた。
令息たちは全員が男爵令嬢に本気だったが、結局彼女が選んだのはその中で最も地位の高い第一王子だった。
第一王子は許嫁であった公爵令嬢との婚約を破棄し、男爵令嬢と結婚。
公爵令嬢は嫌がらせの罪を追及され修道院送りとなった。
一方、選ばれなかった四人は当然それぞれの婚約者と結婚することとなった。
その中の一人、侯爵令嬢のシェリルは早々に夫であるアーノルドから「愛することは無い」と宣言されてしまい……。
ヒロインがハッピーエンドを迎えたその後の話。
異世界で狼に捕まりました。〜シングルマザーになったけど、子供たちが可愛いので幸せです〜
雪成
恋愛
そういえば、昔から男運が悪かった。
モラハラ彼氏から精神的に痛めつけられて、ちょっとだけ現実逃避したかっただけなんだ。現実逃避……のはずなのに、気付けばそこは獣人ありのファンタジーな異世界。
よくわからないけどモラハラ男からの解放万歳!むしろ戻るもんかと新たな世界で生き直すことを決めた私は、美形の狼獣人と恋に落ちた。
ーーなのに、信じていた相手の男が消えた‼︎ 身元も仕事も全部嘘⁉︎ しかもちょっと待って、私、彼の子を妊娠したかもしれない……。
まさか異世界転移した先で、また男で痛い目を見るとは思わなかった。
※不快に思う描写があるかもしれませんので、閲覧は自己責任でお願いします。
※『小説家になろう』にも掲載しています。
数多の想いを乗せて、運命の輪は廻る
紅子
恋愛
愛する者を失った咲李亜は、50歳にして異世界へ転移させられた。寝耳に水だ。しかも、転移した先の家で、訪ねてくる者を待て、との伝言付き。いったい、いつになったら来るんですか?
旅に出ようにも、家の外には見たこともないような生き物がうじゃうじゃいる。無理無理。ここから出たら死んじゃうよ。
一緒に召喚されたらしい女の子とは、別ルートってどうしたらいいの?
これは、齢50の女が、異世界へ転移したら若返り、番とラブラブになるまでのお話。
16話完結済み 毎日00:00に更新します。
R15は、念のため。
自己満足の世界に付き、合わないと感じた方は読むのをお止めください。設定ゆるゆるの思い付きで書いているため、深い内容ではありません。さらっと読みたい方向けです。矛盾点などあったらごめんなさい(>_<)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる