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後日談
後日談:母の威厳とは
しおりを挟む「シリウス様・・・私、もっと母親として威厳を保つ事にしますッ」
あの日から数日後、リーディアはシリウス様へ断言した。
シリウス様は訳がわからないと言った表情をしている。リーディアは、数日前にユーシスと出かけた時の事を話した。
話を聞き終えたシリウス様は、複雑な表情をしている・・・。
「つまり、若く見られて嫌ではなかったが、母親だと納得させられなかった事が問題なんだな・・・?それで母としての威厳か?」
「はいッ。私は子供達の母親としても見られたいのです」
「で?母親の威厳をどのようにしていくのだ?」
「・・・・・・子厳しい母でしょうか?」
実際にどうしたら、威厳がでるのかはわからないが、身近な義母であるシルヴィア様を思い浮かべた。
「子に厳しいと威厳がある母か?」
「私の母は幼い頃の記憶しかありませんが、常に優しくて温かい存在だったので・・・威厳とは無縁です。ちょっとシルヴィア様を思い浮かべました・・・」
「私の母にも威厳はない・・・あの人は自由なだけだ。あの人を真似して欲しくはないし、あのようにはなってほしくない・・・私はディアはディアのままで充分だと思うぞ」
「・・・でも」
「なら・・・子供たちに話をするから、こっそりと意見を聞いてみるか?」
リーディアはシリウス様の提案にのる事にした。今日はユーシス以外は屋敷に揃っている為、シリウス様が聞けば答えてくれるだろう。
シェリーの部屋が1番近かったので、リーディアは後ろに控えてこっそりと話を聞いた。
「シェリーは勉強しているのか、えらいな。お母様が最近少し悩みがある様なんだか、シェリーにとってのお母様について聞いてもいいか?」
「はい!私のお母様は、とっても綺麗で、苦手といいながら社交もされているし、剣術だってできて・・・シェリーも、お母様みたいになりたいと思ってます。剣は無理だけど、皆んなに優しくできて、社交もできる大人になりたいと思うから、いっぱいお勉強します。お母様は、シェリーのお手本です」
シェリーは満面の笑みで言い切る。リーディアは後ろで聞いて泣きそうになった。
その次は、訓練場にいた次男のキールに話しを聞いた。
「母上は・・・、剣術の訓練の時にこっそり見学している時がありますね。たまに、アドバイスをくれたり、実演してくれます。女性であのように実力があるのを尊敬します。母に認めてもらえるようになりたいと思っています・・・もちろん、父上も尊敬していますよ。だから、2人の尊敬するべき剣と魔法の両方を学んでいるのです」
キールはリーディアを尊敬してくれていると言う・・・きちんとシリウス様へのフォローも忘れないのはさすがだ。
だが、実演と言った時、シリウス様はリーディアの方に視線を向けてきたので、気づかないふりをしておいた。
最後に三男のシエルを探すと、温室に居た。シリウス様が温室に来るのが珍しいのか、嬉しそうに駆け寄ってきた。
シリウス様は同じ質問をシエルにもする。
「母上ですか?いっぱい薬草の事を教えてくれますね。母上は物知りで一緒にいて、とても勉強になります。母上が、僕の母上だったから、好きな事を見つけられて、得意な事を伸ばす事ができてると思います。剣は嫌いではないけど、好きな事ではなかったから・・・それより怪我をした人が気になって、父上に鍛えられた魔法量もあるし、治癒師を目指したいと思うようになりました」
シエルもキールと似たような事を、将来を見据えて話してくれた。
母として、子の役に立つ手本には慣れているのかなと思えた。
部屋に戻ってシリウス様は、私を母親として良い母だと言ってくれた。
「少しは納得できたか・・・威厳とは他人からみたものだが、わからないやつにはわからなくてもいい。子が親の何をみて尊敬するか、親の威厳は子が親を尊敬に値するかで決まる。自分の誇れるものを子に教えていけばいい・・・。それで、この間の話しだが、あれはただ君が若くみられただけだ・・・。気に病む必要はない」
シリウス様は、リーディアの手を握る。
「はい・・・ありがとうございます。シリウス様」
リーディアはシリウスへ寄り添い、触れ合うだけの口付けをした。
「それに、君は私の妻だ。以前と変わらないわけじゃない。以前より、さらに綺麗になっている・・・」
シリウス様はリーディアの髪を指に絡めて、軽い口付けを続ける。
「ふふ、シリウス様は褒めるのがお上手になりましたね」
くすぐったい気持ちになり、シリウス様の昔との違いを言葉にする。
「私は昔とは対して変わっていないさ・・・変わったのは君に対してだけだ。愛しいと思える存在ができたからだな。それに、私はお世辞は言えないからな・・・全て本当の事だ」
なんだか、シリウス様の雰囲気が甘くなりつつあるのを感じる。
「だから、本当の事を言おう・・・私には君は変わらず私だけの妻でいて欲しい。母であっても、君は私のだ」
シリウス様は返事をする前に、悪戯な笑みを浮かべて、すぐに口付けを深いものにしてくるのだった。
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