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後日談
後日談:息子とお出かけ
しおりを挟む今日はシリウス様のお誕生日が近いため、学園の休日で帰宅していた息子のユーシスと一緒に街へ出掛けた。
ユーシスは午後は友達と街で待ち合わせがあるらしいので、その時間までは付き合ってもらう事にした。
15歳になるユーシスは、父親であるシリウス様にますます似てきている。髪の色が違うのと、他人に対しての対応の違いがある以外は外見もよく似ていた。
成長も早く、身長は既にリーディアを越して、シリウス様においつきそうだった。
「母上、アレはどうでしょうか」
シリウス様には、普段身に付けていられそうなものをプレゼントしようと考えていると、ユーシスがシリウス様とリーディアの色が混じった飾り紐を見つけて、声をかけてきた。
手にとり、眺める・・・。
「いいわね・・・でも、2人の色のだなんて、恥ずかしいわ」
既に夫婦で、婚約者でも恋人ではない・・・。気持ちは昔とは変わらずだが、贈り物にするのに、これはさすがに・・・躊躇われた。互いの色を送り合うのはよくあるか、混じり合う色は・・・なんだがシリウス様が暴走してしまいそうで身震いする。
「父上は喜ぶと思いますよ・・・とても」
ユーシスはわかって言っているのだろうか・・・優しい笑みになんだかシリウス様が重なって見え、残念な気持ちになった。
「・・・喜んでくれるでしょうけれど、喜び過ぎそうなのは・・・ちょっと」
リーディアは悩む。
「では、他も見ますか?私は約束があるので、長くは付きあえませんよ?1人で出かけるのは父上が心配されるので、控えて貰わないと困ります」
「あら、ユーシスはお父様の味方なの?そっくりな顔でシリウス様みたいな事を言わないでちょうだい。貴方は私の息子で、分身ではありませんよ」
リーディアはシリウス様が2人になった気がしてしまい、ユーシスの頬を突いた。
「はぁ・・・、それはわかっていますが、こんなところを見られたら勘違いされますよ。頬を突くのはやめてください」
ユーシスは口で嗜めてくるが、リーディアの手を払ったりはしなかった。
「?何を勘違いされるの?別にシリウス様は息子に妬いたりしないと思うわよ?・・・それにしても、柔らかかったほっぺもいつの間にか大人になってしまって」
リーディアは、昔を思い出して、ユーシスの腕にしがみついた。
「そうではなくて・・・」
ユーシスは、シリウス様にそっくりなため息をつく。ユーシスが何をいいたいのかわからなかったが、問う前にユーシスに声がかかった。
「ユーシス!」
ユーシスの友達だろうか、見慣れない青年2人が声をかけてきた。
「・・・まだ時間じゃないだろ、なんでいるんだ」
ユーシスは何故かリーディアを隠すように青年達の前に出た。
「お前との約束の前に、早く出てぶらついてたんだよ。寮のランチじゃなくて、外で食べようと思ってさ」
どうやら、今日の約束していた学友のようだ。
「ところで、その可愛い子、妹?妹にしちゃ髪の色が違うか?」
彼らは、ユーシスの背に隠されたリーディアを左右から覗きこんで質問してきた。なんだか行動がそっくりだ。
「妹はまだ8歳になったばかりって言ってただろ。もしかして彼女?お姉さんか?、いや姉はいなかったはずだな」
「妹さえ紹介してくれないし、わかんないよなぁ。俺ら本当友達か?」
なぜかユーシスは返事をせず無言だ。
「・・・返事してくれねーッ、俺悲しい」
ユーシスは普段見ないような冷めた目つきをして、項垂れた彼をみていた。
「やっぱ彼女じゃねーの?さっきのいちゃつき具合ならさ」
もう1人の彼がそういうと、項垂れていた彼の顔があがる。
「令嬢達が荒れ狂うな・・・楽しみだぜ」
項垂れていた彼は、先程とは違い、今度は企むような表情だった。
彼らの選択肢に母親はないのだろうか・・・。彼らの勢いは止まらず、返事がないのに、互いに疑問をぶつけ、解決していた。そろそろ、ユーシスに彼らを紹介してもらおうと視線を向けるのだが。
「彼らは無視していきましょう」
ユーシスは何故か、リーディアを紹介せず、隠したまま去ろうとする。
「ちょーっと待った!本当に彼女なのかッ、ユーシスにッ彼女ができたら困るんだッ!ウチの妹が泣く!」
「俺のとこもだ!」
彼らの妹たちは、ユーシスのことが好きという事だろうか。
「・・・黙っていればいいだろう。それに彼女ではない」
「何ッ、なら俺に紹介して」「俺も!」
やっと自己紹介できると思い再度ユーシスを見上げる。ユーシスはため息をついて、迫っていた彼らに少し離れろというと、彼らを紹介してくれた。
「彼らは、一応学友で・・・どちらも伯爵家次男のナッシュ、ダグラスだ。魔導師団への入隊を希望していて、性格はこんな感じに煩いが、魔法の腕前はいいやつらです」
ユーシスに友人を紹介されるのは初めてで、ユーシスも少し口調がぶっきらぼうだ。家にいる時とは違う男の子らしさが新鮮だった。
その後は、きちんと母親だと紹介してもらったが、何故か彼らは納得しなかった。しかし、シリウス様が帰宅が遅いと現れて、いつものように触れ合いが多いエスコートをしだしたので、彼らは納得したようだ。
まだ自分が若く見られる事に対しては嬉しい気はしたが、母親だと信用してもえないのはなんだか情けなく感じた。もっと母親らしく、威厳的なものを身につけなくてはいけないと考えらせられたのだった。
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