好きな人は兄のライバル〜魔導師団団長編〜【本編完結】

ドール

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後日談

後日談:不機嫌な夫  R15

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 シリウス様は大変不機嫌な様子で現れた。周りを巻き込むほどの魔力の漂わせ方だ・・・。

「何をしているんだ・・・ディア。ここには来るなと言っていたはずだろう。それにその服装はなんだ」
 シリウスはリーディアの服装に眉を顰めた。


「今日はキールの訓練を見に差し入れを持ってきただけです。副団長様に勧められたので、キールのお手並みを体感できました」
 リーディアは、シリウスに動じず答える。

 
「キール、お前まで何をしている・・・母親に剣などむけるな。傷つけたらどうするんだ」
 今度は、キールがシリウスに、鋭い視線を向けられる。


「父上のお怒りはごもっともですが、私が相手をしないと、副団長が代わりに相手をされるとおっしゃられたので、仕方なくお相手した次第です」

「そうか・・・だが、次はまず連絡をとばせ」


「わかりました」 


「まぁまあ、師団長。息子の成長をみるのに手合わせは良い案だと思いますよ」
 副団長のエイダンが仲裁に入ってくる。

「男同士がやるなら問題はない。妻はだめだ」
 

「私とて、自分の娘とするくらいです。親が子の成長を確かめアドバイスするのは悪い事ではないはずですよ。キールも今回は良い指摘をしてもらっていましたし、いい手合わせだったでしょう」

「確かに」
 キールは遂返事をしてしまい、シリウスに鋭い視線を向けられた。


「ダメなものはダメだ。大切な妻を傷つけたくない。ディアもなぜ約束を破るんだ」

「約束をした覚えはありません・・・あなたがダメだと言っていただけで、了解した覚えもありません」
 リーディアは、大切な妻という単語に、気持ちが絆されそうになったが、だったら心理的に傷つけられたのはいいのだろうかと、シリウス様には罰を受けてもらおうと、つき話す様に返事をした。


「・・・だが、今まで私が言った事は守っていただろう・・・」
 シリウス様の口調が不安げに変わる。

「貴方が嫌がるから・・・貴方に嫌われたら嫌だから、いいつけを守っていただけです」
 シリウス様は、無言でリーディアに近づき、手を引いて魔法陣を使用した。



 転移した場所は自宅のバラ園だった・・・。リーディアは驚きはしない。これもリーディアの作戦のうちだったのだから。シリウスを怒らせて2人きりになる作戦だ。


「さっきの、嫌われたら嫌だから約束を守っていたといういったな。なら、今は嫌われてもいいと言うことか?私に愛想が尽きたのか・・・どうなんだ」
 シリウス様は切なげな目をしてリーディアを見つめてきた。


「それは貴方でしょう・・・私と碌にまともな会話もせず避けておいて、あんなに放って置かれたら愛想も尽きると思いませんか・・・」
  リーディアは愛想なんか尽きていないが、頑張って冷たく接する。


「避けてなんかいない・・・私とて、嫌われたくないから近寄らなかっただけでだな」
 シリウス様の目が泳ぐ。

「それがおかしいのですッ、私は何度も話をしようとしました」 
 リーディアは言い返す。

「だが、それは・・・また嫌いと言われるかもとだな・・・思って」
 シリウス様は変わらず語尾が弱く、はっきりしない。リーディアはシリウスの態度に感情が溢れて我慢できなくなる。


「だから・・・その事で私は・・・謝ろうと思っていたのに、貴方に嫌いだなんて言ってしまったからッ、私は本気で嫌われてしまったかもと思って・・・苦しかったのに、貴方は話もしてくれなくて・・・ッ、こんなにッ、こんなに貴方を愛しているのに、どうしていいかわからなくなってッ」
 リーディアは途切れ途切れだが、なんとかシリウスへ気持ちを伝えながら、涙がこぼれた。


「わかった・・・もう、泣くな。名前で呼んでくれ、もう逃げないから、私の愛しいディア」
 シリウス様はリーディアを見つめる。

「シリウス様・・・」

 シリウス様はリーディアの涙を拭い、口づける。優しく何度も啄む様に続けられ、角度を変えて段々と深く口づけを交わした。


「愛している・・・ディア。この世でただ1人・・・私が愛するのはディアだけだ」
 2人は気持ちが昂るまま、愛し合うのだった。
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