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後日談

レティシア視点

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 「ディア、お兄様。いらっしゃい、わざわざお祝いにありがとう」
 今日は、リーディアと兄が出産祝いに、来てくれている。


「出産後だっていうのにシアは、元気そうね」

「ええ、問題はないわ。ディアったら全然来てくれないんだから、寂しかったわ。お兄様に監禁でもされてるのかと思っちゃった」
 冗談で言ったつもりだったが、リーディアは苦笑い、兄は視線を背けている。


「あら、相変わらず仲がよろしいようね。お兄様はいいかげん、ディアを拘束するのを控えた方がよろしいですよ。束縛が強いと嫌われてもしりませんからね」


「そんな事はない・・・。一人で出歩かないようにさせているだけだ。それに、そんな事で、ディアは嫌ったりしない・・・はずだ」
 兄はリーディアにちらりと視線をむけた。


 相変わらずリーディアもシリウスに甘い。にっこりしている。きっと兄を可愛いとでも思っているのだろう。
「シリウス様が一緒に出かけてくれるから、今のところは大丈夫ですが、お茶会くらいは外出許可を許して頂かないと、困りますね。いろいろと・・・」

 
「まぁ、お茶会くらいは・・・だが、毎回きちんと行き先を言っていくなら・・・許そう」


「ありがとうございます。シリウス様、何かあればちゃんと言いますし、呼びますから」
 リーディアはやはり、兄に甘い・・・。兄の希望をくんで譲歩してくれる。

「呼ばれた事は一度もないがな・・・」

「呼ばずとも対処出来ることはなるべく、手を煩わせたくはないので、本当に必要な時に呼びますから・・・ね?」

「そんな時だけではなく、呼び出しても構わないと言うんだ・・・会いたい時でもいい」
 兄は、リーディアと2人の空間を作りあげて周りが見えなくなりつつある。

「ほとんど一緒だから、寂しくはならないので、呼び出しはしませんよ。たくさんシリウス様と一緒なので、私は幸せですから」
 リーディアも、ここが何処だかわからなくなりつつあるようだ。

「私も、君とずっと一緒居たいと思っている。仕事が無ければ・・・後任はエミリオに任すか」
 
「あら、貴方の代わりは誰にも務まりませんよ。・・・いるとしたら、ユーシスが成長したら、代わりになるかもしれませんけど」
 
「そうだな・・・次の後釜はユーシスかもしれないな。私が直々に鍛えているのだからな」

 そろそろいいだろうか。2人は随分仲が良い。そして親バカらしい・・・。


「お兄様・・・私、いるんですけど。そろそろ視野を広げてもらえますか」

「ん?ああ・・・そうだったな。すまない・・・ついな」
 兄は歯切れが悪い。

「ごめんなさい、シア・・・。つい、いつもの感じで・・・」
    いつもなのか・・・。リーディアが兄と仲が良くて幸せそうなのは嬉しいが、やはり兄のかわりようには目をつぶりたくなる。

 昔は、自分を1番に優先してくれていた兄が、こうも愛妻家になるなんて思わなかった。
 令嬢達から人気はあったが、令嬢なんて相手にしなかった兄が、リーディアを溺愛するほどになるとは予想がつかなかった。兄をとられても、それがリーディアだから許せるが、兄にリーディアがとられるのはやはり、許せそうにない。

「お兄様・・・私を無視した罰として、先に一人でお帰りくださるかしら。私ディアと2人でたくさん会えなかった分お話がしたいわ」
 兄ににっこりと笑顔をむけてみる。

「なッ、私だけを追い出そうというのか!兄に対してあまりにも酷くないか・・・私は妻のそばを離れ気はないぞ」
 兄はもう妹のお願いは聞かないようだ・・・ならば。

「あら、それは残念だわ。お兄様を喜ばせようと思いましたのに・・・私の新作、ディアに夜に着てもらって感想を聞きたかったのだけど・・・」
 チラリと透け感のある生地を、ちらつかせる。

「・・・・・・」
 兄はじっと動かず、凝視している。

「普段こんなの着たがらないでしょうけど・・・私の新作だものね。ディアなら拒否しないわ。いつかの、お兄様が目撃した時のようにね。あの時より凄いのを作ったのに、お兄様にもみてもらえなくて・・・残念だわ」
   
「すまない、ディア。用事を思い出した。少し席を外す。帰るときに呼ぶように・・・シア、まかせたぞ」
 兄はそういい、さっと転移魔法で姿を消した。

「ということで・・・ディア!さっそく試着しましょう!そして採寸よ!」
 兄も帰たし、リーディアと2人で気分は上々だ。


 時間の許す限り、ディアを独り占めして付き合ってもらった。ちゃんと夜に新作を着るように念を押してから、兄を呼んだ。

 そして、ちゃんと次からは、自分とリーディアとの時間を設ける事を約束させてから帰した。

 後日しっかりと、新作の感想を聞かせてもらおうと楽しみにするレティシアだった。
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