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後日談

ユーシス視点:手合わせで怪我を要求する父

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 私はユーシス=ウィンザー。

 今日は魔導師団団長である父と、手合わせのため演習場を、貸し切っている。
 
 母は前回父が、やり過ぎて、私に怪我を負わせたため、手合わせをする時は必ず付き添う様になった。

 怪我自体はたいしたことはなかったが、父を止められるのは母だけだと思っているため、申し出は有り難かった。

 父はムキになる時があり、息子の自分ではまだ、父の本気には敵わない。さすが師団長だけあり、魔法の才も、魔力量もずば抜けていた。

 幼い頃から、父に鍛えられ、魔力量を増やされたため、魔力量は多いのだが、父には追いついてはいない。父は自分より過酷な鍛え方をしたのだろう。

 家にいる時は、あまり凄さはわかりにくいが、いざ戦闘になると敵にまわしたくない相手だと言われるのも頷けた。

「シリウス様、今日は息子に怪我をおわせない様に手合わせして下さいね。怪我をおわせないようにするのも、シリウス様の力量ですよ。私は息子の怪我の手当てはしたくありませんからね」

 母は父にクギをさす。

「そうだな。気をつける。ディアが気にかけるのは私だけで充分だ。しっかり見ていてくれ」

 実は今日、父に言われていた任務がある。父に怪我を負わすという任務を・・・。つまり父は、私が怪我をした時の母が看病している様子を見て、自分も看病されたくなったようだ。
 滅多に怪我を負う事はない父は、看病されたことなどない。
 
 怪我を負わされる相手は、息子なら許せると思ったようだ。父は尊敬しているが、母の事になると残念な感じになる事もある。今日に始まった事ではないし、妻を大切にしている父は好きだった。

 
 結果はというと、父の指示通りに怪我は負わせたのだが・・・母は、私を褒めるだけという、父の期待した展開にはならなかった。

 父は、だいぶ残念そうだったが、家に帰り父達の部屋を通ると、会話が聞こえた。

「シリウス様そんなに拗ねないで下さい。怪我は左手に少しではないですか」

「少しではない、左手が不自由だから看病してくれ」

そんな会話が・・・。

「利き手ではないのですし、擦り傷でしょうに、塗り薬を塗っていれば治りまッ」

「冷たい事をいうな、ディアは優しい私の妻だろう。それに、もう夫婦の時間だろ」

「シリウス様ッ急に手を引かないで下さいッ」

 倒れ込むような音がし、一切の音が遮断された感じになった。おそらく父が遮断の魔法を使用したのだろう。つまりは聞いていたことが、ばれているということだ。

 怒られはしないが、早々にこの場から立ち去ることにした。
 
 今後も父に振り回される事は多いだろう。親の仲が良すぎるのは悪いことではないと、ユーシスは思う。良すぎてはた迷惑な事はあるが、自分はこの環境を気にいっている。

 父の様に、大切な人を見つけることができる事は素晴らしいと、ユーシスは羨ましいと思うのだった。
 

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