好きな人は兄のライバル〜魔導師団団長編〜【本編完結】

ドール

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後日談

後日談:娘に嫉妬

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 双子を産んでから5年後、シルヴィア様待望の女の子が産まれた。
 最初は、息子達の小さい時と変わらない態度だったシリウス様は、娘のシェリーが1歳を迎えるあたりには、態度が変わっていた・・・。

 さすがシスコンだっただけある。今度は立派な親バカ・・・娘バカになりつつあった。
 
 仕事はさっさと終わらせ、転移で速攻帰ってくる。リーディアではなく、シェリーの所にだ。そのためなのか、シェリーにもリーディアの腕輪と同じ物を足首に既につけている。

 シェリーの所に行くと、既に帰宅しているシリウス様をしばしば見かけた。
 いつもはリーディアの元に転移し、出迎えのキスをしていたが、最近はしていない。
 
 確かに一歳になる娘はとても可愛い。シリウス様の髪色でウェーブがかかり、シリウス様と同じ瞳、リーディアを小さくした感じだ。
 歩き方もたどたどしく、手をひかれながら歩く。まだ言葉は難しいが、誰を呼んでいるかはわかる。
 
 シリウス様を父と認識し、見れば毎回笑顔で寄ってくるのだから、たまらないのだろう。

 リーディアとしては、シリウスが娘ばかりにかまうため、放っておかれて寂しい。
 長男のユーシスは学園に通っていないし、双子は競うように訓練にあけくれ、同じくシェリーを可愛がっていた。
 
 時にはシリウス様と、シェリーを取り合いし乳母を困らせている。

 娘より構ってもらおうとしても、やはり無理そうだ。リーディアはシリウス様に構って貰えずに、段々ストレスが溜まりつつある。
 
 シリウス様から止められていた剣を振るっても気づかれもしない。身体を動かす事で、紛らす日々だった。


 娘と外で散歩をしていると、急にシリウス様が帰ってこられ、娘を抱き上げて王城に行ってくると言われ、さっさと転移してしまった。

 リーディアは急に1人にされてしまい、ため息をつく。シリウス様はあまりにも自分を放置しすぎではないか・・・寂しく感じたが、1人でいると段々と怒りが湧いてきてしまった。

 部屋へ戻り、外さないようにと言われた腕輪を置く。

 ドレスから、ズボンスタイルの乗馬服に着替え出かける準備をする。次女には乗馬にでたとは言わないように託けて・・・。

 シルヴィア様には、出かける事にした理由はきちんと話す。愚息が女心をわからないのだから、仕方ないと気分転換を、了承してくれた。
 
 それ以上に、シルヴィア様はリーディアの着ている乗馬服に興味をもたれたようで、帰ったら部屋に来る様に言われるのだった。


 まだ日は高い・・・。

 馬を走らせ、湖まで来た。久々の乗馬のせいか靴擦れしてしまったようだ。
 靴を脱いで、足を湖で休ませる。湖を眺めながら、今度は、子ども達も連れてきたいなと思った。 

 だいぶ気分転換できたので、シリウス様にばれないうちに戻る事にした。

 しかし、屋敷へ着くとシリウス様が門前で腕組みをされて、既にリーディアを待ち構えていた。
 リーディアは、足を庇うようにペースを落として帰ってきたため、シリウスよりも遅くなってしまったようだ。

「ディア・・・腕輪まで外してどこに行っていたんだ・・・」
 シリウス様は、やはりお怒りのようだった。

「少し乗馬をしに・・・。ちゃんとシルヴィア様に断りを入れました」
 リーディアは馬から降りようと、足をつくが、靴擦れのせいで少しバランスを崩す。
 
 シリウス様がすかさずリーディアを支えにきた。

「怪我をしたのか」
 すかさず、シリウスはリーディアの異変に気付いてくれれ、リーディアを抱えて屋敷へ歩き出した。

「シリウス様ッ、ただの靴擦れですからッ1人で歩けますッ」
 リーディアは、人目がある場所で抱えられて焦る。

「焦るくらいなら、私を心配させない事だ」
 シリウス様はリーディアを下ろす気はないようだ。
 
 リーディアはシリウスに心配してもらえて、久々に嬉しくて泣きそうになり、シリウス様の胸に顔をうずめた。

 部屋まで運ばれ、今は2人きりだ。シリウスはソファへリーディアを下ろしたが、リーディアはシリウスに抱きついて離れなかった。

「どうした?」
 シリウス様は、優しく聞いてくれる。

「シリウス様、ごめんなさい・・・私、シリウス様がシェリーにばかり構うから、シリウス様のいいつけをやぶってしまって・・・」

「それは・・・娘に嫉妬したと言うことか?」
 シリウス様に言われて、リーディアは自分の幼稚さに急に恥ずかしくなってしまった

「はい・・・。馬鹿みたいですね・・・自分の娘に嫉妬だなんて・・・。」
 リーディアは、シリウス様に呆れられてしまうかもと悲しくなり、涙が出てしまう。

「誰だとしても、私がシリウス様の1番でいたいのに、構っても貰えずに寂しくてッ、でもシリウス様が心配してくれるのが嬉しくてッ」
 リーディアはシリウスに甘えるように首に抱きつく。

「私の妻はいつまでも可愛いな・・・。寂しく感じさせていたのならすまない。シェリーが可愛いのも、ディアに似ているからだろうな。普段甘えない君に甘えられているようで構いすぎてしまった様だ」
 シリウスはリーディアの涙をキスをしながら吸い取る。

「君がこれから、私に甘えてくれるなら・・・シェリーにだけ構いすぎることはないだろう。」

 シリウス様はこの日を境に、リーディアをより構ってくれるようになった。しかし、娘に対しても構いすぎなのは治らず、リーディアはそのたびに、自分の方を構って欲しいと甘えている。

 けれど、シリウスがわざとリーディアに嫉妬させようとして、娘を構っている事に気づき、仕返しに今度はリーディアがシリウスを放置するのだった。
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