75 / 103
後日談
後日談:怪我
しおりを挟む結婚式の事でレティシアの元には、ご令嬢達からアドバイスを求める手紙が、たくさんきて困っていると、聞いていると、外が騒がしくなった。
何事かと、バルコニーから見てみると、ジルベルトに支えられながら、馬車から降りるシリウス様がいた。
いつもなら、魔法で帰ってくるのにと不安が押し寄せた。リーディアは、バルコニーから飛びおりようとてシリウスの元に向かおうとしたが、レティシアが抱きついてきてとめた。
「こらッ!そんなお転婆は、皆んなが見てるんだからだめよ!」
リーディアは早く、シリウスの元にかけつけたかった。シリウス様が顔をあげて、リーディアを視界にとらえ、無理をして笑顔で手を振ってくる。
レティシアは、庭まで駆け出しそうな様子のリーディアの手を引いて下に降りていく。
シリウス様の姿を、正面から見たとたんに、リーディアはレティシアの手を離して、かけよっていった。
「シリウス様ッ、怪我をされたんですか」
シリウスの左上半身と、左足に包帯がみえる。
「少しな・・・」
シリウスはリーディアの頬を撫でる。
「全然少しには見えません・・・何があったんですか。お兄様がいるという事は、お仕事中だったんでしょうが・・・。なぜ、お兄様がシリウス様に付き添って来られるのですか・・・」
リーディアは、兄が何かしてシリウス様に怪我を負わせたのではないかと思い、兄を睨んでしまう。
「シリウスは・・・俺を庇ったんだ」
ジルベルトが衝撃的な事をいう。
「シリウス様が・・・?」
リーディアは驚きで、シリウス様を凝視してしまった。
どうやら、魔物が大量発生したらしく、騎士団と合同で討伐にむかったらしい。
数が多く、中には物理攻撃が効かない魔物も紛れたりと、特殊なタイプもいたらしく、ジルベルトは囲まれているのに気づくのが遅れ、攻撃がよけきれない状態になったという。
「お兄様の不注意で、シリウス様が・・・」
「私が勝手にした事だ・・・ディア、責める必要はない」
シリウス様は、兄を庇って怪我をされた。だが、いつものシリウス様だったら、兄を庇ったりなどしないだろう。
兄が怪我をすればよかったとは言わないが・・・シリウス様の怪我を見ると、平然としてはいられなかった。
「わかりました・・・。とりあえず中に入りましょう」
リーディアは、シリウスを休ませるため中に入る様に促す。
兄は、シリウス様に肩を貸し、ソファに座らせる。リーディアはすかさず、兄をおしのけてシリウス様の隣に座り、メイドに指示を出した。
「お兄様、シリウス様を送って下さってありがとうございます。あとは、私が代わりますので、お兄様は責任をとってシリウス様の休みを申請してきてください」
リーディアは兄に有無をいわさず、追い出しにかかる。
レティシアは、リーディアが怒ってるのをみて、ジルベルトを急いでつれだすのだった。
2人きりになり、リーディアはシリウスを質問ぜめにする。
「痛みはありますか?傷は処置してもらいましたか?なんで兄の代わりに怪我なんてするんですか・・・ッ。手紙も届か なくて不安だったのに、いきなり怪我をして帰ってきてッ」
リーディアはつい責めるように言ってしまう。
「庇わなけば、あいつの顔にかかっていた。一応、魔法で身を守ったんだが、毒は防げなくてな。心配をかけてすまない」
シリウス様は、リーディアの手を握る。
「シリウス様が、兄を守ってくれた状況はわかりました。でも、だからってシリウス様が怪我をしてしまうのは嫌なんです。シリウス様は、私に自分を犠牲にするなといいました。シリウス様こそ自分を大切にして下さい」
「ああ、次からはそうする。・・・ディアが、私のために怒ってくれるのも、可愛いな・・・」
シリウス様は、リーディアに触れてくる。
「シリウス様・・・何を言ってるんですか」
「ディア不足でな・・・手紙を送れなかったのも、魔法のコントロールが乱されて、上手く使えないからなんだ」
「治るんですよね・・・」
リーディアは不安になってしまう。
「治るが、少し時間がかかるな・・・」
「わかりました。その間、私がサポート致します。ちょうど魔力の回復を助ける薬を作るのに、いろいろ試していてできたのが、あります。試してみてください」
「それは・・・実験台か」
シリウス様は苦笑いされるが、リーディアとしては早くよくなるならなってほしいので、実験台だとしても押し切る。
「無茶をされたのですから、私なりのお仕置きです」
「ディアは可愛いのに・・・お仕置きの内容は可愛くないな・・・」
「当たり前です。悪いものは入っていませんから、害はないはずです。まずは包帯をとって傷をみせてくださいね」
リーディアはシリウスの服を脱がせて、傷を確認する。
「これが・・・人体の魔力循環を狂わせるという毒ですね。なら、循環を良くして回復を助ける軟膏をぬって、前にあげた魔力回復を促進させる茶葉でお茶にしましょう」
リーディアは嫁いできてから、こちらでも魔力を注いで薬草を育てたり、シリウスの役にたてそうな事を考えて行動していた。
「あれか・・・確かにあれは効果が緩やかで、負担にはならなかったな、感想をいうのを忘れていたな」
シリウスはリーディアに介抱され、薬を塗って包帯をかえ、お茶を飲んで寝かされるのだった。
10
お気に入りに追加
515
あなたにおすすめの小説
どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします
文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。
夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。
エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。
「ゲルハルトさま、愛しています」
ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。
「エレーヌ、俺はあなたが憎い」
エレーヌは凍り付いた。

【完結】私が王太子殿下のお茶会に誘われたからって、今更あわてても遅いんだからね
江崎美彩
恋愛
王太子殿下の婚約者候補を探すために開かれていると噂されるお茶会に招待された、伯爵令嬢のミンディ・ハーミング。
幼馴染のブライアンが好きなのに、当のブライアンは「ミンディみたいなじゃじゃ馬がお茶会に出ても恥をかくだけだ」なんて揶揄うばかり。
「私が王太子殿下のお茶会に誘われたからって、今更あわてても遅いんだからね! 王太子殿下に見染められても知らないんだから!」
ミンディはブライアンに告げ、お茶会に向かう……
〜登場人物〜
ミンディ・ハーミング
元気が取り柄の伯爵令嬢。
幼馴染のブライアンに揶揄われてばかりだが、ブライアンが自分にだけ向けるクシャクシャな笑顔が大好き。
ブライアン・ケイリー
ミンディの幼馴染の伯爵家嫡男。
天邪鬼な性格で、ミンディの事を揶揄ってばかりいる。
ベリンダ・ケイリー
ブライアンの年子の妹。
ミンディとブライアンの良き理解者。
王太子殿下
婚約者が決まらない事に対して色々な噂を立てられている。
『小説家になろう』にも投稿しています
子持ちの私は、夫に駆け落ちされました
月山 歩
恋愛
産まれたばかりの赤子を抱いた私は、砦に働きに行ったきり、帰って来ない夫を心配して、鍛錬場を訪れた。すると、夫の上司は夫が仕事中に駆け落ちしていなくなったことを教えてくれた。食べる物がなく、フラフラだった私は、その場で意識を失った。赤子を抱いた私を気の毒に思った公爵家でお世話になることに。
(完結)貴方から解放してくださいー私はもう疲れました(全4話)
青空一夏
恋愛
私はローワン伯爵家の一人娘クララ。私には大好きな男性がいるの。それはイーサン・ドミニク。侯爵家の子息である彼と私は相思相愛だと信じていた。
だって、私のお誕生日には私の瞳色のジャボ(今のネクタイのようなもの)をして参加してくれて、別れ際にキスまでしてくれたから。
けれど、翌日「僕の手紙を君の親友ダーシィに渡してくれないか?」と、唐突に言われた。意味がわからない。愛されていると信じていたからだ。
「なぜですか?」
「うん、実のところ私が本当に愛しているのはダーシィなんだ」
イーサン様は私の心をかき乱す。なぜ、私はこれほどにふりまわすの?
これは大好きな男性に心をかき乱された女性が悩んで・・・・・・結果、幸せになったお話しです。(元さやではない)
因果応報的ざまぁ。主人公がなにかを仕掛けるわけではありません。中世ヨーロッパ風世界で、現代的表現や機器がでてくるかもしれない異世界のお話しです。ご都合主義です。タグ修正、追加の可能性あり。
勘違い妻は騎士隊長に愛される。
更紗
恋愛
政略結婚後、退屈な毎日を送っていたレオノーラの前に現れた、旦那様の元カノ。
ああ なるほど、身分違いの恋で引き裂かれたから別れてくれと。よっしゃそんなら離婚して人生軌道修正いたしましょう!とばかりに勢い込んで旦那様に離縁を勧めてみたところ――
あれ?何か怒ってる?
私が一体何をした…っ!?なお話。
有り難い事に書籍化の運びとなりました。これもひとえに読んで下さった方々のお蔭です。本当に有難うございます。
※本編完結後、脇役キャラの外伝を連載しています。本編自体は終わっているので、その都度完結表示になっております。ご了承下さい。
君は妾の子だから、次男がちょうどいい
月山 歩
恋愛
侯爵家のマリアは婚約中だが、彼は王都に住み、彼女は片田舎で遠いため会ったことはなかった。でもある時、マリアは妾の子であると知られる。そんな娘は大事な子息とは結婚させられないと、病気療養中の次男との婚約に一方的に変えさせられる。そして次の日には、迎えの馬車がやって来た。

皇太子夫妻の歪んだ結婚
夕鈴
恋愛
皇太子妃リーンは夫の秘密に気付いてしまった。
その秘密はリーンにとって許せないものだった。結婚1日目にして離縁を決意したリーンの夫婦生活の始まりだった。
本編完結してます。
番外編を更新中です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる