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52.オレンジの髪
しおりを挟むリーディアは、部屋を出て行ってしまったシリウス様を探した。
転移魔法で戻れるシリウス様が、帰らず行きそうな所といえば、兄のところだろうと見当をつけ、先程まで戦いが繰り広げられた庭へ急ぐ。
曲がり角を曲がった所で、リーディアは誰かとぶつかってしまった。
「すみませんッ」
ライナス様が、倒れそうになったリーディアを支えてくれる。
「そんなに急いでどうした。もう魔力は回復したのか?」
ライナス様は心配してくれていたようで、丁度様子を見にきてくれようとしていた、みたいだった。
「走れるなら、大丈夫そうだな。先程はいい情報をくれて助かった。感謝するよ。だが、君は無茶をしすぎるようだ。怪我がなくてよかったよ」
ライナス様は、先程のリーディアの機転に礼をいい、飛竜が群でやってきたことの原因を話してくれた。
どうやら、明日の討伐に参加する予定の者が、飛竜の卵を、巣から盗んで持ってきた事が原因らしかった。
あの飛竜達は卵を取り戻しに来たようだ。だとしたら悪いのは人間なのにと、罪悪感がわいた。
ライナス様は卵を持っていた参加者の者に厳く制裁をしたそうだ。
詳しくは聞かないでおいたが・・・。ライナス様の怒り具合から、無事ではすまないだろう。
その卵はどうするのだろうと思ったが、ライナス様は産まれたあとは野生に帰すか、無理なら保護する団体へ預けると言った。
現状把握のため、先程の庭に2人で向かった。
リーディアは、庭に着くと、信じられない光景をみるのだった。
ひどい惨状になった庭は、片付けをしている最中だった。
その中でシリウス様が、1人の令嬢の手をにぎっていた。
「ん?あれは、師団長ではないか。あの令嬢は子爵令嬢だな。名前は、わすれてしまったが、あの明るいオレンジの髪は忘れないな、あまり見ない珍しい色だ」
リーディアは、先程シリウス様が言っていたオレンジの髪の少女だと思った。
シリウス様が、あのように対応しているのを、リーディアは今まで見たことがなかった。
オレンジの髪の令嬢は、満更でもないようにシリウス様の手を握りかえして、見つめ合っている。
リーディアは、胸が締め付けられた。なぜ・・・と、シリウス様はなぜ、あの令嬢を探していたのか。
シリウス様の様子をみるかぎり、態度がいつもとまるで違い、不安が込み上げた。
ライナス様と、シリウス様達を見ているとシリウス様が視線に気づき、こちらを見た。
シリウス様は睨むような表情をし、口角をあげた。まるで嘲笑っているように・・・。
すぐにまた、令嬢の方を向き、もう振りかえりはしなかった。
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