上 下
50 / 103

49.魔力切れ

しおりを挟む

 「アイスニードル!!」

 飛ばされていたリーディアを、いつの間にかシリウス様が、背後から受け止め、攻撃魔法を唱えていた。

 飛竜は、急下降していたため、勢いよく氷の槍が体に突きささる。相手の反動を利用した攻撃で、勝負は一瞬で着いた。

「怪我は無いか」
 シリウス様はリーディアを抱えて地面に下ろしてくれる。

「はい、ありがとうございます。なぜ・・・ここに」

「シアが転移して来て、事情を聞いた。ここに来た事はなかったが、君のブレスレットの位置を確認してすぐそばに、転移したんだ。この状況でなぜ君は私を呼ぼうとしない、助けは必要なかったのか・・・?何のために渡したと思っている」
 リーディアはシリウス様からの言葉攻めにあう。

「シアを送ることばかり考えて失念していました・・・。それに、兄も来てくれると思っていたので・・・」
 シリウス様は、リーディアの発言で、さらに眉間に皺をよせる。

「君は、少し自分を優先すべきだ。それと、やつよりは私の方が頼りになるはずだ。現にやつより、早くかけつけられたのだからな」
 シリウス様は、兄へ視線を送る。

 リーディアの元に駆けつけようとしたジルベルトは、シリウスが現れたため、足をとめ、此方を見ている。

「そうですね。確かにそうかもしれません。兄よりもシリウス様の方が、危ないところを何度も助けてくれていますし、私にはとってシリウス様は、ピンチにかけつけてくれる王子様ですね」
 リーディアは、シリウス様を見上げて微笑んだ。

「さすがに・・・王子という柄ではないから、そのたとえは恥ずかしいからやめてくれ」
 シリウス様は、確かに恥ずかしいようで、視線は合わせてくれなかった。

「ディア、遅くなってすまない。怪我はなかったか」
兄が、近づいてきた。

 リーディアは兄の方へ歩もうとするが、急に目眩がしてふらついてしまう。

「魔力切れだな。休めるところに運ぼう」
 シリウス様は、ふらついたリーディアを横向きに抱え歩き出す。

「ちょっとまて、俺が連れて行く」
 シリウスがリーディアを運ぶのを、ジルベルトは止める。しかし、今回もシリウスは譲らなかった。

「私はそんなにやわじゃない。変わる必要はない。いいから早く行くぞ」
 シリウスはジルベルトの横をすり抜ける。シリウスがリーディアを落とすのを心配しての事ではなかったのだが、ジルベルトは呆れてしまう。

「落とす心配をしているのではない。婚約者でも、血縁者でもないお前が、ディアを抱えているのが問題なんだ。仮にもライナス様と婚約の話が上がっているのだから、問題になる行動はしないでくれ」
 
「どうせ、婚約はしないのだろう・・・問題はない」
 シリウスは譲らない。

「しないとしてもだ。断る理由と、言う時期があるんだ」
ジルベルトはシリウスをめんどくさいと感じる。

「もたもたしている方が、人目につくぞ。それに、シアとお前が結婚すれば、彼女とは親戚にはなるのだから、言い訳にはいいだろう」
 ジルベルトは、シリウスの発言に目を見開く。

 シリウスは、レティシアと自分との婚約を受け入れたのかと。
 あのシリウスが婚約式からのこの期間で、受け入れた発言を匂わせる事に、ジルベルトは驚愕し足をとめてしまった。

 シリウスはうるさく言わない、ジルベルトが付いてこないため、ジルベルトを待つことなくリーディアを部屋へ運ぶのだった。
 
 
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

アルバートの屈辱

プラネットプラント
恋愛
妻の姉に恋をして妻を蔑ろにするアルバートとそんな夫を愛するのを諦めてしまった妻の話。 『詰んでる不憫系悪役令嬢はチャラ男騎士として生活しています』の10年ほど前の話ですが、ほぼ無関係なので単体で読めます。

今夜は帰さない~憧れの騎士団長と濃厚な一夜を

澤谷弥(さわたに わたる)
恋愛
ラウニは騎士団で働く事務官である。 そんな彼女が仕事で第五騎士団団長であるオリベルの執務室を訪ねると、彼の姿はなかった。 だが隣の部屋からは、彼が苦しそうに呻いている声が聞こえてきた。 そんな彼を助けようと隣室へと続く扉を開けたラウニが目にしたのは――。

娼館で元夫と再会しました

無味無臭(不定期更新)
恋愛
公爵家に嫁いですぐ、寡黙な夫と厳格な義父母との関係に悩みホームシックにもなった私は、ついに耐えきれず離縁状を机に置いて嫁ぎ先から逃げ出した。 しかし実家に帰っても、そこに私の居場所はない。 連れ戻されてしまうと危惧した私は、自らの体を売って生計を立てることにした。 「シーク様…」 どうして貴方がここに? 元夫と娼館で再会してしまうなんて、なんという不運なの!

どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします

文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。 夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。 エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。 「ゲルハルトさま、愛しています」 ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。 「エレーヌ、俺はあなたが憎い」 エレーヌは凍り付いた。

王女、騎士と結婚させられイかされまくる

ぺこ
恋愛
髪の色と出自から差別されてきた騎士さまにベタ惚れされて愛されまくる王女のお話。 性描写激しめですが、甘々の溺愛です。 ※原文(♡乱舞淫語まみれバージョン)はpixivの方で見られます。

お嬢様はお亡くなりになりました。

豆狸
恋愛
「お嬢様は……十日前にお亡くなりになりました」 「な……なにを言っている?」

セレナの居場所 ~下賜された側妃~

緑谷めい
恋愛
 後宮が廃され、国王エドガルドの側妃だったセレナは、ルーベン・アルファーロ侯爵に下賜された。自らの新たな居場所を作ろうと努力するセレナだったが、夫ルーベンの幼馴染だという伯爵家令嬢クラーラが頻繁に屋敷を訪れることに違和感を覚える。

『別れても好きな人』 

設樂理沙
ライト文芸
 大好きな夫から好きな女性ができたから別れて欲しいと言われ、離婚した。  夫の想い人はとても美しく、自分など到底敵わないと思ったから。  ほんとうは別れたくなどなかった。  この先もずっと夫と一緒にいたかった……だけど世の中には  どうしようもないことがあるのだ。  自分で選択できないことがある。  悲しいけれど……。   ―――――――――――――――――――――――――――――――――  登場人物紹介 戸田貴理子   40才 戸田正義    44才 青木誠二    28才 嘉島優子    33才  小田聖也    35才 2024.4.11 ―― プロット作成日 💛イラストはAI生成自作画像

処理中です...