好きな人は兄のライバル〜魔導師団団長編〜【本編完結】

ドール

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49.魔力切れ

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 「アイスニードル!!」

 飛ばされていたリーディアを、いつの間にかシリウス様が、背後から受け止め、攻撃魔法を唱えていた。

 飛竜は、急下降していたため、勢いよく氷の槍が体に突きささる。相手の反動を利用した攻撃で、勝負は一瞬で着いた。

「怪我は無いか」
 シリウス様はリーディアを抱えて地面に下ろしてくれる。

「はい、ありがとうございます。なぜ・・・ここに」

「シアが転移して来て、事情を聞いた。ここに来た事はなかったが、君のブレスレットの位置を確認してすぐそばに、転移したんだ。この状況でなぜ君は私を呼ぼうとしない、助けは必要なかったのか・・・?何のために渡したと思っている」
 リーディアはシリウス様からの言葉攻めにあう。

「シアを送ることばかり考えて失念していました・・・。それに、兄も来てくれると思っていたので・・・」
 シリウス様は、リーディアの発言で、さらに眉間に皺をよせる。

「君は、少し自分を優先すべきだ。それと、やつよりは私の方が頼りになるはずだ。現にやつより、早くかけつけられたのだからな」
 シリウス様は、兄へ視線を送る。

 リーディアの元に駆けつけようとしたジルベルトは、シリウスが現れたため、足をとめ、此方を見ている。

「そうですね。確かにそうかもしれません。兄よりもシリウス様の方が、危ないところを何度も助けてくれていますし、私にはとってシリウス様は、ピンチにかけつけてくれる王子様ですね」
 リーディアは、シリウス様を見上げて微笑んだ。

「さすがに・・・王子という柄ではないから、そのたとえは恥ずかしいからやめてくれ」
 シリウス様は、確かに恥ずかしいようで、視線は合わせてくれなかった。

「ディア、遅くなってすまない。怪我はなかったか」
兄が、近づいてきた。

 リーディアは兄の方へ歩もうとするが、急に目眩がしてふらついてしまう。

「魔力切れだな。休めるところに運ぼう」
 シリウス様は、ふらついたリーディアを横向きに抱え歩き出す。

「ちょっとまて、俺が連れて行く」
 シリウスがリーディアを運ぶのを、ジルベルトは止める。しかし、今回もシリウスは譲らなかった。

「私はそんなにやわじゃない。変わる必要はない。いいから早く行くぞ」
 シリウスはジルベルトの横をすり抜ける。シリウスがリーディアを落とすのを心配しての事ではなかったのだが、ジルベルトは呆れてしまう。

「落とす心配をしているのではない。婚約者でも、血縁者でもないお前が、ディアを抱えているのが問題なんだ。仮にもライナス様と婚約の話が上がっているのだから、問題になる行動はしないでくれ」
 
「どうせ、婚約はしないのだろう・・・問題はない」
 シリウスは譲らない。

「しないとしてもだ。断る理由と、言う時期があるんだ」
ジルベルトはシリウスをめんどくさいと感じる。

「もたもたしている方が、人目につくぞ。それに、シアとお前が結婚すれば、彼女とは親戚にはなるのだから、言い訳にはいいだろう」
 ジルベルトは、シリウスの発言に目を見開く。

 シリウスは、レティシアと自分との婚約を受け入れたのかと。
 あのシリウスが婚約式からのこの期間で、受け入れた発言を匂わせる事に、ジルベルトは驚愕し足をとめてしまった。

 シリウスはうるさく言わない、ジルベルトが付いてこないため、ジルベルトを待つことなくリーディアを部屋へ運ぶのだった。
 
 
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