45 / 103
44.最良の方
しおりを挟む魔方陣から現れたのは、やはりシリウス様だった。しかしいつもと違い、現れたのはシリウス様だけでなく、皇太子殿下を連れて現れた。
「コーネリウス様・・・」
イザベル様は、何がおきたかは理解されていないようだ。
「驚いた?これがシリウスの転移魔法さ!あっという間にベルの側にかけつけちゃうよ」
皇太子殿下は、イザベル様に近寄り手を取り、耳元でささやく。
「今日は、妖精の様に可愛らしいね。いつものベルも素敵だけど、可愛らしい妖精は拐いたくなっちゃうね」
イザベル様は真っ赤になられて、コーネリウス様に背を向けられた。
「また、からかうつもりですかッ、いつも似たような事ばかりおっしゃられて」
イザベル様はどれだけ甘いセリフを、コーネリウス様から毎回言われているのだろう。
「僕は、君には本当の事しか言わないよ。ベルこそ、どうして僕の言う事を信じてくれないの、僕はちゃんと態度でも言葉でも本当のことを伝えてるんだ。偽りのない僕を、君には好きになってもらいたいんだ」
「既に十分好きですわッ!あッ」
イザベル様は言うつもりはなかったのか、口元を両手で抑える。
コーネリウス様は、破顔しイザベル様を抱きしめてしまった。皇太子殿下がこのような行動をする方だったとは、こちらまで恥ずかしくなり顔を背けた。
背けた視線の先にはシリウス様が呆れ顔で、腕組みをされ皇太子殿下を見ていた。リーディアの視線に気づき、シリウス様はリーディアに甘いと思える笑みを向けて来た。
リーディアは直視できなくて、誰とも視線が合わない方を向く。
だか、レティシアが視界に入ってきて、耳うちをした。
「実は、イザベル様はコーネリウス様と両思いらしいんだけど、あんな感じにコーネリウス様が積極的すぎというか、アプローチ激しいから、自分の思いを言えなかったみたいなの」
レティシアはイザベル様とパーティーで話をして、そんなことまで聞き出していたようだ。恐るべし社交話術・・・。
「それに、私達のドレスに興味もたれてたし、本当はかわいいものが好きみたいよ。興味ない振りをされているらしいんだけど。王女様だし、厳しく育ったみたいね。取り入る人もいそうだし、自分を偽らないといけない王女様ってたいへんね」
「殿下」
シリウスが、コーネリウス様に声をかけられる。
「そろそろ時間だ」
「もうか・・・イザベル・・・離れたくはないけど、夕食を一緒にできなくなるのも嫌だし、仕方なく戻るよ。本当に、仕方なくね。・・・すぐ戻らないと駄目・・・?」
コーネリウス様はシリウスに問う。
「抜け出した事がバレれば、関与した私にも被害がきますからね。その場合、殿下に2度と手をかすことはありません。私には何のメリットもないのですから。今回は妹も関与していたので、承諾したまでです」
シリウスはコーネリウス様に冷たい視線を送る。レティシアが関わらなければ、手を貸す事はなかったのだろう口ぶりだ。
「わかったよ・・・。本当にシスコンなんだから」
コーネリウス様は、最後小さな声で聞こえないようにつぶやかれた。
しかし、聞こえていたのだろう。シリウスの目が細められる。
「このことは、もちろん内密に頼むよ」
シリウスはリーディアに声をかけて来た。リーディアは頷く。
「それと・・・、殿下のいうとおり。私も妖精のようだと思ったよ」
シリウスはリーディアに耳元で囁き、転移魔法で殿下を引きずるように連れて行った。
リーディアは少しの時間だったが、シリウスと会えただけで、満たされた気持ちになった。最近は色々あって、シリウス様と会える回数が増えていると思う。
リーディアは、周りが幸せになっていく中で、次第に気持ちだけでも知ってほしいと強く思うのだった。
10
お気に入りに追加
512
あなたにおすすめの小説
頑張らない政略結婚
ひろか
恋愛
「これは政略結婚だ。私は君を愛することはないし、触れる気もない」
結婚式の直前、夫となるセルシオ様からの言葉です。
好きにしろと、君も愛人をつくれと。君も、もって言いましたわ。
ええ、好きにしますわ、私も愛する人を想い続けますわ!
五話完結、毎日更新
妻のち愛人。
ひろか
恋愛
五つ下のエンリは、幼馴染から夫になった。
「ねーねー、ロナぁー」
甘えん坊なエンリは子供の頃から私の後をついてまわり、結婚してからも後をついてまわり、無いはずの尻尾をブンブン振るワンコのような夫。
そんな結婚生活が四ヶ月たった私の誕生日、目の前に突きつけられたのは離縁書だった。
アルバートの屈辱
プラネットプラント
恋愛
妻の姉に恋をして妻を蔑ろにするアルバートとそんな夫を愛するのを諦めてしまった妻の話。
『詰んでる不憫系悪役令嬢はチャラ男騎士として生活しています』の10年ほど前の話ですが、ほぼ無関係なので単体で読めます。
皇太子夫妻の歪んだ結婚
夕鈴
恋愛
皇太子妃リーンは夫の秘密に気付いてしまった。
その秘密はリーンにとって許せないものだった。結婚1日目にして離縁を決意したリーンの夫婦生活の始まりだった。
本編完結してます。
番外編を更新中です。
ガネス公爵令嬢の変身
くびのほきょう
恋愛
1年前に現れたお父様と同じ赤い目をした美しいご令嬢。その令嬢に夢中な幼なじみの王子様に恋をしていたのだと気づいた公爵令嬢のお話。
※「小説家になろう」へも投稿しています
選ばれたのは美人の親友
杉本凪咲
恋愛
侯爵令息ルドガーの妻となったエルは、良き妻になろうと奮闘していた。しかし突然にルドガーはエルに離婚を宣言し、あろうことかエルの親友であるレベッカと関係を持った。悔しさと怒りで泣き叫ぶエルだが、最後には離婚を決意して縁を切る。程なくして、そんな彼女に新しい縁談が舞い込んできたが、縁を切ったはずのレベッカが現れる。
ボロボロに傷ついた令嬢は初恋の彼の心に刻まれた
ミカン♬
恋愛
10歳の時に初恋のセルリアン王子を暗殺者から庇って傷ついたアリシアは、王家が責任を持ってセルリアンの婚約者とする約束であったが、幼馴染を溺愛するセルリアンは承知しなかった。
やがて婚約の話は消えてアリシアに残ったのは傷物令嬢という不名誉な二つ名だけだった。
ボロボロに傷ついていくアリシアを同情しつつ何も出来ないセルリアンは冷酷王子とよばれ、幼馴染のナターシャと婚約を果たすが互いに憂いを隠せないのであった。
一方、王家の陰謀に気づいたアリシアは密かに復讐を決心したのだった。
2024.01.05 あけおめです!後日談を追加しました。ヒマつぶしに読んで頂けると嬉しいです。
フワっと設定です。他サイトにも投稿中です。
【完結】悪女のなみだ
じじ
恋愛
「カリーナがまたカレンを泣かせてる」
双子の姉妹にも関わらず、私はいつも嫌われる側だった。
カレン、私の妹。
私とよく似た顔立ちなのに、彼女の目尻は優しげに下がり、微笑み一つで天使のようだともてはやされ、涙をこぼせば聖女のようだ崇められた。
一方の私は、切れ長の目でどう見ても性格がきつく見える。にこやかに笑ったつもりでも悪巧みをしていると謗られ、泣くと男を篭絡するつもりか、と非難された。
「ふふ。姉様って本当にかわいそう。気が弱いくせに、顔のせいで悪者になるんだもの。」
私が言い返せないのを知って、馬鹿にしてくる妹をどうすれば良かったのか。
「お前みたいな女が姉だなんてカレンがかわいそうだ」
罵ってくる男達にどう言えば真実が伝わったのか。
本当の自分を誰かに知ってもらおうなんて望みを捨てて、日々淡々と過ごしていた私を救ってくれたのは、あなただった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる