好きな人は兄のライバル〜魔導師団団長編〜【本編完結】

ドール

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40.帰路

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 最後のダンスを終え、パーティーが終わる時間になった。2人で飲みものを飲もうしていたら、シルヴィア様に見つかってしまい、シリウス様はすぐに手を掴んで、転移魔法を使用した。

「シリウス様、城内で魔法は禁止では?」
 リーディアはシリウスが罰せられないか心配になった。

「問題ない。私は魔導師団団長だと忘れたか?使用許可ならある。母が急に現れたせいで、グラスを持ってきてしまったな。零れなくてよかった」
 シリウス様は、グラスを傾け飲みものを飲み干した。

 リーディアも最後のダンスは、またシリウスに振り回されたため喉が渇き、グラスを一気に空にする。

「あっ、これ、お酒でした」
 リーディアは、口元を手で覆う。

「ん?飲んでも問題はない歳だろう?パーティー用のはアルコールは、そんなに強くないから大丈夫だと思うが、弱いのか?」

「兄に、すぐ、眠くなってしまうから、家以外では絶対に飲むなと言われていたんです」
 リーディアは兄の言いつけを破ってしまい、狼狽える。

「もう、帰る時間だから問題ないだろう。馬車に戻ろう。眠ければ寝ても構わない」
 シリウスはリーディアをエスコートし、馬車へ乗り込む。すでにリーディアはウトウトしていた。
 自分に寄り掛からせ、レティシア達が来るまで寝かせることにした。

 数分後に、レティシア達が馬車に乗ってきて、リーディアが寝てしまっているのに驚く。
「あら?ディアったら、疲れちゃったのかしら、ディア?ディア起きて?帰る前に話しておきたい事があるんだけど」
 レティシアはリーディアに声をかける。兄のジルベルトも馬車に乗り込んで来て、ディアを見て目を見開いた。

「まさか・・・酒など飲ませてないだろうな」
ジルベルトはシリウスに視線をやる。

「先程、飲んだ後に、気づいて言っていたな。そんなに弱いのか?」
 シリウスはジルベルトの視線が鋭くなり、そんなに飲むのを厳しくしているのかと思った。

「シア、起こすな」
 リーディアを起こそうとするレティシアに、静止の声をかける。

 だがリーディアは、丁度目を覚まして、定まらない目で、じっとレティシア見つめた。目が合うと、リーディアは笑顔でレティシアに抱きついた。
「ん?ディア?どうしたの?寝ぼけてるの?」
 
「シア、そのまま動くな。シリウスは目をつぶっておけ。絶対にディアと目を合わせるな」
 
「なぜ、貴様に命令されなければならない。まず理由を言え」
 シリウスはジルベルトの言い方に苛立ち反抗する。

 馬車が動き出し、抱きつかれていたレティシアが体勢を崩した。ジルベルトはレティシアを受け止めたが、リーディアは反動でレティシアから手を離し後ろに倒れこむ。

 シリウスは、リーディアを受け止めた事で、目があった。リーディアがまたじっと、シリウスを見つめ、シリウスに抱きついた。

 ジルベルトは、それに焦り、リーディアと目線を合わせにいく。
「ディア、こっちをむけ、来るんだ」
 
 ジルベルトは視線をあわせ、リーディアが来るものと思って手を広げる。しかし、視線があっているが、リーディアは、動かない。それどころか、またシリウスの方を向いて、首元に擦り寄ってしまった。

 ジルベルトはショックをうける。
「シア、もう一度君が視線をあわせてみてくれ」

 ジルベルトに言われ、レティシアはリーディアと再度視線を合わせるが、リーディアはにっこり微笑むだけだった。
 それを見て、ジルベルトはリーディアの思いに気づいてしまった。リーディアの酒くせは、寝てすぐに起こすと目が合った人に抱きつくのだ。
 視線があえば、だきつく相手をかえるが、抱きついている人より、好きでないと抱きつく相手は変えないのだ。

 父とジルベルトの場合は、呼ばれれば、行ったりきたりしていた。
 レティシアが、呼んでも駄目だという事はレティシアよりシリウスが好きということだった。ジルベルトは頭を悩ませる。妹が好きな相手が、婚約者の兄で、ライバルと思っているシリウスだとは、考えもしなかった。だから、あの時、リーディアははじめて口答えをしてきたのだと気づく。

「それで、この状況はどうしたらいいんだ?」
 シリウスは満更でもなさそうだが、ジルベルトの手前いちよう聞いてきた。
      
「離さないなら仕方がない。また寝るまではそのままだ。だが、ディアの攻撃は絶対に避けろ」
 ジルベルトは恐ろしい事をいう。

「は?この状況で、どんな攻撃をすると言うんだ」
 シリウスは聞きかえしたが、すぐにそれが何かわかる状況になるのだった。
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