36 / 103
35.魔導師団本部
しおりを挟む魔導師団団長室では、シリウスが書類整理をしている。最近は、討伐依頼が減り本部内は比較的落ちついていた。
シリウスが妹の婚約式に乗り込んだ後、魔物を殲滅する勢いで憂さ晴らしをしていたためか、魔物が少なくなったのが原因だ。
時間がたてばまた増えてはくるのだが、時期的に王城主催のパーティがあるため、落ちついているのはいいことだった。
魔導師団副団長のエミリオは、落ちつきをとりもどしているように見えるシリウスを、今日も補佐して仕事をすすめている。
「そういえば、シリウス様はリーディア嬢をパートナーにしたそうですね。兄から聞きました」
シリウスは手を止め、書類から顔をあげてエミリオを見る。
「だから、なんだ」
気温が下がったようだ。
「いえ、単なる興味本位です。兄が性懲りも無く申しこんだら、既にパートナーがいると言われて、振られたようで。相手がシリウス様だと聞き、私に絡んできて迷惑だったので、真意を確かめようかと」
エミリオは興味本位と言うが、どちらかと言えば、恨み言である。
エミリオにとったら、シリウスがパートナーなのは知らない話で、関わりがあるからと、兄に絡まれて大変だったので、どうしてそうなったのか知りたいということだ。
「さあな。たまたまお互いにパートナーがいないから、そうなっただけだ。相手を交換しただけだと言っておけばいい」
シリウスは書類に視線を戻した。
「兄がそんな理由で納得するわけないじゃないですか、兄は非常識で諦めが悪いんです。パーティ当日は目を離さない様にはしますが、シリウス様も注意して下さいね。」
エミリオはため息をつく。
「王城では流石に大丈夫だろう・・・」
「断られた事と、もう一つ・・・。あの、辺境伯のライナス様も関わっているので、兄はさらにライバルが出来たと焦っているのですよ。ライナス様とは既に顔あわせで領地まで行かれたみたいですし」
「よく知っているな」
シリウスは書類作業から、顔をあげることなく会話している。
「兄が・・・ジルベルト様から聞きだしたそうです。お気の毒に・・・」
エミリオはもう1人の被害者に申し訳なく思う。
「まあ、あいつの事はどうも思わんが、兄の始末は弟のお前がすることだな」
「しないとは言っていませんよ。それより、今回は皇太子の妃として、隣国の王女を発表するらしいですね。王女の兄である王子も、妃候補を探すつもりで来られると噂ですから、御令嬢達が浮き足立ちますね」
エミリオもパーティには参加する予定だか、波乱なパーティになりそうだなとため息がでるのだった。
10
お気に入りに追加
515
あなたにおすすめの小説

白い結婚は無理でした(涙)
詩森さよ(さよ吉)
恋愛
わたくし、フィリシアは没落しかけの伯爵家の娘でございます。
明らかに邪な結婚話しかない中で、公爵令息の愛人から契約結婚の話を持ち掛けられました。
白い結婚が認められるまでの3年間、お世話になるのでよい妻であろうと頑張ります。
小説家になろう様、カクヨム様にも掲載しております。
現在、筆者は時間的かつ体力的にコメントなどの返信ができないため受け付けない設定にしています。
どうぞよろしくお願いいたします。

拝啓 お顔もお名前も存じ上げない婚約者様
オケラ
恋愛
15歳のユアは上流貴族のお嬢様。自然とたわむれるのが大好きな女の子で、毎日山で植物を愛でている。しかし、こうして自由に過ごせるのもあと半年だけ。16歳になると正式に結婚することが決まっている。彼女には生まれた時から婚約者がいるが、まだ一度も会ったことがない。名前も知らないのは幼き日の彼女のわがままが原因で……。半年後に結婚を控える中、彼女は山の中でとある殿方と出会い……。

出生の秘密は墓場まで
しゃーりん
恋愛
20歳で公爵になったエスメラルダには13歳離れた弟ザフィーロがいる。
だが実はザフィーロはエスメラルダが産んだ子。この事実を知っている者は墓場まで口を噤むことになっている。
ザフィーロに跡を継がせるつもりだったが、特殊な性癖があるのではないかという恐れから、もう一人子供を産むためにエスメラルダは25歳で結婚する。
3年後、出産したばかりのエスメラルダに自分の出生についてザフィーロが確認するというお話です。

冷徹義兄の密やかな熱愛
橋本彩里(Ayari)
恋愛
十六歳の時に母が再婚しフローラは侯爵家の一員となったが、ある日、義兄のクリフォードと彼の親友の話を偶然聞いてしまう。
普段から冷徹な義兄に「いい加減我慢の限界だ」と視界に入れるのも疲れるほど嫌われていると知り、これ以上嫌われたくないと家を出ることを決意するのだが、それを知ったクリフォードの態度が急変し……。
※王道ヒーローではありません
贖罪の花嫁はいつわりの婚姻に溺れる
マチバリ
恋愛
貴族令嬢エステルは姉の婚約者を誘惑したという冤罪で修道院に行くことになっていたが、突然ある男の花嫁になり子供を産めと命令されてしまう。夫となる男は稀有な魔力と尊い血統を持ちながらも辺境の屋敷で孤独に暮らす魔法使いアンデリック。
数奇な運命で結婚する事になった二人が呪いをとくように幸せになる物語。
書籍化作業にあたり本編を非公開にしました。
【完結】探さないでください
仲 奈華 (nakanaka)
恋愛
私は、貴方と共にした一夜を後悔した事はない。
貴方は私に尊いこの子を与えてくれた。
あの一夜を境に、私の環境は正反対に変わってしまった。
冷たく厳しい人々の中から、温かく優しい人々の中へ私は飛び込んだ。
複雑で高級な物に囲まれる暮らしから、質素で簡素な物に囲まれる暮らしへ移ろいだ。
無関心で疎遠な沢山の親族を捨てて、誰よりも私を必要としてくれる尊いこの子だけを選んだ。
風の噂で貴方が私を探しているという話を聞く。
だけど、誰も私が貴方が探している人物とは思わないはず。
今、私は幸せを感じている。
貴方が側にいなくても、私はこの子と生きていける。
だから、、、
もう、、、
私を、、、
探さないでください。

【完結】傷跡に咲く薔薇の令嬢は、辺境伯の優しい手に救われる。
朝日みらい
恋愛
セリーヌ・アルヴィスは完璧な貴婦人として社交界で輝いていたが、ある晩、馬車で帰宅途中に盗賊に襲われ、顔に深い傷を負う。
傷が癒えた後、婚約者アルトゥールに再会するも、彼は彼女の外見の変化を理由に婚約を破棄する。
家族も彼女を冷遇し、かつての華やかな生活は一転し、孤独と疎外感に包まれる。
最終的に、家族に決められた新たな婚約相手は、社交界で「醜い」と噂されるラウル・ヴァレールだった―――。

五歳の時から、側にいた
田尾風香
恋愛
五歳。グレースは初めて国王の長男のグリフィンと出会った。
それからというもの、お互いにいがみ合いながらもグレースはグリフィンの側にいた。十六歳に婚約し、十九歳で結婚した。
グリフィンは、初めてグレースと会ってからずっとその姿を追い続けた。十九歳で結婚し、三十二歳で亡くして初めて、グリフィンはグレースへの想いに気付く。
前編グレース視点、後編グリフィン視点です。全二話。後編は来週木曜31日に投稿します。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる