好きな人は兄のライバル〜魔導師団団長編〜【本編完結】

ドール

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35.魔導師団本部

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 魔導師団団長室では、シリウスが書類整理をしている。最近は、討伐依頼が減り本部内は比較的落ちついていた。


 シリウスが妹の婚約式に乗り込んだ後、魔物を殲滅する勢いで憂さ晴らしをしていたためか、魔物が少なくなったのが原因だ。
 時間がたてばまた増えてはくるのだが、時期的に王城主催のパーティがあるため、落ちついているのはいいことだった。

 魔導師団副団長のエミリオは、落ちつきをとりもどしているように見えるシリウスを、今日も補佐して仕事をすすめている。


「そういえば、シリウス様はリーディア嬢をパートナーにしたそうですね。兄から聞きました」

 シリウスは手を止め、書類から顔をあげてエミリオを見る。
「だから、なんだ」
 気温が下がったようだ。


「いえ、単なる興味本位です。兄が性懲りも無く申しこんだら、既にパートナーがいると言われて、振られたようで。相手がシリウス様だと聞き、私に絡んできて迷惑だったので、真意を確かめようかと」

 エミリオは興味本位と言うが、どちらかと言えば、恨み言である。
 エミリオにとったら、シリウスがパートナーなのは知らない話で、関わりがあるからと、兄に絡まれて大変だったので、どうしてそうなったのか知りたいということだ。


「さあな。たまたまお互いにパートナーがいないから、そうなっただけだ。相手を交換しただけだと言っておけばいい」
 シリウスは書類に視線を戻した。

「兄がそんな理由で納得するわけないじゃないですか、兄は非常識で諦めが悪いんです。パーティ当日は目を離さない様にはしますが、シリウス様も注意して下さいね。」
エミリオはため息をつく。


「王城では流石に大丈夫だろう・・・」

「断られた事と、もう一つ・・・。あの、辺境伯のライナス様も関わっているので、兄はさらにライバルが出来たと焦っているのですよ。ライナス様とは既に顔あわせで領地まで行かれたみたいですし」

「よく知っているな」
 シリウスは書類作業から、顔をあげることなく会話している。


「兄が・・・ジルベルト様から聞きだしたそうです。お気の毒に・・・」
 エミリオはもう1人の被害者に申し訳なく思う。

「まあ、あいつの事はどうも思わんが、兄の始末は弟のお前がすることだな」
 

「しないとは言っていませんよ。それより、今回は皇太子の妃として、隣国の王女を発表するらしいですね。王女の兄である王子も、妃候補を探すつもりで来られると噂ですから、御令嬢達が浮き足立ちますね」
 エミリオもパーティには参加する予定だか、波乱なパーティになりそうだなとため息がでるのだった。
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