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33.父へ報告

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 ライナス様が去った後、シリウス様は謝ってきた。
「すまない。勝手な事をしてしまったな。気が進まないようだったからつい」
 
「いえ・・・、助かりました。よく、わかりましたね。辺境伯には申し訳ないのですが、どうやら生理的に無理で・・・。鳥肌がたつほどに」  
リーディアはシリウスに手を見せる。

「ふッ、生理的に無理か。こんなに魅力的な女性にそのように言われるとは、辺境伯も気の毒にな」
 シリウスは笑いを堪えている。

「実はこの前、会うだけでもと父にすすめられ、父と兄と辺境伯領まで行ったんですが・・・、辺境伯に魅力的だから愛は育めるとか言われて、見られて、本気で寒気と鳥肌がたってしまって」
 リーディアはあまり思い出したくなかった。

「彼は君に好意を寄せているのだな」
 シリウスは目を細める。

「好意・・・とは違いますね。彼は私を好きなのではなく、共に戦えて、子をなす行為をするにあたって魅力的だから、問題ないとかいう意味なので。だからこそ、生理的に無理と思ったんです」
 
 
「嫌なら断ればいい。婚約は自分の意思でするものだ、強制ではない。後悔するよりはいい、お父上と話をしたらどうだ?」
リーディアは思わず笑ってしまった。

「すみません。シアと同じ事をおっしゃるので、つい。父とは近いうちに話しをしようとは思っていました」
 本当に仲がいいくらい、意見が同じである。

「ああ、そうするといい」
 シリウス様はそう言うと、パーティの日は迎えに来ると付け加えて、また転移魔法で去って行かれた。


 リーディアは、本当にパートナーとして、パーティへ行ってくれるのだなと、嬉しくなった。
 そして、次はシリウスの髪の色や目の色とドレスを合わせるわけにはいかないので、悩むのだった。

 そして、新たな悩みも出来てしまい、すっかり父に辺境伯の事を話すのが遅れてしまったが、無事に父には理解してもらった。
 けれど、理由が理由なので、返事は予定通り卒業するまでは検討しているのを装う事にした。
 それまでに、断る別の理由も考えなくてはならない。
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