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17.デートっぽい

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 シリウスの笑みにやられ、思わず頷いてしまっていたリーディアは、気づけば馬車に乗せられ、目的だったシアに頼まれていたお店に来ていた。


 「ここは」 
 

「ああ、シアに頼まれてな。魔力が弱い使用人では無理だから自分で来ようとしていたのを、代わりに」

 
 レティシアは、シリウスにも同じ店の物を何か頼んだようだ。何故かはわからないが、取り敢えずリーディアは自分もシアに頼まれたというのは伏せておく事にし、店員にメモを渡した。
 

「そうなんですね。そういえば、シアが買いに行くとは聞いてました。実は私も、来る予定のお店だったので、奇遇でしたね」
 リーディアは、本当の事と嘘を混ぜつつ話した。


「シアが来るのは止められたが、君もだったとはな。知っていたらついでに受けとるくらいしたのだが」
 シリウスは令嬢が1人で出歩く事をよく思ってないようだ。


「お気遣いありがとうございます。私の事をシリウス様は知りようがないのですから、お気になさらないでください。それに、シリウス様を、使うような真似は私にはできませんので、お気持ちだけいただきます」
 リーディア達が話している間に、店員は小さな箱に入った品物を持ってきた。


「お待たせ致しました。こちらの品物になります。魔力が低い方だと影響されやすい商品になりますので、お気をつけ下さい」
 店員より品物を受け取り、2人は店をでた。


「では、シリウス様。私はまだ、よるところがあるので、これで失礼しますね」
 リーディアは次の店に行こうと、シリウスに声をかけた。


「構わない。用事が終わるまで付き合おう。何処にいくんだ?」
 シリウスは最後まで、つきあってくれるようだ。


「薬師の方のお店に行くんですが、そこまで付き合って頂かなくても」
 リーディアはシリウスが側にいるだけで嬉しいが、忙しいはずのシリウスに付き合ってもらうのは申し訳なかった。 


「私がいると都合が悪いのか」
 シリウスは不機嫌になってしまったようだ。


「いいえ、そうではなくて、本当によろしいのでしょうか、お忙しいのでしょうし、本当なら用事はこれで終わりのはずでしたし」
 リーディアは不機嫌になったシリウスを見上げる。


「いいと言っている。では、その薬師の店に行こう」
 シリウスはリーディアの手を握り歩き出した。 


 リーディアは、シリウスに手を握られ、心臓の音がきこえてしまうくらいどきどきしていた。
 シリウスのまくっている袖からみえる腕の筋肉や、普段みせないシリウスの私服姿、いつもかけている眼鏡はないシリウスの横顔に見惚れてしまう。


 しかし、どんどん進むシリウスに、薬師の店としか言っていないが、大丈夫だろうかと、声をかけようとした所、歩みが止まった。


「その、薬師の店は、こちらであっていただろうか」
 と、シリウスは自信なさげに聞いてくる。リーディアはますます可愛らしいなと思った。


「はい!あっていますよ。このまま真っ直ぐで緑の看板が見えますので」
リーディアはシリウスが恥をかかないように、店の特徴を伝えた。


 それから、薬師の店に寄って頼まれていた品を渡し、珍しい薬草の苗を貰って帰る事になった。シリウスはその間、店の前で待っていてくれた。


 









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