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12.模擬戦 前編
しおりを挟むシリウスにお詫びをもらってから1週間後、騎士団本部にきていていた。今日は騎士団員達と模擬戦をする予定だ。
いつもと違うのは、レティシアが見学していることだ。
「女性も思ったよりいるのね。素敵だわ。甲冑のデザインが凛々しくていいわ。全身をかくしてしまうから、ディアが見つけにくいわね」
しかし、レティシアはリーディアを見つける。
「あっ、すぐわかっちゃった。やっぱりスタイルがいいと、区別つきやすいわね。顔が隠れてても、わかるわ。あの甲冑は特注かしら」
レティシアは関心する。
リーディアはレティシアの側に来た。
「さっきから、何をひとりごと言ってるの?今日の模擬戦は他国との戦いを想定してだから、甲冑姿なんだけど、シアにしたら、あまりおもしろいものじゃないかもね」
「そんなことないわ!ディアの甲冑姿素敵よ!甲冑でそのボディラインがだせるなんて、すごいわ。ディアの魅力を上げるために甲冑の境に、飾りをつけたいくらいだわ!」
レティシアは、見学席から身をのりだしてくる。
「はい、はい、身を乗り出すと危ないわよ。それにシアの本当の目的は私じゃないでしょ。お兄様ならまだ、執務室よ」
「そうだった。あまりに素敵だから忘れるとこだったわ!じゃあちょっと行ってくるわね」
レティシアは本来の目的のために兄の元へ向かっていった。
「団長はまだいないが、個人戦を始めよう。」
副団長が集合をかける。
「今日の模擬戦は他国との戦いを想定したものになる。全身を守る甲冑にはなれておいてもらわなくてはならない。付けていない時とは勝手が違ってくるから、実際に戦いながら、感覚をしっかりみにつけるようにね。身体強化も許可する。魔力配分を考えて行うように。個人が終われば、全体での模擬をおこなう予定だ。今日は、個人では団長の妹君も参加する。よい動きをするので参考にするようにね」
リーディアは一礼する。
「では3組ずつ始めよう!」
副団長の掛け声で、あらかじめ決めてあった者がわかれ訓練を開始しはじめた。
剣のぶつかり合う音、甲冑の動く音が響く。
副団長のエイダンがリーディアに話しかけて来た。
「今日はごめんね。リーディア嬢の動きを模範にしたくてよびつけてしまって」
「構いませんよ。甲冑はなかなか着る機会がなくて、感覚を忘れないために呼んでいただいて嬉しいですから」
「ならぜひ、僕の相手をお願いするよ」
副団長は楽しそうだ。副団長のエイダンは赤い髪が印象的で、人柄は柔らかい。しかし、戦いになれば、普段の温厚さは影をひそめる。リーディアは、騎士団で1番厄介なのは、この男だと思っている。
「エイダン様が相手では、本気を出さないと怪我をしますね。」
「リーディア嬢に、僕が怪我をさせるわけがないでしょ。もし、怪我を負わせたら、もちろん責任とるからね」
エイダンはにっこり笑うが、リーディアはエイダンの毎回の、このやりとりが嫌いだ。口では怪我をさせる気はないというが、戦いになると、本気で怪我を狙ってくるから、リーディアも毎回全力で回避する。
大抵は兄がいるため、今までは勝敗がつく前に終わりがくる。しかし、今日は兄はまだやってくる気配はない。
エイダンと話しながら、個人戦は最後の組になっていた。
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