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4.ダンス対決 前編
しおりを挟む「今宵はよくお集まり頂いた。今日は僕が余興を考えたので、ぜひ参加してくれたまえ。お互いに爵位が同じパートナーを変えてのダンスを楽しんでみてくれ。ちょっとしたダンス対決さ。いつもと違うパートナーでもリードできるか、息が合うダンスを披露できるかが楽しみだね。まぁ大切なパートナーだろうから、無理にとは言わないよ。最後には、騎士団長対魔導師団長で、パートナーを変えてダンスを披露してもらうから、そのつもりでね」
皇太子殿下の余興は意外にも、好評みたいで、婚約者同士以外の者たちが声をかけあう姿がみられた。
兄達はそれぞれ難しい顔をしている。
リーディアの兄は恐らく、考えていたダンスプランが崩れて眉間に皺がよっているのだろう。
しかし、レティシアの兄は、ライバルと妹がダンスを踊る事に対して不満があるようだ。2人ともパートナーは妹だと思って準備してきたのだから、少し考えているようだ。
リーディアは、シリウスの考えはすぐに予想ができたが、彼が自分に対して拒否しないかが気がかりだった。
皇太子の思いつきで、シリウスと踊れるとしても、嫌がられたら、さすがに立ち直れないかもしれない。
「まさか、皇太子殿下がいい仕事してくれるなんて。よかったわね、ディア。お兄様と踊れるじゃない。わたしもジル様と婚約発表前に踊れるなんて嬉しいわ。いつも兄様が邪魔するから踊れなかったのよね」
レティシアはジルベルトと踊れるため嬉しそうだ。
「でも、勝負がかかっていたとしてもシリウス様に拒否られたら、どうしよう。たちなおれなくなるわ」
リーディアはシリウスに視線をむけた。
ちょうど、シリウスもリーディアに視線をあわせたため2人の目があった。リーディアは公爵令嬢の顔を頑張って崩さないように、微笑んだ。
「仕方ないか。拒否すれば、勝負にもならん。奴の余興にのってやるとしよう。だが、ジルベルト!シアにベタベタ触れるのは許さないからな。妙なマネをしたら、吹き飛ばしてやるから覚悟しろ。」
シリウスはどうやら、勝負にのるようだ。
リーディアは心の中で、うれしさ全開だ。顔にはださないようにがんばっている。
「お前こそ、ディアを乱暴に扱うなよ。お前が約束を守るなら、俺も守ってやる。」
兄にしては珍しく、妹のためを思った発言だ。
「傷がついたら、貰ってもらうからな」
と、シリウスには聞こえないように兄がささやいた。
リーディアは、兄の顔をみて、確信した。兄にもばれているのだと。
「ところで・・・君はダンスはどうなんだ?」
シリウスに話しかけられて、リーディアはシリウスに視線を戻した。
「今回、ダンス勝負という事でしたので、兄が指定するダンスは練習をこなしてきましたが、シアより上手いかは自信がなくて、申し訳ないです」
「そうか。シアに劣るのは仕方がない事だ。私の妹だから、当然だ。そこまで、落ち込まなくてもいいだろう」
シリウスはリーディアが俯き垂れてしまった髪を耳にかけてくれた。
「!!でも、シリウス様が勝てるように精一杯頑張りますわ!」
シリウスの手が髪に触れただけで、ディアは舞い上がり、シリウスのための言葉を口走っていた。
レティシアはその様子を、またしてもにやけるのを我慢して眺めていた。
「そうなると、君の兄が負けることになるがいいのか?私としては、あやつが、負けて悔しがる姿は望む所だが」
シリウスは何故、リーディアが自分に協力するのか、訝しんだ。
「たまには、いつも強引な兄を負かしてみたいとも思っておりました。今回も強引に、ダンスレッスンをさせられましたので、ご協力頂けませんか?」
「・・・いいだろう。あやつの妹と思って足を引っ張るかと思ったが、君は兄とは違うようだな。ぜひ一緒にやつを負かそうではないか」
シリウスは不敵な笑みを浮かべた。その笑みは、リーディアにクリティカルヒットをした。
(シリウス様が!!私に!!笑いかけてくれた!!お兄様を負かして、もう一度笑いけてもらうようにがんばらなくてわ!!)
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