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1.2人の妹
しおりを挟むこの王国には、若くして最強と呼ばれる団長が2人いる。魔導師団団長のシリウス=ウィンザー公爵令息と、騎士団団長のジルベルト=フォード公爵令息である。
2人はお互い公爵令息ということもあり、幼い頃から意識しあい、お互いをライバル視していた。お互いの能力は認めてはいるが、顔を合わせれば、言い合いが必ず起こる。
そんな2人には、互いに妹がいる。
魔導師団団長の妹、レティシア=ウィンザー公爵令嬢。
騎士団団長の妹、リーディア=フォード公爵令嬢。
妹達は兄達とは違い、仲は良好である。
妹達は学園で過ごす中、お互いを親友と認識し交流を深めていた。
そんな中、レティシアがリーディアにある事を告げた。
「ディア、大事な話があるの」
学園の昼食時、テラスでレティシアはリーディアに、そうきりだした。
「大事な話?私が聞いても大丈夫なの?」
レティシアはリーディアの両手を包み、真剣な顔をし、小さな声で告げた。
「実は・・・貴女のお兄様。ジル様と、恋仲になる事ができました」
「えっ・・・お兄様とですか・・・いつの間に・・・。シアは私のお兄様が好きだったのですね。全然気が付きませんでしたわ」
リーディアは突然の発言に一瞬固まった。
「ほら、私達のお兄様ってお互いに仲が悪いじゃない?だから、この事は、できるだけ内緒にしておきたいの。私のお兄様に知られたら、絶対反対するだろうし。でも、両家が仲が悪いわけではないでしょう?だから、時期をみて婚約をする話は既についているの」
リーディアは既に両家で話がついている事にも驚いた。
レティシアに好きな人がいるのは知っていたが、それが自分の兄だとは、普段の様子から気づく事はできなかった。
レティシアは公爵令嬢であり、礼儀、マナー、ダンス、全てにおいて淑女の鏡のような存在であるが、性格は明るく社交的で、センスがとてもよく、リーディアに似合うドレスをデッサンして見せてくれる。自分が作った服や、刺繍で好きな人を飾りたいのだと語る家庭派だ。そんなシアが、剣を振るい、魔物をなぎ倒す、肉体派の兄に好意を持つとは思いもしなかった。
「なんだか意外って顔してるわね」
「そうね。私のお兄様は肉体派ですし、シアはシリウス様のように、スラリとした方で、知的な品のいい方がタイプなんだと思っていましたわ」
「その予想は大はずれよ、ディア。私の好みは逞しい人で私を守ってくれる誠実で強い人よ。肉体派と言っても、ジル様の肉体はとても美しいと思うわ。創作意欲が湧いてくるくらい魅力的よ。見た目も姿勢も凛々しくて、あなたに意地悪をいう時のジル様は可愛らしくて大好きよ」
レティシアはとても幸せそうな顔をしている。リーディアとしては親友のシアが幸せそうでうれしかった。
「そーなってくると、問題なのはあなたなのよね」
レティシアは幸せそうな顔を、申し訳なさそうな顔に変えて言った。
「えっ?」
「だって、私たちが結ばれると、兄同士の仲は確実に更に悪化するでしょ?特にうちのお兄様は、ジル様を敵視してるし。ディアにもお兄様がひどくあたらないかとても心配。あなた、私のお兄様が好きでしょ?」
「えっ・・・。なッなんで」
リーディアはまたしても固まる。
「ん?違った?あなた私と違って表情に出やすい方だと思うから、観察していればわかるわよ」
レティシアには、リーディアがシリウスが好きな事がばれていたようだ。
「でも、あなたも、よくうちの兄様みたいなシスコン好きになるわね。口うるさくて、周りの目がある時はあしらいにくいから困るし、わたしだったらお断りよ。」
レティシアは手をクロスさせ、おどけてみせる。
「それは、シアが、私のお兄様を可愛いというのと同じことよ。あなたに優しくて、少し口うるさいシリウス様が私には可愛く映るように」
公爵令嬢の笑み浮かべながら、レティシアに少しの反論をする。
「なるほど、確かにね。私たち似たもの同士というわけね」
2人はクスクスと、人がまばらになったテラスで笑いあった。
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