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3 充稀 13years

1 格差のBirthday

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 僕の苦痛は学校だけのことじゃなかった。

 僕には4つ上に姉(今、高校2年でめちゃめちゃ高校生活を満喫してる)と2つ下に弟がいる。弟は小学5年生なんだけど、これまた僕と違って優秀かつスポーツ万能。おんなじ兄弟なのにこんなにも違うなんて、神様、無慈悲すぎる!
 確かに、弟には敵わない。頭いいし、運動神経も抜群。小3でスポ少のバレーボール部に入団して、即、準レギュラー。まだ小3だったから出られる試合なんかは限られてたけど、その頃から注目される奴だった。元々、体つきもよくて、兄(一応)の僕なんかより数センチはデカい。今じゃ、とっくに僕なんか下に見てるけどね。
 学校の作品展や文化祭なんかでも弟はみんなに一目おかれる存在だった。特に書道の腕前は師範級並みのレベル。書道の先生も教え子として鼻が高かったらしい。
 テスト期間になると、両親は必ず弟と比べて心無い言葉を浴びせてきた。
分かってるよ。どうせ、できが悪いって言いたいんだろ?
そんな子どもをしたのはあんたたちだろ?
僕にその責任を圧しつけないでほしい。
僕も好きで生まれてきたわけじゃないんだし。

 益々、僕と弟の差は激しくなった。

 一番辛かったのは、13のBirthday。
僕は9月生まれで、弟は6月生まれだったから、先に弟の誕生日がくる。

 よく覚えてるよ。

 11になる弟の誕生日の日、夕飯の食卓に並んだいつもにない豪勢な料理。
その日は特別で、母親は有休までとって朝から弟の誕生日を祝うのに手の込んだ料理に励んでた。
 父親もこの日はできるだけ早く仕事を切り上げて帰宅した。その手にはワクワクするようなプレゼントを持って‥‥。

「はい、成登せいと、お誕生日おめでとう」
 そう言いながら母親はダイニングテーブルの向かい側に座っている弟に、今年の誕生日に欲しいものを事前に聞いといて渡してた。すごく優しい笑顔で。
そんな笑顔、僕の前では見たことないけどね。
 その流れに便乗して父親も、わざわざ仕事帰りに寄って買ってきたんだろう、見た目にもワクワクするようなプレゼントを渡しながら
「それと…自分で必要なものがあったらこれで買いなさい」
 って、白い封筒も一緒に添えた。
それが何かは分かってた。プレゼントももらった上に現金まで‥‥。
どんだけ過保護なんだよ。

 僕のBirthday?
そんな日があったっけ?
ま、忘れられてはいなかったようで
「誕生日だったわね。これで好きなもの買いなさい」
 って、普通の茶封筒に現金のみ。
プレゼントなんて期待もしてないし、かえって現金の方がありがたいよ。だって、自分の欲しいもの買えるからさ。

 特別な日じゃない、いつもの夕飯を済ませて部屋に戻ろうとした時

「充稀、はい、これ。誕生日おめでとう」

 姉だけは違った。
 っていうか、これが当たり前の家族なんだろうけど。
 振り返ったら少し苦笑いの姉が、僕の胸の辺りにそれを押しつけるように渡してきた。

 病弱で、母親からは「女の子に生まれてくればよかったのに」なんてことまで言われたこんな僕だけど、好きなことはスポーツ観戦で、スポーツならどんな競技でも応援するのが好きだった。
もちろん、自分でもやってみたい気持ちはあるんだけど、身体がついていかない。こんな身体だから仕方ないか、と今では割り切れてる。

 そんな僕のことを分かってくれてたんだ。

 黒とグレーのストライプの包装紙に誇張しすぎないシルバーのリボンがすごくおしゃれに感じた。
「あ…ありがと」
 思いがけないことだったから、ありがとうの声が戸惑ってた。

 包みの中は、僕の好きなスポーツブランドのキャップ。

(僕が好きなの知ってたんだ…自分のバイト代で買ってくれたのかな?)

 僕の誕生日だけどいつもと変わらない今日は、特別な今日になった。
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