2 / 7
第二話 靡く黒髪
しおりを挟む
その日の放課後、直樹は部活動見学に来た新入生に紛れてバックネット裏に立っていた。
「へぇ、結構上手くなったんだな」
思わずそんな声が漏れていた。
なぜなら、自分が部を休むようになるまではこんなにやる気のある部ではなく、お遊び程度の部で万年一回戦負けの弱小校。
それが今は、まるで強豪校のように腹から怒声のような声を出し、ノックを受けている。
自分が居ぬ間に何があったのか気になった直樹は偶然近くを通りがかった男子の陸上部員に聞いてみた。
「なぁ、最近野球部で何かあったのか?」
すると陸上部員は少し考え込むようなそ素振りを見せ。少し経ってからこう答えた。
「確か可愛いマネが入ったとかで盛り上がってたな。」
「可愛いマネ?新入生か?」
少なくとも直樹の知る範囲では可愛いマネージャーは居なかった。
「えぇ、たぶん。」
「そっか、ありがとう」」
直樹が建前的な礼を述べると陸上部員は走り去っていった。
純粋に野球が好きな直樹からすると、女性絡みでやる気を出すなど到底、球児とは思えなかった。
それなのに...いやそれだからだろうか直樹はそのマネージャーを探していた。
野球部の連中をやる気にさせるほどだ、それなりに容姿も整っているのだろう。
直樹はそれがどの程度のものなのか確かめたかった。
確かめたところでなにをする訳でもないのだが。
そうしてグラウンドを見回して女性を探し始めてすぐ探し人は見つかった。
今は外野のノックの手伝いをしているようだ。
如何にも初心者という様なたどたどしい手つきでコーチにボールを渡している。
ボールを渡すためコーチに歩み寄るたび、帽子の下の長い黒髪が揺れその髪を春の柔らかな日差しが照らす。
風に吹かれ靡いた髪が視界に入り邪魔だったのだろう。
彼女はその墨汁のように黒い髪を空いていた右手でそっと背中へと流した。
「綺麗だ...」
最初は誰の言葉か分からなかったが、数秒の思考停止を経て脳が自分の言葉と気付き条件反射的に口を抑えた。
どうやら小声だった事と、彼女までの距離が幸いして本人には聞かれなかったようだ。
彼女は特に気にした様子もなくボール渡しを続けている。
そんな彼女の様子を直樹はジッと見つめていた。
何故だか視線が惹きつけられて離れようとしない。
「ありがとうございましたっ!」
一際元気なあいさつでノックが終わりクールダウンに移行する
ついに放課後の練習が終わってしまったようだ。
「...帰るか」
教科書の入っていない(学校に全て置いてきた)鞄を持ち、校門を出て最寄りの駅へと足を運ぶ。
入院する前にチャージしておいたICカードを使って改札を抜け階段を下りホームへ向かう。
新人マネージャーを見ていたせいか、いつもより4本程遅い電車に乗り込み帰路に就く。
到着した電車はいつものように完璧な停車位置で直樹の目の前に停まった。
電車に乗り込み車内を見渡し座れる場所を探す。
しかし見つけたのは空席ではなく幼馴染みだった、それもかなり面倒な事に巻き込まれている。
「へぇ、結構上手くなったんだな」
思わずそんな声が漏れていた。
なぜなら、自分が部を休むようになるまではこんなにやる気のある部ではなく、お遊び程度の部で万年一回戦負けの弱小校。
それが今は、まるで強豪校のように腹から怒声のような声を出し、ノックを受けている。
自分が居ぬ間に何があったのか気になった直樹は偶然近くを通りがかった男子の陸上部員に聞いてみた。
「なぁ、最近野球部で何かあったのか?」
すると陸上部員は少し考え込むようなそ素振りを見せ。少し経ってからこう答えた。
「確か可愛いマネが入ったとかで盛り上がってたな。」
「可愛いマネ?新入生か?」
少なくとも直樹の知る範囲では可愛いマネージャーは居なかった。
「えぇ、たぶん。」
「そっか、ありがとう」」
直樹が建前的な礼を述べると陸上部員は走り去っていった。
純粋に野球が好きな直樹からすると、女性絡みでやる気を出すなど到底、球児とは思えなかった。
それなのに...いやそれだからだろうか直樹はそのマネージャーを探していた。
野球部の連中をやる気にさせるほどだ、それなりに容姿も整っているのだろう。
直樹はそれがどの程度のものなのか確かめたかった。
確かめたところでなにをする訳でもないのだが。
そうしてグラウンドを見回して女性を探し始めてすぐ探し人は見つかった。
今は外野のノックの手伝いをしているようだ。
如何にも初心者という様なたどたどしい手つきでコーチにボールを渡している。
ボールを渡すためコーチに歩み寄るたび、帽子の下の長い黒髪が揺れその髪を春の柔らかな日差しが照らす。
風に吹かれ靡いた髪が視界に入り邪魔だったのだろう。
彼女はその墨汁のように黒い髪を空いていた右手でそっと背中へと流した。
「綺麗だ...」
最初は誰の言葉か分からなかったが、数秒の思考停止を経て脳が自分の言葉と気付き条件反射的に口を抑えた。
どうやら小声だった事と、彼女までの距離が幸いして本人には聞かれなかったようだ。
彼女は特に気にした様子もなくボール渡しを続けている。
そんな彼女の様子を直樹はジッと見つめていた。
何故だか視線が惹きつけられて離れようとしない。
「ありがとうございましたっ!」
一際元気なあいさつでノックが終わりクールダウンに移行する
ついに放課後の練習が終わってしまったようだ。
「...帰るか」
教科書の入っていない(学校に全て置いてきた)鞄を持ち、校門を出て最寄りの駅へと足を運ぶ。
入院する前にチャージしておいたICカードを使って改札を抜け階段を下りホームへ向かう。
新人マネージャーを見ていたせいか、いつもより4本程遅い電車に乗り込み帰路に就く。
到着した電車はいつものように完璧な停車位置で直樹の目の前に停まった。
電車に乗り込み車内を見渡し座れる場所を探す。
しかし見つけたのは空席ではなく幼馴染みだった、それもかなり面倒な事に巻き込まれている。
0
お気に入りに追加
6
あなたにおすすめの小説
写る記憶と宝物
有箱
恋愛
私は目が見えない。けれど、今は幸せだ。
それもこれも、妻の存在があるからだ。
それともう一つ、ある存在も。
私には、日課がある。
その一つが、妻の調理音で目を覚ますこと。
そして、もう一つが写真を撫でること。
しかし、それは妻との写真ではない。
――私の、初恋の人との写真だ。


愛する貴方の心から消えた私は…
矢野りと
恋愛
愛する夫が事故に巻き込まれ隣国で行方不明となったのは一年以上前のこと。
周りが諦めの言葉を口にしても、私は決して諦めなかった。
…彼は絶対に生きている。
そう信じて待ち続けていると、願いが天に通じたのか奇跡的に彼は戻って来た。
だが彼は妻である私のことを忘れてしまっていた。
「すまない、君を愛せない」
そう言った彼の目からは私に対する愛情はなくなっていて…。
*設定はゆるいです。
離婚した彼女は死ぬことにした
まとば 蒼
恋愛
2日に1回更新(希望)です。
-----------------
事故で命を落とす瞬間、政略結婚で結ばれた夫のアルバートを愛していたことに気づいたエレノア。
もう一度彼との結婚生活をやり直したいと願うと、四年前に巻き戻っていた。
今度こそ彼に相応しい妻になりたいと、これまでの臆病な自分を脱ぎ捨て奮闘するエレノア。しかし、
「前にも言ったけど、君は妻としての役目を果たさなくていいんだよ」
返ってくるのは拒絶を含んだ鉄壁の笑みと、表面的で義務的な優しさ。
それでも夫に想いを捧げ続けていたある日のこと、アルバートの大事にしている弟妹が原因不明の体調不良に襲われた。
神官から、二人の体調不良はエレノアの体内に宿る瘴気が原因だと告げられる。
大切な人を守るために離婚して彼らから離れることをエレノアは決意するが──。
-----------------
とあるコンテストに応募するためにひっそり書いていた作品ですが、最近ダレてきたので公開してみることにしました。
まだまだ荒くて調整が必要な話ですが、どんなに些細な内容でも反応を頂けると大変励みになります。
書きながら色々修正していくので、読み返したら若干展開が変わってたりするかもしれません。
作風が好みじゃない場合は回れ右をして自衛をお願いいたします。

蔑ろにされた王妃と見限られた国王
奏千歌
恋愛
※最初に公開したプロット版はカクヨムで公開しています
国王陛下には愛する女性がいた。
彼女は陛下の初恋の相手で、陛下はずっと彼女を想い続けて、そして大切にしていた。
私は、そんな陛下と結婚した。
国と王家のために、私達は結婚しなければならなかったから、結婚すれば陛下も少しは変わるのではと期待していた。
でも結果は……私の理想を打ち砕くものだった。
そしてもう一つ。
私も陛下も知らないことがあった。
彼女のことを。彼女の正体を。

家出したとある辺境夫人の話
あゆみノワ@書籍『完全別居の契約婚〜』
恋愛
『突然ではございますが、私はあなたと離縁し、このお屋敷を去ることにいたしました』
これは、一通の置き手紙からはじまった一組の心通わぬ夫婦のお語。
※ちゃんとハッピーエンドです。ただし、主人公にとっては。
※他サイトでも掲載します。

あなたの秘密を知ってしまったから私は消えます
おぜいくと
恋愛
「あなたの秘密を知ってしまったから私は消えます。さようなら」
そう書き残してエアリーはいなくなった……
緑豊かな高原地帯にあるデニスミール王国の王子ロイスは、来月にエアリーと結婚式を挙げる予定だった。エアリーは隣国アーランドの王女で、元々は政略結婚が目的で引き合わされたのだが、誰にでも平等に接するエアリーの姿勢や穢れを知らない澄んだ目に俺は惹かれた。俺はエアリーに素直な気持ちを伝え、王家に代々伝わる指輪を渡した。エアリーはとても喜んでくれた。俺は早めにエアリーを呼び寄せた。デニスミールでの暮らしに慣れてほしかったからだ。初めは人見知りを発揮していたエアリーだったが、次第に打ち解けていった。
そう思っていたのに。
エアリーは突然姿を消した。俺が渡した指輪を置いて……
※ストーリーは、ロイスとエアリーそれぞれの視点で交互に進みます。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる