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第3話 ついてない日
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今日は午前中から優雅にカフェでも行こうと思ったのに。
寝る前になんとなく見ていたアニメがおもしろすぎて、あと一話だけ……を繰り返していたら、朝方になっていた。
おかげで、目が覚めたのは13時。
一日の半分が終わった時間に起きてしまうと、なんとなく落ち込む。だから最近は生活リズムを整えていたつもりだったのに。
原稿明けの解放感から、アニメを見るストレス解消がやめられなかった。
でも今日は、カフェに行く! と決めている。
ここで怠慢な自分に負けてはいけないのだ。布団の中でダラダラしたい気持ちを抑え、のっそりと起き上がって準備にとりかかることにした。
チェーン店ならスッピンで行くけど、おしゃれなカフェになると、そうはいかない。
なんせお店に来ている人たちもおしゃれ女子ばかり。SNS映えを狙って、自分込みの写真を撮る子もすくなくはない。
そんな場所に、スッピン、スウェットで行こうものなら、ドレス着て牛丼屋さん行くくらい浮いてしまう。芸能人みたいにプライベートで来てます感が出せればまた別の話だけど。
ちゃんとメイクをして、よそ行きの服を着る。こういう時くらいおしゃれしないと、一生パジャマで過ごしそうだしね。
我ながら、オンとオフの差が激しい。よくアニメで見る、漫画家のオンとオフの姿がまったく別人! みたいな描写があるけど、ライターの私も似たようなものだ。
美人になるわけじゃないけど、それなりにメイクして、それなりの服を着れば、周りからはデキる女風に見えるのだから。
でも、久しぶりにメイクをすると、ついついやり過ぎて濃くなってしまう。
手鏡で自分の顔をまじまじ見ると、顔のムダ毛が恐ろしいことに気付く。
もし彼氏がいたら、キスする時に、こいつヒゲはえてるじゃん。とか思われたりするんだろうか。世の女性たちは、みんなどうしているんだ。
30分くらいかけてメイクをし、30分くらいかけて服を選ぶ。
クローゼットにはこんなにも服が詰め込まれているのに、なぜか着る服がないと言う不思議な現象に、毎度悩まされる。
なんとか14時半には家を出られたけど、なんだこの暑さは。
まだ5月だというのに、お天気アプリには30度という数字が表示されていた。
ずっと部屋にこもっていると、外の気温の感覚にバグってしまう。
せっかくおしゃれにジャケット着てきたのに、暑すぎて速攻で脱ぐはめになった。
目指すは隣駅のカフェ。
運動不足を解消しようと思って、電車には乗らず歩きを選んだのも大失敗。
日陰のない、この広い道をずっと行かなきゃいけないのかと思うと、カフェは諦めて家に帰りたくなってくる。
「あっづい……」
20分ほど歩いて、ようやく目的のカフェが見えてきた。
でもなんか変だ。人気のカフェなはずなのに、まるで人の気配がしない。なんならお店の看板もでていない。
嫌な予感がして、足早にお店の前まで行くと
扉には本日定休日の札がぶら下がっていた。
しまった。そこまで確認していなかった……。
いやいや、諦めるのはまだ早い。
こうなることも想定済みでの予備がある。
すぐにその場で、ブックマークしておいた二件目のカフェの定休日を確認してみる。
営業時間は18時までだけど、定休日ではなさそうだ。ここからまた5分ほど歩かなきゃいけないけど、まあ許容範囲だ。
次に行こうとしているカフェは、昔ながらのプリンの上に、大きなアイスがのっているメニューが大人気。
汗だくで、喉カラカラの身体に、イチ早く摂取したい糖分ナンバーワンだ。
頭のなかで、アイス……プリン……と呪文のように唱えながら、夏のような日差しの中をすすむ。
――が、カフェに到着したらそこそこの人数が並んでいるのが目にはいる。
小さなカフェだからしょうがないものの、回転率は悪そう。
ここで私の選択肢は3つ。
1.ここまで来たら並ぶしかない
2.さらに10分ほど歩く3件目のカフェに行く
3.諦めてすぐ近くのチェーン店に入る
悩んでいる間にも列が少しずつ伸びていくのを見て、やっぱりプリンが食べたい! の気持ちに素直に従い、並ぶことにした。
列に並んでいる人たちは友達同士で来ている人ばかりだったけど、店内にはカウンター席もあって一人で来ている人もチラホラいた。
一組、また一組とお店から出てきては先頭に並ぶ人たちが入っていく。
そして、ついに私にも店内に案内される順番がやってきた。
先頭の人だけは、レジ前にあるベンチに座れるらしい。
そこでメニューを渡され、席に案内するまでに決めておいてねスタイルのようだ。
店内はそれほど涼しくはなかったけど、日差しがないだけ最高だ。
何より楽しみなのは、アイスのせプリン!
ベンチに座っている私に、店員さんがメニューを持って近づいてくる。
いえ、メニューは必要ありません。私には心に決めたプリンがありますので!
などと、くだらない心の声で店員さんに話しかけながら、笑顔でメニューを受け取った。
ここまで来るのに、なかなか苦労したけど、やっと最高の時間が楽しめる……!
そう思った瞬間――
「申し訳ございません。こちらのプリンが先ほど売り切れになってしまいましたので、スイーツはこちらからお選びください。」
ついてない日は、ついてない。
人生とは、そういうものだ。
ここまでの苦労を拭い去ってくれる存在のプリンさえも、私から遠ざかっていく。
こうなることがわかっていたら、大人しくコンビニの白玉パフェで小さな幸せを堪能していた方がよかったかな。
心の中では絶望して、今にも「いやです! プリンがいい!」ってじたばた暴れまわりたい気分だけど、誰が悪いって、自分が午前中に起きなかったことが悪いし、定休日を確認してないことも悪い。
ただそれだけ。
「そうですか、わかりました!」
悲しみなんてのは、笑顔に隠してしまえば誰からも気付かれない。生きていくなかで私が身に付けた、唯一の特技だ。
プリンがないことにガックリしながらも、案内されたのは、このお店で一番いい席っぽい、ふかふかのソファが置いてある二人席だった。
あんなに並んでいるのに、私一人でこんないい席に座っていいの?
捨てる神あれば、拾う神ありとはこのことか。
プリンの代わりに頼んだティラミスは、お皿の真ん中にちょこんとおしゃれに盛られていた。プリンのボリューム感を見ていたせいで、同じ値段で、これだけですか?
という、心狭き貧乏性が顔だしてしまった。
いやいや、これだってマスカルポーネにスポンジに、生クリームって色々使っているんだし
値段じゃない。そう、値段じゃないんですよ。
自分で自分を説得しながら、どうにかこのカフェ時間を楽しもうと必死だった。
白玉パフェが2個半くらい買えてしまう値段のティラミスを前に、せっかくだからSNS用の写真を撮る。
これでもライターだから、写真の構図には少々こだわりがある。
しばらくティラミスとカフェラテの撮影会をして、満足のいった私はちょっと溶け出したティラミスを一口頬張ろうとした。
――カランカラン
アンティークなベルの音と共に、真後ろにあるお店の扉が開く。声と気配ですぐにカップルが入ってきたのはわかった。
「席が空くまで、こちらでしばらくおまちください。」
ふと、カウンター席に目をやると、ちょうどひとり分だけ席が空いている。
そっとスプーンを置いた私は、近くを通りかかった店員さんに声をかけていた。
「あの、もしあれでしたら、私そっちの席に移りましょうか?」
「え、よろしいんですか?」
「はい、一人なんで」
「すみません、ありがとうございます!」
一人でカフェに入ると、ときたまこういう場面に遭遇する。
別に堂々と座っていればいいのに、でも外にはまだまだ並んでいる人たちがいるし。
他に一人のお客さんがいれば別だけど、今はそんな感じもない。
それに、こういう素敵なカフェが無くなるのは困るから、少しでも回転率を――とか、すぐ無意識に周りの空気を考えてしまう。
まだ口をつけていないティラミスとカフェラテをお店の人がカウンター席に運んでくれる。
私はすでに開封済みのウエットティッシュタイプのおしぼりと自分の荷物を持って、斜め前のカウンター席に移動した。
奥から店長さんらしきキレイな人が「ありがとうございます」と言って、笑顔を向けてくれた。
私が座っていた二人席には、何も知らないさっきのカップルが座る。
ふかふかのソファに、向かい合わせで。
お店のなかをキョロキョロ見渡したり、次はプリン食べに来ようねと話していたり。
見ているだけで微笑ましい。
幸せそうなカップルを見ると、やっぱり彼氏もいいもんだよなーなんて気持ちがふつふつと湧いてくる。
コンビニの時もそうだったけど、みんなすごく幸せそうなんだもん。
でもそれは、きっと何も知らないからそう見えるだけで、実は彼氏の浮気癖がひどいとか、勝手に不幸な妄想をしてしまう私は、タチが悪い。
恋愛もしたことないくせに、他人様の恋愛で勝手に盛り上がる。
私には想像もつかないような、幸せも苦しみも悲しみもきっとたくさんあるのに。
「先ほどはお席の件ありがとうございました。これよかったらどうぞ」
一時間ほどカフェを楽しみ、レジでお会計待っていると、さっきの美人な店長さんがクッキーの入った包みをくれた。
「いえ! とんでもないです!」
「また是非いらしてくださいね」
「はい、今度はプリン食べに来ます!」
「お待ちしております」
些細なことだけど、こういうことがあるだけで、見ているひとは見ているんだなーという気持ちと、さっきまでの苦労がすべて報われるようで嬉しくなる。
結果オーライなんて言葉があるけど、ついてない日から、ちょっと気分がいい日に変わっていた。
寝る前になんとなく見ていたアニメがおもしろすぎて、あと一話だけ……を繰り返していたら、朝方になっていた。
おかげで、目が覚めたのは13時。
一日の半分が終わった時間に起きてしまうと、なんとなく落ち込む。だから最近は生活リズムを整えていたつもりだったのに。
原稿明けの解放感から、アニメを見るストレス解消がやめられなかった。
でも今日は、カフェに行く! と決めている。
ここで怠慢な自分に負けてはいけないのだ。布団の中でダラダラしたい気持ちを抑え、のっそりと起き上がって準備にとりかかることにした。
チェーン店ならスッピンで行くけど、おしゃれなカフェになると、そうはいかない。
なんせお店に来ている人たちもおしゃれ女子ばかり。SNS映えを狙って、自分込みの写真を撮る子もすくなくはない。
そんな場所に、スッピン、スウェットで行こうものなら、ドレス着て牛丼屋さん行くくらい浮いてしまう。芸能人みたいにプライベートで来てます感が出せればまた別の話だけど。
ちゃんとメイクをして、よそ行きの服を着る。こういう時くらいおしゃれしないと、一生パジャマで過ごしそうだしね。
我ながら、オンとオフの差が激しい。よくアニメで見る、漫画家のオンとオフの姿がまったく別人! みたいな描写があるけど、ライターの私も似たようなものだ。
美人になるわけじゃないけど、それなりにメイクして、それなりの服を着れば、周りからはデキる女風に見えるのだから。
でも、久しぶりにメイクをすると、ついついやり過ぎて濃くなってしまう。
手鏡で自分の顔をまじまじ見ると、顔のムダ毛が恐ろしいことに気付く。
もし彼氏がいたら、キスする時に、こいつヒゲはえてるじゃん。とか思われたりするんだろうか。世の女性たちは、みんなどうしているんだ。
30分くらいかけてメイクをし、30分くらいかけて服を選ぶ。
クローゼットにはこんなにも服が詰め込まれているのに、なぜか着る服がないと言う不思議な現象に、毎度悩まされる。
なんとか14時半には家を出られたけど、なんだこの暑さは。
まだ5月だというのに、お天気アプリには30度という数字が表示されていた。
ずっと部屋にこもっていると、外の気温の感覚にバグってしまう。
せっかくおしゃれにジャケット着てきたのに、暑すぎて速攻で脱ぐはめになった。
目指すは隣駅のカフェ。
運動不足を解消しようと思って、電車には乗らず歩きを選んだのも大失敗。
日陰のない、この広い道をずっと行かなきゃいけないのかと思うと、カフェは諦めて家に帰りたくなってくる。
「あっづい……」
20分ほど歩いて、ようやく目的のカフェが見えてきた。
でもなんか変だ。人気のカフェなはずなのに、まるで人の気配がしない。なんならお店の看板もでていない。
嫌な予感がして、足早にお店の前まで行くと
扉には本日定休日の札がぶら下がっていた。
しまった。そこまで確認していなかった……。
いやいや、諦めるのはまだ早い。
こうなることも想定済みでの予備がある。
すぐにその場で、ブックマークしておいた二件目のカフェの定休日を確認してみる。
営業時間は18時までだけど、定休日ではなさそうだ。ここからまた5分ほど歩かなきゃいけないけど、まあ許容範囲だ。
次に行こうとしているカフェは、昔ながらのプリンの上に、大きなアイスがのっているメニューが大人気。
汗だくで、喉カラカラの身体に、イチ早く摂取したい糖分ナンバーワンだ。
頭のなかで、アイス……プリン……と呪文のように唱えながら、夏のような日差しの中をすすむ。
――が、カフェに到着したらそこそこの人数が並んでいるのが目にはいる。
小さなカフェだからしょうがないものの、回転率は悪そう。
ここで私の選択肢は3つ。
1.ここまで来たら並ぶしかない
2.さらに10分ほど歩く3件目のカフェに行く
3.諦めてすぐ近くのチェーン店に入る
悩んでいる間にも列が少しずつ伸びていくのを見て、やっぱりプリンが食べたい! の気持ちに素直に従い、並ぶことにした。
列に並んでいる人たちは友達同士で来ている人ばかりだったけど、店内にはカウンター席もあって一人で来ている人もチラホラいた。
一組、また一組とお店から出てきては先頭に並ぶ人たちが入っていく。
そして、ついに私にも店内に案内される順番がやってきた。
先頭の人だけは、レジ前にあるベンチに座れるらしい。
そこでメニューを渡され、席に案内するまでに決めておいてねスタイルのようだ。
店内はそれほど涼しくはなかったけど、日差しがないだけ最高だ。
何より楽しみなのは、アイスのせプリン!
ベンチに座っている私に、店員さんがメニューを持って近づいてくる。
いえ、メニューは必要ありません。私には心に決めたプリンがありますので!
などと、くだらない心の声で店員さんに話しかけながら、笑顔でメニューを受け取った。
ここまで来るのに、なかなか苦労したけど、やっと最高の時間が楽しめる……!
そう思った瞬間――
「申し訳ございません。こちらのプリンが先ほど売り切れになってしまいましたので、スイーツはこちらからお選びください。」
ついてない日は、ついてない。
人生とは、そういうものだ。
ここまでの苦労を拭い去ってくれる存在のプリンさえも、私から遠ざかっていく。
こうなることがわかっていたら、大人しくコンビニの白玉パフェで小さな幸せを堪能していた方がよかったかな。
心の中では絶望して、今にも「いやです! プリンがいい!」ってじたばた暴れまわりたい気分だけど、誰が悪いって、自分が午前中に起きなかったことが悪いし、定休日を確認してないことも悪い。
ただそれだけ。
「そうですか、わかりました!」
悲しみなんてのは、笑顔に隠してしまえば誰からも気付かれない。生きていくなかで私が身に付けた、唯一の特技だ。
プリンがないことにガックリしながらも、案内されたのは、このお店で一番いい席っぽい、ふかふかのソファが置いてある二人席だった。
あんなに並んでいるのに、私一人でこんないい席に座っていいの?
捨てる神あれば、拾う神ありとはこのことか。
プリンの代わりに頼んだティラミスは、お皿の真ん中にちょこんとおしゃれに盛られていた。プリンのボリューム感を見ていたせいで、同じ値段で、これだけですか?
という、心狭き貧乏性が顔だしてしまった。
いやいや、これだってマスカルポーネにスポンジに、生クリームって色々使っているんだし
値段じゃない。そう、値段じゃないんですよ。
自分で自分を説得しながら、どうにかこのカフェ時間を楽しもうと必死だった。
白玉パフェが2個半くらい買えてしまう値段のティラミスを前に、せっかくだからSNS用の写真を撮る。
これでもライターだから、写真の構図には少々こだわりがある。
しばらくティラミスとカフェラテの撮影会をして、満足のいった私はちょっと溶け出したティラミスを一口頬張ろうとした。
――カランカラン
アンティークなベルの音と共に、真後ろにあるお店の扉が開く。声と気配ですぐにカップルが入ってきたのはわかった。
「席が空くまで、こちらでしばらくおまちください。」
ふと、カウンター席に目をやると、ちょうどひとり分だけ席が空いている。
そっとスプーンを置いた私は、近くを通りかかった店員さんに声をかけていた。
「あの、もしあれでしたら、私そっちの席に移りましょうか?」
「え、よろしいんですか?」
「はい、一人なんで」
「すみません、ありがとうございます!」
一人でカフェに入ると、ときたまこういう場面に遭遇する。
別に堂々と座っていればいいのに、でも外にはまだまだ並んでいる人たちがいるし。
他に一人のお客さんがいれば別だけど、今はそんな感じもない。
それに、こういう素敵なカフェが無くなるのは困るから、少しでも回転率を――とか、すぐ無意識に周りの空気を考えてしまう。
まだ口をつけていないティラミスとカフェラテをお店の人がカウンター席に運んでくれる。
私はすでに開封済みのウエットティッシュタイプのおしぼりと自分の荷物を持って、斜め前のカウンター席に移動した。
奥から店長さんらしきキレイな人が「ありがとうございます」と言って、笑顔を向けてくれた。
私が座っていた二人席には、何も知らないさっきのカップルが座る。
ふかふかのソファに、向かい合わせで。
お店のなかをキョロキョロ見渡したり、次はプリン食べに来ようねと話していたり。
見ているだけで微笑ましい。
幸せそうなカップルを見ると、やっぱり彼氏もいいもんだよなーなんて気持ちがふつふつと湧いてくる。
コンビニの時もそうだったけど、みんなすごく幸せそうなんだもん。
でもそれは、きっと何も知らないからそう見えるだけで、実は彼氏の浮気癖がひどいとか、勝手に不幸な妄想をしてしまう私は、タチが悪い。
恋愛もしたことないくせに、他人様の恋愛で勝手に盛り上がる。
私には想像もつかないような、幸せも苦しみも悲しみもきっとたくさんあるのに。
「先ほどはお席の件ありがとうございました。これよかったらどうぞ」
一時間ほどカフェを楽しみ、レジでお会計待っていると、さっきの美人な店長さんがクッキーの入った包みをくれた。
「いえ! とんでもないです!」
「また是非いらしてくださいね」
「はい、今度はプリン食べに来ます!」
「お待ちしております」
些細なことだけど、こういうことがあるだけで、見ているひとは見ているんだなーという気持ちと、さっきまでの苦労がすべて報われるようで嬉しくなる。
結果オーライなんて言葉があるけど、ついてない日から、ちょっと気分がいい日に変わっていた。
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