【番外編】おひとりさま女子だった私が吸血鬼と死ぬまで一緒に暮らすはめに

仁来

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お月の物

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***ご注意***
このお話には生理に伴い、少々性癖が強めな内容となっております。
吸血鬼とお付き合いできる勇気がある方、または上記の内容でも大丈夫な方のみお楽しみください。
イヴェリス視点のお話になっています。

※生理や血ネタが苦手な方はご注意ください。
*********




吸血鬼が人間と付き合うにあたって、とても厄介な日がある。
その日が訪れるのは、年に一回とかじゃない。毎月である。

そう、その厄介な日こそ――月の物だ。



「うー」

今朝から蒼は、起きては寝て、起きては寝てを繰り返している。
身体はダルそうで、起き上がるのがやっと。気分の浮き沈みも激しく、少しのことで機嫌を悪くする。

「大丈夫か?」
「うん」
「何か食べるか?」
「うん、おなかすいた」

食欲も増すようで、普段より食べる量も増える。
とくに甘い物を口にしたがる。でも、食べたあとに罪悪感に苛まれたように落ち込んだりする。
人間の女人が子を産むために必要な“月の物”らしいのだが、これが始まる直前は、まるで人が変わったようになってしまう。

問題なのは、そこではない。
俺にとって一番厄介なのが、“月の物”が来たときただ。

「お腹痛い……」

だんだんと蒼の匂いが変わる。
人間同士にはわからないかもしれないが、この期間は血の匂いが濃くなるのだ。
人の血が原動力のヴァンアピール(吸血鬼)にとって、これほどまでに濃い匂いを放たれるのは正直辛いものがある。人で言うならば、空腹な状態のときに目の前でステーキを焼かれているようなものだ。

「イヴェリス、お腹撫でて」
「あ、ああ……」

本当であれば、離れていたい。
近ければ近いほど、理性が抑えきれなくなりそうだからだ。
だが、具合が悪そうな蒼を放っておくわけにもいかない。

「だめだ、手が冷たい」
「すまない」

腹を撫でろと言ってきたくせに、俺の手が冷たいと突き放される。

「トマリ~」
「んー」
「お腹撫でて」
「仕方ねぇな」

次に呼ばれるのはトマリだ。トマリは俺と違い体温が高いため、よく腹を撫でさせられている。
蒼に触れられるのは正直イヤではあるが、距離が保てるのはありがたい。

月の物が終わるまでの一週間、とくに苦労するのが2日目だ。離れていても興奮するほどそそる香り。
蒼の首筋を見るたび、無意識に舌をなめずっている。身体が辛いのか、寝ていることも多く無防備な姿なのもどうにかしてほしい。

夜。隣で寝ている蒼が寝がえりをうつと、うっすらと血管が透けて見える首筋が目の前で露わになる。
思わずまた舌で唇をなめる。放たれる血の香りに生唾を呑み込み、深呼吸をしているつもりが、高揚で息が上がっていく。

「んっ……」

指先で首筋をなぞれば、寝ている蒼から吐息が漏れる。
一瞬のその声に、心臓がドクンッと強く刺激される。

「……ちゅっ」

髪をどかし、耳に唇を落とせば、ピクンと蒼の身体が反応する。
頼む、起きてくれ。起きて拒絶してくれ。

そう願いながらも、抗えない本能で耳の柔らかいところを唇で挟み込む。何度か味わったとこで、耳の形を確かめるように舌先でなぞる。

「ふぁっ……」

その度に、蒼から甘い声が漏れる。
自分の心臓の音がドクンドクンと大きくなっていくのを感じながら、真っ白な首筋に舌を這わす。

「ん、イヴェリス……?」

その瞬間、蒼の目が覚める。

「何してんの……んっ…」

まだ、この状況に理解が追いついていないのか、寝ていた時よりもさらに甘い声を漏らす。

「ん……やだっ…だめぇ」

言葉では否定していても、身体の反応に抗えない様子でギュッと布団を握っている。
次第に体温は高くなり、蒼の鼓動が伝わってくる。その音は、今の俺にとってはドクドクと血の溢れる音にしか聞こえない。

「はぅ…あっ……」

服の中に手を入れ、少し張っている膨らみを優しく手の平で包み込む。
いつもならすぐに手を掴んでくるが、まだ半分夢見心地のせいか、俺の手をすんなりと受け入れた。
人間の血液と違い体温が通っていない手は、頂に突起をつくるには十分だった。

「あっ…! やっ……」

硬くなった胸先を指で弾けば、これまで以上に全身で反応を示す。

「んっ…っふ……」

声を出すことが恥とでも言うように、身を屈め必死に快楽に耐えている姿がなんともいじらしい。

「気持ちいいか…?」

その問いにも、首を振って否定する。
魔界には天邪鬼という反対のことばかり言う素直でない鬼が存在するが、セックスをしているときの蒼はいつも天邪鬼のようになる。

「気持ちよくはないのか」

脳に響くようにと、耳に触れるよう口を動かし、同時に突起をつまみ転がせば、蒼はまた声にならない声を出しながら全身を大きく震わせる。

「あっ…ぁんっ……」

さすがの蒼も、声を我慢するのにも限界がきたようだ。
苦しそうな息遣いに混じって愛らしい声で鳴きはじめた。

「蒼、血が欲しい」
「え…っ…」

その声に、俺も我慢の限界だった。
目の前の首筋に今すぐ牙を立てたい。浴びるように蒼の血を飲みたい。
ふと、そんなことばかり考えてしまう自分がおぞましい。自分が人間ではなく、魔族だということを思い知らされる瞬間だ。

「あっ…まって……そっちダメッ」

下着の中に手を滑り込ませると、微睡んでいた蒼が焦ったように俺の手を止める。

「なぜだ」
「今、生理だからっ」
「知っている」
「だからダメッ」
「……俺を誰だと思っている?」

拒む蒼の手を無視するように、滑り(ぬめ)のある秘部へと指を進ませる。

「んんッ」

水音と共に、蒼がまたビクンと悶える。

「ねぇ、本当にやめてっ……」

嫌がり、懇願する蒼の顔にゾクゾクとした興奮を覚える。
蒼は俺を優しいと言うが、所詮は悪魔と同じ血種。腹の底では人間が苦しみ叫ぶ姿が好きなのかもしれない。

「声を出さずに耐えられるならやめてやる」
「えっ…? ひぁっ……」

指先を曲げるだけで勝手に沈み込んでいき、蒼の体温が指先へと集中する。少し動かすだけで、蒼は顔を歪め押し寄せてくる快楽から逃げようとしていた。

「声を出したら奥まで入れてしまうからな」
「んっ…やだってば……」
「言葉も声とみなすぞ」
「っ……」

怒った顔で睨みつけてくる蒼に、口元がゆるむ。
必死に俺の言いつけを守り、枕に顔を埋め、声を押し殺す。
いつもよりも粘り気のある蒼の中を搔き乱せば乱すほど、高ぶらせる香りが俺を包む。

「ん…はっ……んんッ…」
「随分と苦しそうだな…声を出してもいいんだぞ」

それ以上、奥に侵入させまいと首を横に振る。
天邪鬼な蒼を素直にさせるのは、天邪鬼で返すのが一番手っ取り早い。
ひとしきり中を乱した上で、指先を離す。代わりに、焦らすように蜜口を優しく撫でてやる。

「っ……」

案の定、急に刺激がなくなり蒼が戸惑いながら俺を見る。

「蒼が苦しそうなのは、見ていられない。すまない、意地悪して」

優しく声をかけながら、額にキスをする。その間、何度も何度も蜜口をなぞる。
ぷっくりと膨れた突起にも、触れそうで触れないように。

「……っ」
「どうした? まだ苦しそうだな」

焦らされることに、蒼は弱い。
肩で息をしながら潤んだ目で何かを訴えるように私をチラッと見る。
そして身体は正直に、俺の指を求めるように太ももを擦り合わせている。

「声を出せばいいだけだ、蒼」

再び耳元で囁けば、蒼は最後の抵抗とばかりにまだ首を振っている。

「……仕方ない」

強情な蒼をもっといじめたくなり、密口の上にある突起へと中指をあてがう。
ゆっくりと優しく触れるだけで、縮こまっていた蒼が弧を描く。

「はあっ…んっ……」

横に小さく首を振りながら、枕をギュッと握りしめ、快楽に耐える。
息遣いに合わせて触れる速度に強弱をつければ、蒼はさらに指を求めて身体をすじる。

「もう意地悪しないから声を出せ……」
「ん…あっぁ……」
「これなら、腹の痛みもごまかせるだろう」
「あっ…ばかっ……」

体温のない手では、蒼の腹を撫でてやることができない。
でも、この方法であれば痛みから逃してやることができる。

「好きだ、蒼」

今度は導かれるまま、秘部の奥まで指を滑り込ませる。
いつもより粘着質な水音と、蒼の甘い声で頭の中が満ちていく。

「あっ…イヴェリスッ……ぁっ」

名前を呼ばれるたびに、愛しさが増す。

「ん…逝っていいぞ……」

「ぁあっ…はぁっ……っ…!」

俺の腕に必死にしがみつき、押し寄せてきた波に耐える蒼。
落ち着きを取り戻そうとしたタイミングで、また少し指を動かしただけで悶える。
やがてゆっくりと呼吸をしはじめ、やっと快楽から解放されると、蒼は潤んだ目のまま怒った顔で俺を見る。
その顔を見ながら、そっと蒼の股の間から手を抜き取った。

指先に絡まる血液に、ゴクリと喉が鳴る。

「ちょ、待って、うそでしょ」

俺が今からしようとしていることに気付いた蒼が、目を見開く。

そして俺は、やっとありつけたご馳走とばかりに蒼の愛液と血液が絡まるその指を口に含んだ。

「ぎゃー汚いからやめてーーー」

「ちゅぱっ……ふんぅ……」

濃厚な味に体が再び高揚していくのがわかる。
一滴も逃さぬように、自分の手に付着した蒼の血を舐めとる。

「変態吸血鬼……!!」

そんな俺を見て、蒼は顔を真っ赤にしながら怒っている。

「なんだ、俺にとって血はご馳走だ。もったいないだろ」
「血は血でも、それは違うでしょ!」
「変わらん。むしろ、首から飲むより甘くて美味いぞ」
「し、知らないし!!!」

何故そんなにも怒るのか、俺には理解ができそうになかった。
首からはよくて、なぜこれは許されないのか。

人間というのは、難しい生き物だ。


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