上 下
328 / 330
第六章 姦姦蛇螺編

第327話

しおりを挟む
 もしかしたら、エリカは俺より頭が良いのでは――、いや、さすがに11歳に負けているという可能性は……。

「ふむ。教員免許というのは他人に教えることか?」
「そう。学生に勉強を教えるのには資格が必要」
「エリカちゃん、すごい!」
「教員免許なんて飛び級していれば普通に取れる。問題ない」
「――それって、普通は無理だと胡桃は思うの」
「妾も、寺子屋で童たちに勉学を教えていた時はあったが、そのような資格は、その時は無かったのじゃ」
「え? 白亜さんも、人に勉強を教えていたことがあるの?」
「うむ。こう見えても600年は生きておるからの。実際、見て来たことを語ることくらいは容易なのじゃ」
「胡桃も、学年1位。たぶん、頑張れば私に追いつける」
「学年1位なのは、特待生扱いの為だから……」
「そういえば、胡桃は特待生だと職員会議で聞いた」
「なるほど。さすが、ご主人様の妹。優秀なのじゃな?」

 ……なんだろうか? このハイレベルな話の応酬。
 妹は、一学年300人は居る中学校で学年1位の成績で、エリカは教員免許を持つ飛び級を当たり前と考えていて、白亜も寺子屋で教えていたという。
 
「まぁ、あれだな……」
「ご主人様?」
「マスター?」
「お兄ちゃん?」

 俺は、一度、咳をして3人を見て――、

「人生と言うのは……勉強が全てではないんだぞ?」
「お兄ちゃん……。勉強できないことを正当化しても意味はないの……。真実から目を背けたら駄目なの」
「ご主人様が勉強できないわけが――」
「マスターに出来ないことはない」
「皆、多様性と言う言葉を知っているか? 勉強が出来ないことも多様性の一つなんだぞ?」
「胡桃、そんな多様性聞いたこと無いの……。でも! 大丈夫だよ! お兄ちゃん!」
「そうか。分かってくれるか……」

 どうやら妹は、俺の言葉を否定しつつも理解を示してくれたらしい。
 さすが我が妹。
 
「お兄ちゃんが、馬鹿でも、胡桃はお兄ちゃんの全てにYESだから!」
「――いや、そういう肯定はいらないから。あと、フォローになってないからな」
「わ、妾も! ご主人様が、馬鹿でも問題ないのじゃ!」
「マスター、人には得手不得手がある。マスターが、どんなに勉強が苦手でも、私が教えるから大丈夫」
「さすがにそれは……」

 11歳といえば小学5年生。
 小学5年生に高校1年生の俺が勉強を教わるとか流石に……それは、俺のプライドが……。

「大丈夫。マスター。私は教員免許を持っている」
「妾も、歴史や神代文字は教えられるのじゃ!」
「胡桃も、高校1年の2学期くらいまでなら分かるの!」
「……少し出かけてくる」
「お兄ちゃん?」
「マスター?」
「ご主人様!?」

 俺は、3人の言葉を背中越しに聞きながら、家を出る。
 そしてすぐに神谷へ電話する。

「神谷か?」
「はい。どうかしましたか? 桂木警視監」
「勉強の講師の手配をしてくれないか? 金に糸目はつけない」
「えっと? 何の話です?」

 戸惑った声が、携帯電話越しに聞こえた。





しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

道具屋のおっさんが勇者パーティーにリンチされた結果、一日を繰り返すようになった件。

名無し
ファンタジー
道具屋の店主モルネトは、ある日訪れてきた勇者パーティーから一方的に因縁をつけられた挙句、理不尽なリンチを受ける。さらに道具屋を燃やされ、何もかも失ったモルネトだったが、神様から同じ一日を無限に繰り返すカードを授かったことで開き直り、善人から悪人へと変貌を遂げる。最早怖い者知らずとなったモルネトは、どうしようもない人生を最高にハッピーなものに変えていく。綺麗事一切なしの底辺道具屋成り上がり物語。

18禁NTR鬱ゲーの裏ボス最強悪役貴族に転生したのでスローライフを楽しんでいたら、ヒロイン達が奴隷としてやって来たので幸せにすることにした

田中又雄
ファンタジー
『異世界少女を歪ませたい』はエロゲー+MMORPGの要素も入った神ゲーであった。 しかし、NTR鬱ゲーであるためENDはいつも目を覆いたくなるものばかりであった。 そんなある日、裏ボスの悪役貴族として転生したわけだが...俺は悪役貴族として動く気はない。 そう思っていたのに、そこに奴隷として現れたのは今作のヒロイン達。 なので、酷い目にあってきた彼女達を精一杯愛し、幸せなトゥルーエンドに導くことに決めた。 あらすじを読んでいただきありがとうございます。 併せて、本作品についてはYouTubeで動画を投稿しております。 より、作品に没入できるようつくっているものですので、よければ見ていただければ幸いです!

妻を寝取ったパーティーメンバーに刺殺された俺はもう死にたくない。〜二度目の俺。最悪から最高の人生へ〜

橋本 悠
ファンタジー
両親の死、いじめ、NTRなどありとあらゆる`最悪`を経験し、終いにはパーティーメンバーに刺殺された俺は、異世界転生に成功した……と思いきや。 もしかして……また俺かよ!! 人生の最悪を賭けた二周目の俺が始まる……ってもうあんな最悪見たくない!!! さいっっっっこうの人生送ってやるよ!! ────── こちらの作品はカクヨム様でも連載させていただいております。 先取り更新はカクヨム様でございます。是非こちらもよろしくお願いします!

スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活

昼寝部
ファンタジー
 この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。  しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。  そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。  しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。  そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。  これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。

勇者に闇討ちされ婚約者を寝取られた俺がざまあするまで。

飴色玉葱
ファンタジー
王都にて結成された魔王討伐隊はその任を全うした。 隊を率いたのは勇者として名を挙げたキサラギ、英雄として誉れ高いジークバルト、さらにその二人を支えるようにその婚約者や凄腕の魔法使いが名を連ねた。 だがあろうことに勇者キサラギはジークバルトを闇討ちし行方知れずとなってしまう。 そして、恐るものがいなくなった勇者はその本性を現す……。

甘い誘惑

さつらぎ結雛
恋愛
幼馴染だった3人がある日突然イケナイ関係に… どんどん深まっていく。 こんなにも身近に甘い罠があったなんて あの日まで思いもしなかった。 3人の関係にライバルも続出。 どんどん甘い誘惑の罠にハマっていく胡桃。 一体この罠から抜け出せる事は出来るのか。 ※だいぶ性描写、R18、R15要素入ります。 自己責任でお願い致します。

序盤でボコられるクズ悪役貴族に転生した俺、死にたくなくて強くなったら主人公にキレられました。え? お前も転生者だったの? そんなの知らんし〜

水間ノボル🐳
ファンタジー
↑「お気に入りに追加」を押してくださいっ!↑ ★2024/2/25〜3/3 男性向けホットランキング1位! ★2024/2/25 ファンタジージャンル1位!(24hポイント) 「主人公が俺を殺そうとしてくるがもう遅い。なぜか最強キャラにされていた~」 『醜い豚』  『最低のゴミクズ』 『無能の恥晒し』  18禁ゲーム「ドミナント・タクティクス」のクズ悪役貴族、アルフォンス・フォン・ヴァリエに転生した俺。  優れた魔術師の血統でありながら、アルフォンスは豚のようにデブっており、性格は傲慢かつ怠惰。しかも女の子を痛ぶるのが性癖のゴミクズ。  魔術の鍛錬はまったくしてないから、戦闘でもクソ雑魚であった。    ゲーム序盤で主人公にボコられて、悪事を暴かれて断罪される、ざまぁ対象であった。  プレイヤーをスカッとさせるためだけの存在。  そんな破滅の運命を回避するため、俺はレベルを上げまくって強くなる。  ついでに痩せて、女の子にも優しくなったら……なぜか主人公がキレ始めて。 「主人公は俺なのに……」 「うん。キミが主人公だ」 「お前のせいで原作が壊れた。絶対に許さない。お前を殺す」 「理不尽すぎません?」  原作原理主義の主人公が、俺を殺そうとしてきたのだが。 ※ カクヨム様にて、異世界ファンタジージャンル表紙入り。5000スター、10000フォロワーを達成!

ごめんみんな先に異世界行ってるよ1年後また会おう

味噌汁食べれる
ファンタジー
主人公佐藤 翔太はクラスみんなより1年も早く異世界に、行ってしまう。みんなよりも1年早く異世界に行ってしまうそして転移場所は、世界樹で最強スキルを実でゲット?スキルを奪いながら最強へ、そして勇者召喚、それは、クラスのみんなだった。クラスのみんなが頑張っているときに、主人公は、自由気ままに生きていく

処理中です...