305 / 330
第六章 姦姦蛇螺編
第304話
しおりを挟む
目の前の都の父親に関しての記憶は殆どないが、話しているとイライラしてくる。
言葉の応酬を思わず交わしてしまう。
「減らず口を――」
「はじめ!」
神谷の合図と共に、距離を詰めてくる都の父親である修二と、その場を動かずにジッと相手の出方を待つ俺。
そんな俺達を、都は心配そうな表情で見てくる。
「余所見をしている場合か!」
俺の頭に向けて上段回し蹴りを放ってくる修二だが、俺は、その蹴りを無造作に頭で受ける。
「――なっ!」
「優斗!?」
「問題ない。この程度の威力の蹴りなら避ける必要すらないからな」
都へ返した言葉に、修二が距離を置き、腰を落した状態で、俺を睨みつけながら構える。
「次は、俺の攻撃か?」
「そんなこと、ある訳がないだろう!」
空中へ飛びあがり、俺に向けて放ってくるのは胴回し蹴り。
40歳を超えているというのに、無理をするものだ。
俺が避けたら、どうするつもりなのか。
そもそも、そんな予備動作のある技を使うなど戦場においては自殺行為であり、無駄に体力を浪費するだけだ。
半歩進み、右肩で振り下ろさた修二の右膝を受け止めると共に、修二のがら空きになった背中を軽く押す。
空中で軌道を変えられた修二の身体は、畳の上に落ち数メートル回転してから止まる。
「やれやれ」
どうしたものか。
正直、弱すぎて、どこまで手加減していいのか困るところだ。
「まったく……ダメージがないのか?」
平然と立っている俺を見て修二がそんな事を行って来るが、ウィークポイントを避け、肉体に衝撃が伝わる前に、威力を殺していることから、俺の肉体には殆どダメージはない。
もちろん、身体強化も使っていない。
「さて――、どうしたものか」
俺の言葉にギリッと、歯を噛みしめる音が聞こえてくる。
それと共に、正拳突きを放ってくる修二。
俺は、その拳を払う。
「まさか――」
何度も正拳突きだけでなく、顔面に目掛けて抜き手を放ってくるが、それら全てを右手一本で払う。
「ばかな……。こんな馬鹿な……」
信じられないと言った表情へと変わっていく修二の拳や手刀を捌いていると、中段蹴りを放ってくるが、それを腹筋で受け止める。
後方へと、たたらを踏む神楽坂修二。
「今の手応えは……、まるで……大型トラックのゴムを蹴ったような……」
「もう終わりか?」
「――くっ」
俺の挑発に、再度、右上段回し蹴りを放ってくるが、俺は瞬時に修二の間合いに踏み込むと同時に――、胸に右手を当てる。
「通背拳!」
踏み込んだ力を――、足、腰、身体――、腕へと、0コンマの1秒の世界で、一切のロスなく伝えると共に、修二の胸に沿えていた手のひらに力を籠め放つ。
それにより、60キロ以上はある成人男性の――修二の身体が後方へと吹き飛ぶ。
20メートルほど吹き飛び畳の上を転がっていき、道場の壁へと激突し――、ようやく止まる。
「――さて、そろそろやるか」
「お父さん!?」
「都、安心しろ。手加減はした」
俺は腕を回しながら、都の父親が立ってくるのを待つが――。
「桂木警視監、少し失礼します」
「――いや、神谷。まだ戦闘中だが?」
「――いえ。ちょっと……」
10秒ほど待っていたが、立ってこない様子に、何かを感じたのか神谷が走って都の父親の傍まで行くと座り――、
「死んではいませんが、気絶しています。桂木警視監の勝利です」
「え?」
身体強化もしてない常人の人間と変わらない身体能力の、ただの通背拳の一撃で……。
「そ、そうか……」
「優斗! 手加減してって言ったじゃないの!」
「――いや、かなり手加減したんだが……」
言葉の応酬を思わず交わしてしまう。
「減らず口を――」
「はじめ!」
神谷の合図と共に、距離を詰めてくる都の父親である修二と、その場を動かずにジッと相手の出方を待つ俺。
そんな俺達を、都は心配そうな表情で見てくる。
「余所見をしている場合か!」
俺の頭に向けて上段回し蹴りを放ってくる修二だが、俺は、その蹴りを無造作に頭で受ける。
「――なっ!」
「優斗!?」
「問題ない。この程度の威力の蹴りなら避ける必要すらないからな」
都へ返した言葉に、修二が距離を置き、腰を落した状態で、俺を睨みつけながら構える。
「次は、俺の攻撃か?」
「そんなこと、ある訳がないだろう!」
空中へ飛びあがり、俺に向けて放ってくるのは胴回し蹴り。
40歳を超えているというのに、無理をするものだ。
俺が避けたら、どうするつもりなのか。
そもそも、そんな予備動作のある技を使うなど戦場においては自殺行為であり、無駄に体力を浪費するだけだ。
半歩進み、右肩で振り下ろさた修二の右膝を受け止めると共に、修二のがら空きになった背中を軽く押す。
空中で軌道を変えられた修二の身体は、畳の上に落ち数メートル回転してから止まる。
「やれやれ」
どうしたものか。
正直、弱すぎて、どこまで手加減していいのか困るところだ。
「まったく……ダメージがないのか?」
平然と立っている俺を見て修二がそんな事を行って来るが、ウィークポイントを避け、肉体に衝撃が伝わる前に、威力を殺していることから、俺の肉体には殆どダメージはない。
もちろん、身体強化も使っていない。
「さて――、どうしたものか」
俺の言葉にギリッと、歯を噛みしめる音が聞こえてくる。
それと共に、正拳突きを放ってくる修二。
俺は、その拳を払う。
「まさか――」
何度も正拳突きだけでなく、顔面に目掛けて抜き手を放ってくるが、それら全てを右手一本で払う。
「ばかな……。こんな馬鹿な……」
信じられないと言った表情へと変わっていく修二の拳や手刀を捌いていると、中段蹴りを放ってくるが、それを腹筋で受け止める。
後方へと、たたらを踏む神楽坂修二。
「今の手応えは……、まるで……大型トラックのゴムを蹴ったような……」
「もう終わりか?」
「――くっ」
俺の挑発に、再度、右上段回し蹴りを放ってくるが、俺は瞬時に修二の間合いに踏み込むと同時に――、胸に右手を当てる。
「通背拳!」
踏み込んだ力を――、足、腰、身体――、腕へと、0コンマの1秒の世界で、一切のロスなく伝えると共に、修二の胸に沿えていた手のひらに力を籠め放つ。
それにより、60キロ以上はある成人男性の――修二の身体が後方へと吹き飛ぶ。
20メートルほど吹き飛び畳の上を転がっていき、道場の壁へと激突し――、ようやく止まる。
「――さて、そろそろやるか」
「お父さん!?」
「都、安心しろ。手加減はした」
俺は腕を回しながら、都の父親が立ってくるのを待つが――。
「桂木警視監、少し失礼します」
「――いや、神谷。まだ戦闘中だが?」
「――いえ。ちょっと……」
10秒ほど待っていたが、立ってこない様子に、何かを感じたのか神谷が走って都の父親の傍まで行くと座り――、
「死んではいませんが、気絶しています。桂木警視監の勝利です」
「え?」
身体強化もしてない常人の人間と変わらない身体能力の、ただの通背拳の一撃で……。
「そ、そうか……」
「優斗! 手加減してって言ったじゃないの!」
「――いや、かなり手加減したんだが……」
0
お気に入りに追加
108
あなたにおすすめの小説
18禁NTR鬱ゲーの裏ボス最強悪役貴族に転生したのでスローライフを楽しんでいたら、ヒロイン達が奴隷としてやって来たので幸せにすることにした
田中又雄
ファンタジー
『異世界少女を歪ませたい』はエロゲー+MMORPGの要素も入った神ゲーであった。
しかし、NTR鬱ゲーであるためENDはいつも目を覆いたくなるものばかりであった。
そんなある日、裏ボスの悪役貴族として転生したわけだが...俺は悪役貴族として動く気はない。
そう思っていたのに、そこに奴隷として現れたのは今作のヒロイン達。
なので、酷い目にあってきた彼女達を精一杯愛し、幸せなトゥルーエンドに導くことに決めた。
あらすじを読んでいただきありがとうございます。
併せて、本作品についてはYouTubeで動画を投稿しております。
より、作品に没入できるようつくっているものですので、よければ見ていただければ幸いです!
妻を寝取ったパーティーメンバーに刺殺された俺はもう死にたくない。〜二度目の俺。最悪から最高の人生へ〜
橋本 悠
ファンタジー
両親の死、いじめ、NTRなどありとあらゆる`最悪`を経験し、終いにはパーティーメンバーに刺殺された俺は、異世界転生に成功した……と思いきや。
もしかして……また俺かよ!!
人生の最悪を賭けた二周目の俺が始まる……ってもうあんな最悪見たくない!!!
さいっっっっこうの人生送ってやるよ!!
──────
こちらの作品はカクヨム様でも連載させていただいております。
先取り更新はカクヨム様でございます。是非こちらもよろしくお願いします!
【R18】スライムにマッサージされて絶頂しまくる女の話
白木 白亜
ファンタジー
突如として異世界転移した日本の大学生、タツシ。
世界にとって致命的な抜け穴を見つけ、召喚士としてあっけなく魔王を倒してしまう。
その後、一緒に旅をしたスライムと共に、マッサージ店を開くことにした。卑猥な目的で。
裏があるとも知れず、王都一番の人気になるマッサージ店「スライム・リフレ」。スライムを巧みに操って体のツボを押し、角質を取り、リフレッシュもできる。
だがそこは三度の飯よりも少女が絶頂している瞬間を見るのが大好きなタツシが経営する店。
そんな店では、膣に媚薬100%の粘液を注入され、美少女たちが「気持ちよくなって」いる!!!
感想大歓迎です!
※1グロは一切ありません。登場人物が圧倒的な不幸になることも(たぶん)ありません。今日も王都は平和です。異種姦というよりは、スライムは主人公の補助ツールとして扱われます。そっち方面を期待していた方はすみません。
スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活
昼寝部
ファンタジー
この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。
しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。
そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。
しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。
そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。
これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。
勇者に闇討ちされ婚約者を寝取られた俺がざまあするまで。
飴色玉葱
ファンタジー
王都にて結成された魔王討伐隊はその任を全うした。
隊を率いたのは勇者として名を挙げたキサラギ、英雄として誉れ高いジークバルト、さらにその二人を支えるようにその婚約者や凄腕の魔法使いが名を連ねた。
だがあろうことに勇者キサラギはジークバルトを闇討ちし行方知れずとなってしまう。
そして、恐るものがいなくなった勇者はその本性を現す……。
甘い誘惑
さつらぎ結雛
恋愛
幼馴染だった3人がある日突然イケナイ関係に…
どんどん深まっていく。
こんなにも身近に甘い罠があったなんて
あの日まで思いもしなかった。
3人の関係にライバルも続出。
どんどん甘い誘惑の罠にハマっていく胡桃。
一体この罠から抜け出せる事は出来るのか。
※だいぶ性描写、R18、R15要素入ります。
自己責任でお願い致します。
序盤でボコられるクズ悪役貴族に転生した俺、死にたくなくて強くなったら主人公にキレられました。え? お前も転生者だったの? そんなの知らんし〜
水間ノボル🐳
ファンタジー
↑「お気に入りに追加」を押してくださいっ!↑
★2024/2/25〜3/3 男性向けホットランキング1位!
★2024/2/25 ファンタジージャンル1位!(24hポイント)
「主人公が俺を殺そうとしてくるがもう遅い。なぜか最強キャラにされていた~」
『醜い豚』
『最低のゴミクズ』
『無能の恥晒し』
18禁ゲーム「ドミナント・タクティクス」のクズ悪役貴族、アルフォンス・フォン・ヴァリエに転生した俺。
優れた魔術師の血統でありながら、アルフォンスは豚のようにデブっており、性格は傲慢かつ怠惰。しかも女の子を痛ぶるのが性癖のゴミクズ。
魔術の鍛錬はまったくしてないから、戦闘でもクソ雑魚であった。
ゲーム序盤で主人公にボコられて、悪事を暴かれて断罪される、ざまぁ対象であった。
プレイヤーをスカッとさせるためだけの存在。
そんな破滅の運命を回避するため、俺はレベルを上げまくって強くなる。
ついでに痩せて、女の子にも優しくなったら……なぜか主人公がキレ始めて。
「主人公は俺なのに……」
「うん。キミが主人公だ」
「お前のせいで原作が壊れた。絶対に許さない。お前を殺す」
「理不尽すぎません?」
原作原理主義の主人公が、俺を殺そうとしてきたのだが。
※ カクヨム様にて、異世界ファンタジージャンル表紙入り。5000スター、10000フォロワーを達成!
ごめんみんな先に異世界行ってるよ1年後また会おう
味噌汁食べれる
ファンタジー
主人公佐藤 翔太はクラスみんなより1年も早く異世界に、行ってしまう。みんなよりも1年早く異世界に行ってしまうそして転移場所は、世界樹で最強スキルを実でゲット?スキルを奪いながら最強へ、そして勇者召喚、それは、クラスのみんなだった。クラスのみんなが頑張っているときに、主人公は、自由気ままに生きていく
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる