上 下
288 / 330
第六章 姦姦蛇螺編

第287話

しおりを挟む
「此方の世界の人間と、異世界の人間では身体の作りから違うために、こっちの世界の人間は魔法を使うことはできない。だから、異世界の魔法は使えない」

 俺は言い切ったあとで、心の中で「たぶんな……」と呟きながら都の方を見る。
 それは都が異世界の魔法である対抗魔法『カウンターマジック』と同じような魔法を纏っていたのを見た事があるからだ。

「あれ? それって……」

 妹が何か妙案でも思いついたような表情を見せる。

「お兄ちゃん! そうすると、お兄ちゃんと同じ力を、地球の人は使えるようになるってこと?」
「どうだろうな……。ある程度は、可能だと思うが……」

 実際に、扱う事は出来ると思うが、その為には血の滲むような修練が必要というか地獄を見ることになる。

「胡桃もやってみたい! お兄ちゃん、できる?」
「まぁ、短時間なら可能だが……」

 俺はソファーから立ち上がり、冷蔵庫の中からリンゴを3個取り出す。
 あとは、どんぶりを1個持ち、ソファーへと戻ってきたあと、リンゴを1個、妹へと放り投げる。

「リンゴ?」
「それを素手で握りつぶしてみろ」
「無理っ! 無理っ! リンゴなんて握りつぶせないの!」
「だろうな」

 まぁ、簡単に言えば、肉体操作と言った方が早いな。
 まず通常時だと、俺でもリンゴを握りつぶすような芸当は出来ない。

「できないんだ……」

 俺は、身体強化をしない状態でリンゴを右手に持ったまま力を込めていく。
 ただし、まったく握り潰せるようなことはなく――、

「次に、肉体操作をする」

 俺は、身体強化した状態でリンゴを、どんぶりの上で握り潰す。

「そうすると、リンゴジュースが出来上がる」
「すごい! どうやってやったの!?」
「そうだな。分かりやすくいえば火事場の馬鹿力を、任意に発動させているようなモノだと理解してくれればいい」
「お兄ちゃんは、どうやって出来るようになったの?」
「そこは勇者として召喚されたスキルだな」

 まぁ、実際は、そんなスキルなんて持たされたことないが、それらしく言っておけばいいだろう。

「胡桃には出来ないの?」

 残念そうな哀し気な目で俺を見てくる妹。
 仕方ないな……。

「やってみたいのか?」
「うんっ!」

 先ほどまでは打って変わって期待に満ちた目で俺を見てくる妹。
 
「それじゃ、10秒だけな」

 妹の後ろに移動し、頭に手を置き、妹の肉体のリミッターを少しだけ外す。

「ほら、どんぶりの上で力を入れてみろ」
「うんっ! ――って、すごっ! すごいの! お兄ちゃん! ぐしゃって! ぐしゃって! 潰れたの! ――って!? もう力が入らなくって――、腕が振るえて力が入らないの……」
「まぁ、軽い筋肉痛ってやつだな。つまりだな。人間の肉体は、100%の力を出すと危険だから脳がリミッターを掛けている訳だ。それを解除すると、今みたいに火事場の何とかみたいに力を発揮することができる。ただし、訓練してないと、うちの妹みたいに筋肉痛になったりする」
「ええーっ! これ、かなりやばい筋肉痛だと思うの! 全然、力が入らないの! たぶん、すごく痛く無い予感がするの!」
「だろうな」

 仕方なく、俺は妹の腕に触れて肉体再生を行い筋肉組織を修復する。

「どうだ?」
「う……ん? 痛くなくなって普通に動かせるようになったの! お兄ちゃん、何をしたの?」
「体組織の修復をした」
「体組織の修復!?」

 俺の言葉に反応したのは都。

「それって、細胞組織の修復を優斗はしたの!?」
「まぁ、そうだな。慣れれば、出来るようになる。胡桃や純也の肉体を修復したのも同じ原理だな」
「……優斗の力って、科学と医学を根幹から覆すというより数百年は進める程のすごいもの……なのでは?」
「気のせいだろ」
「優斗、私も出来る?」
「問題なく出来ると思うが?」

 俺は、もう一個リンゴを取り出し、都に渡して、都の身体強化を行う。

 
 
 
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

18禁NTR鬱ゲーの裏ボス最強悪役貴族に転生したのでスローライフを楽しんでいたら、ヒロイン達が奴隷としてやって来たので幸せにすることにした

田中又雄
ファンタジー
『異世界少女を歪ませたい』はエロゲー+MMORPGの要素も入った神ゲーであった。 しかし、NTR鬱ゲーであるためENDはいつも目を覆いたくなるものばかりであった。 そんなある日、裏ボスの悪役貴族として転生したわけだが...俺は悪役貴族として動く気はない。 そう思っていたのに、そこに奴隷として現れたのは今作のヒロイン達。 なので、酷い目にあってきた彼女達を精一杯愛し、幸せなトゥルーエンドに導くことに決めた。 あらすじを読んでいただきありがとうございます。 併せて、本作品についてはYouTubeで動画を投稿しております。 より、作品に没入できるようつくっているものですので、よければ見ていただければ幸いです!

妻を寝取ったパーティーメンバーに刺殺された俺はもう死にたくない。〜二度目の俺。最悪から最高の人生へ〜

橋本 悠
ファンタジー
両親の死、いじめ、NTRなどありとあらゆる`最悪`を経験し、終いにはパーティーメンバーに刺殺された俺は、異世界転生に成功した……と思いきや。 もしかして……また俺かよ!! 人生の最悪を賭けた二周目の俺が始まる……ってもうあんな最悪見たくない!!! さいっっっっこうの人生送ってやるよ!! ────── こちらの作品はカクヨム様でも連載させていただいております。 先取り更新はカクヨム様でございます。是非こちらもよろしくお願いします!

【R18】スライムにマッサージされて絶頂しまくる女の話

白木 白亜
ファンタジー
突如として異世界転移した日本の大学生、タツシ。 世界にとって致命的な抜け穴を見つけ、召喚士としてあっけなく魔王を倒してしまう。 その後、一緒に旅をしたスライムと共に、マッサージ店を開くことにした。卑猥な目的で。 裏があるとも知れず、王都一番の人気になるマッサージ店「スライム・リフレ」。スライムを巧みに操って体のツボを押し、角質を取り、リフレッシュもできる。 だがそこは三度の飯よりも少女が絶頂している瞬間を見るのが大好きなタツシが経営する店。 そんな店では、膣に媚薬100%の粘液を注入され、美少女たちが「気持ちよくなって」いる!!! 感想大歓迎です! ※1グロは一切ありません。登場人物が圧倒的な不幸になることも(たぶん)ありません。今日も王都は平和です。異種姦というよりは、スライムは主人公の補助ツールとして扱われます。そっち方面を期待していた方はすみません。

スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活

昼寝部
ファンタジー
 この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。  しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。  そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。  しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。  そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。  これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。

勇者に闇討ちされ婚約者を寝取られた俺がざまあするまで。

飴色玉葱
ファンタジー
王都にて結成された魔王討伐隊はその任を全うした。 隊を率いたのは勇者として名を挙げたキサラギ、英雄として誉れ高いジークバルト、さらにその二人を支えるようにその婚約者や凄腕の魔法使いが名を連ねた。 だがあろうことに勇者キサラギはジークバルトを闇討ちし行方知れずとなってしまう。 そして、恐るものがいなくなった勇者はその本性を現す……。

異世界に行けるようになったんだが自宅に令嬢を持ち帰ってしまった件

シュミ
ファンタジー
高二である天音 旬はある日、女神によって異世界と現実世界を行き来できるようになった。 旬が異世界から現実世界に帰る直前に転びそうな少女を助けた結果、旬の自宅にその少女を持ち帰ってしまった。その少女はリーシャ・ミリセントと名乗り、王子に婚約破棄されたと話し───!?

甘い誘惑

さつらぎ結雛
恋愛
幼馴染だった3人がある日突然イケナイ関係に… どんどん深まっていく。 こんなにも身近に甘い罠があったなんて あの日まで思いもしなかった。 3人の関係にライバルも続出。 どんどん甘い誘惑の罠にハマっていく胡桃。 一体この罠から抜け出せる事は出来るのか。 ※だいぶ性描写、R18、R15要素入ります。 自己責任でお願い致します。

序盤でボコられるクズ悪役貴族に転生した俺、死にたくなくて強くなったら主人公にキレられました。え? お前も転生者だったの? そんなの知らんし〜

水間ノボル🐳
ファンタジー
↑「お気に入りに追加」を押してくださいっ!↑ ★2024/2/25〜3/3 男性向けホットランキング1位! ★2024/2/25 ファンタジージャンル1位!(24hポイント) 「主人公が俺を殺そうとしてくるがもう遅い。なぜか最強キャラにされていた~」 『醜い豚』  『最低のゴミクズ』 『無能の恥晒し』  18禁ゲーム「ドミナント・タクティクス」のクズ悪役貴族、アルフォンス・フォン・ヴァリエに転生した俺。  優れた魔術師の血統でありながら、アルフォンスは豚のようにデブっており、性格は傲慢かつ怠惰。しかも女の子を痛ぶるのが性癖のゴミクズ。  魔術の鍛錬はまったくしてないから、戦闘でもクソ雑魚であった。    ゲーム序盤で主人公にボコられて、悪事を暴かれて断罪される、ざまぁ対象であった。  プレイヤーをスカッとさせるためだけの存在。  そんな破滅の運命を回避するため、俺はレベルを上げまくって強くなる。  ついでに痩せて、女の子にも優しくなったら……なぜか主人公がキレ始めて。 「主人公は俺なのに……」 「うん。キミが主人公だ」 「お前のせいで原作が壊れた。絶対に許さない。お前を殺す」 「理不尽すぎません?」  原作原理主義の主人公が、俺を殺そうとしてきたのだが。 ※ カクヨム様にて、異世界ファンタジージャンル表紙入り。5000スター、10000フォロワーを達成!

処理中です...