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第五章 コトリバコ編

第226話

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 雪が、荒れ狂い舞い散る世界――。
 そこは、世界からもっとも孤立した大陸であり名は、南極大陸と呼ばれていた。
 そんな南極大陸の沿岸から、離れた一面が、真っ白な――、見通しが1メートル先も見ることが出来ない場所には観測所が存在していた。
 観測所の温度計は、マイナス80度を指し示していた。

「こちら、ボストーク基地! 正体不明の化物に襲われております!」

 極寒の地で、悲痛な救援を求める声が、マイクに向けられて発せられる。
 ただ、通信障害が起きているのか応答が一切なく――、それと同時に、ボストーク基地が土台としていた棚氷から、鈍い音が周囲に響き渡ると同時に、広範囲にヒビが走っていく。
 そして――、割れた棚氷から巨大な白い触手が姿を見せる。
 触手の数は100を超えており、一本一本の触手の大きさは、直径が5メートルを超えており、長さは目測だけでも200メートルを優に超えていた。
 そんな異常な――、尋常ならざるモノを見て観測隊員は、震える声で呟く。

「――ジ、ジヤヴォール……」
 
 ロシア語で化け物――、悪魔を示す言葉。 
 彼の呟き通り巨大な触手が、ロシアのボストーク基地を破壊し――、潰す。
多くの観測員や軍人や学者が無残な肉塊へと変わっていく。
 最後に言葉を発したのは、ボストーク基地に在籍していた人間であったが――、ボストーク基地は、発生した地割れの中に沈み込んでいった。
 
 そして――、周囲に残されたのは直径500メートルを超える巨大な大穴だけであり、大穴は底が見えないほど暗く――、深淵を覗かせていた。



 場所は、南極大陸から遥か北上した日本の千葉県。
 
「あの……」
「はい。どうかしましたか?」
「神谷警視長に、お会いたいのですが……」
「神谷警視長にですか? 少しお待ちください」
 
 警察官は、すぐに連絡を取ると――、

「申し訳ありません。神谷警視長は、現在――、忙しく――」
「あの、それでは、桂木君に伝えておいてくれるように託をお願いしてもいいですか?」
「託ですか?」
「はい。胡桃ちゃんが風邪で熱があると伝えてください」
「わかりました。病院へは?」
「連れていくつもりですけど……足が――」
「……少し、お待ちください」

 無線で確認を取る警察官は、何らかの指示を受けているのか何度か頷くと――。

「お二人を病院にまで連れていくようにと命令を受けましたので、すぐに車を用意致します」
「あの、神谷警視長は忙しいという話でしたけど、誰が許可を出したんですか?」
「それは……。神谷警視長の上の……」
「上の方って誰なんですか?」
「それは、お伝えできません」
「……分かりました」

 すぐに引き下がる彼女を見て、警察官は追及されない事に安堵の溜息を心の中でもらしていた。



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