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第四章 囚われし呪詛村の祟り編
第205話 第三者side
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桂木優斗と、山崎幸太郎が自動販売機へ移動し会話を始めたのを見て伊邪那美は、視線をパンドーラへと向ける。
「さて――、話を始めるとしようかの」
「あの……」
「何だ?」
「貴女様は、もしかして……」
「ふむ。分からぬか? もしや、汝は、神の力を有してはおらぬのか?」
「――いえ。そうではなく……、私が箱庭の管理者として活動していた時に、お聞きした内容とは異なっておりまして――」
「どういうことか?」
「受肉している事に――」
「ああ、そのことか。まぁ、色々とあってな。それよりも、話を勧めたいのだが良いか?」
「は、はい……」
「さて――」
前置きを置いたところで、伊邪那美は――。
「まず、パンドーラ。お前は、どうして、この地に来た? あれは、エルピスの箱庭は、本来ある場所から移動してはいけないと言うことになっているはずだと妾は認識しておるが? そういう術式が組まれておったのだろう?」
「それは、私のせいではなく十字軍が理由です」
「十字軍とは政治宗教か。偽物の神をでっち上げた大罪者達ならやりかねないか」
「はい。彼らは、バベルの探しておりましたから――」
「バベルか。まだ現存はしておるのか?」
「おそらくは――。バベルのコアとしても転用が可能ですから」
「エルピスの箱庭が、存在出来ているという事はそういうことか。――で、日本にエルピスの箱庭が存在しているという事は――」
「おそらく日本にバベルが存在しているかと」
「まったく……。余計なことをしてくれる。本来であれば、エルピスの箱庭はオリンポス山で管理されておくべき代物であろうに。それを、この星に持ってくるなど正気とは思えんな」
「私も詳しくは聞かされておりませんが、おそらくゼウス様は、プロメテウス様の反旗に対して使う為に取り寄せたと思われます」
「――で、まんまとゼウスの策略に乗ったということか」
「はい」
「これは厄介な問題になりそうだ」
溜息をつく伊邪那美は、優斗の方へと視線を向ける。
「厄介とは?」
「お前が、意図してもしていなかったとしても、あの者が大事にしている宝物に傷をつけた事に代わりはない」
「――それは……」
「自覚はあるのだな?」
「はい……」
「なら、大人しく殺されておくことだ。奴のことだ。お前を殺すことは既に確定済みだろうて」
「そんな! 私は、地獄のような苦しみを、自分の民と共に永劫とも呼べる時間を過ごしてきました! その結果が、死なんて……」
「それは、汝の事情であろう? 正直、こんな問題に妾を関わらせるなとまで言いたい。奴は、神殺しですら、何の罪悪感も抱くことなく必要なら行う。こっちにまで、とばっちりが来るのは正直言って避けたいのだ」
「神殺しを?」
「何だ? 気がついておらなんだか? エルピスの箱の管理人で負の感情に晒され続けていたというのなら、見えると思っておったが……、思ったよりも神としての権能は低いのだな」
「……ヘパイストス様に作られた泥人形ですから。大地母神としての権能も、問題が起きたあとに付与されたに過ぎませんから」
「なるほど……。つまり、ゼウスに利用されるだけ利用された結果、殺されると――」
「ですから……」
「それでも、今回のことの発端はゼウスを除けば、お前に非がある事は代わりない」
「それでは、私に死ねと……」
「すでに死んでおるだろう? 肉体は、エルピスの箱庭にあり、残留思念の存在が汝なのだから」
「……まだ、私は恋も……」
小さく擦れたように呟く声。
伊邪那美は、自身の言葉に俯くパンドーラを見て、溜息をつくと――。
「方法はない訳でもない」
「え?」
「日本では良い諺があってな。部下の不始末は上司の責任というのがな」
「それって……」
「桂木優斗に、今回の一連の問題はゼウスが悪いって事で説明すれば何とかなるかも知れん」
「それって、自身の創造神を売り渡せと?」
「妾は、どちらでもよいのだが? お前が責任を取って殺されようとどうでもな。何もしなければ、お前は殺されるし、その呪物も破壊される。もし、ゼウスを売り渡すつもりがあるのなら、妾から掛け合ってやってもよい。お前の身の振り方というものをな」
「さて――、話を始めるとしようかの」
「あの……」
「何だ?」
「貴女様は、もしかして……」
「ふむ。分からぬか? もしや、汝は、神の力を有してはおらぬのか?」
「――いえ。そうではなく……、私が箱庭の管理者として活動していた時に、お聞きした内容とは異なっておりまして――」
「どういうことか?」
「受肉している事に――」
「ああ、そのことか。まぁ、色々とあってな。それよりも、話を勧めたいのだが良いか?」
「は、はい……」
「さて――」
前置きを置いたところで、伊邪那美は――。
「まず、パンドーラ。お前は、どうして、この地に来た? あれは、エルピスの箱庭は、本来ある場所から移動してはいけないと言うことになっているはずだと妾は認識しておるが? そういう術式が組まれておったのだろう?」
「それは、私のせいではなく十字軍が理由です」
「十字軍とは政治宗教か。偽物の神をでっち上げた大罪者達ならやりかねないか」
「はい。彼らは、バベルの探しておりましたから――」
「バベルか。まだ現存はしておるのか?」
「おそらくは――。バベルのコアとしても転用が可能ですから」
「エルピスの箱庭が、存在出来ているという事はそういうことか。――で、日本にエルピスの箱庭が存在しているという事は――」
「おそらく日本にバベルが存在しているかと」
「まったく……。余計なことをしてくれる。本来であれば、エルピスの箱庭はオリンポス山で管理されておくべき代物であろうに。それを、この星に持ってくるなど正気とは思えんな」
「私も詳しくは聞かされておりませんが、おそらくゼウス様は、プロメテウス様の反旗に対して使う為に取り寄せたと思われます」
「――で、まんまとゼウスの策略に乗ったということか」
「はい」
「これは厄介な問題になりそうだ」
溜息をつく伊邪那美は、優斗の方へと視線を向ける。
「厄介とは?」
「お前が、意図してもしていなかったとしても、あの者が大事にしている宝物に傷をつけた事に代わりはない」
「――それは……」
「自覚はあるのだな?」
「はい……」
「なら、大人しく殺されておくことだ。奴のことだ。お前を殺すことは既に確定済みだろうて」
「そんな! 私は、地獄のような苦しみを、自分の民と共に永劫とも呼べる時間を過ごしてきました! その結果が、死なんて……」
「それは、汝の事情であろう? 正直、こんな問題に妾を関わらせるなとまで言いたい。奴は、神殺しですら、何の罪悪感も抱くことなく必要なら行う。こっちにまで、とばっちりが来るのは正直言って避けたいのだ」
「神殺しを?」
「何だ? 気がついておらなんだか? エルピスの箱の管理人で負の感情に晒され続けていたというのなら、見えると思っておったが……、思ったよりも神としての権能は低いのだな」
「……ヘパイストス様に作られた泥人形ですから。大地母神としての権能も、問題が起きたあとに付与されたに過ぎませんから」
「なるほど……。つまり、ゼウスに利用されるだけ利用された結果、殺されると――」
「ですから……」
「それでも、今回のことの発端はゼウスを除けば、お前に非がある事は代わりない」
「それでは、私に死ねと……」
「すでに死んでおるだろう? 肉体は、エルピスの箱庭にあり、残留思念の存在が汝なのだから」
「……まだ、私は恋も……」
小さく擦れたように呟く声。
伊邪那美は、自身の言葉に俯くパンドーラを見て、溜息をつくと――。
「方法はない訳でもない」
「え?」
「日本では良い諺があってな。部下の不始末は上司の責任というのがな」
「それって……」
「桂木優斗に、今回の一連の問題はゼウスが悪いって事で説明すれば何とかなるかも知れん」
「それって、自身の創造神を売り渡せと?」
「妾は、どちらでもよいのだが? お前が責任を取って殺されようとどうでもな。何もしなければ、お前は殺されるし、その呪物も破壊される。もし、ゼウスを売り渡すつもりがあるのなら、妾から掛け合ってやってもよい。お前の身の振り方というものをな」
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