186 / 330
第四章 囚われし呪詛村の祟り編
第185話
しおりを挟む
「それは……」
言いよどむ厚木に俺は溜息を漏らす。
まぁ、別に話してくれなくても問題ない。
俺がやる事は決まっているからな。
「何か事情があるのですか?」
俺の考えを他所に、住良木が尋ねるが――、厚木は首を横に振る。
「桂木殿」
「どうして、そこで俺に話を振る?」
俺に尋問でもしろと? 別に俺に喧嘩を売ってきたわけではないんだし、金を貰っている訳でもないし、何より尋問しなくても阿倍珠江を殺せば、この怪異は終わるのだから余計な労力を割く必要はない。
「桂木殿は、得意ですよね」
「お前は、俺を便利な何かと勘違いしているようだが、変なところに労力を費やすつもりはないし、いまのこの時間だって、外の神主達が霊脈に必死に干渉して結界の拡大を堰き止めているんだから、無駄にするわけにはいかないだろう?」
「ですが……、何か事情があるのでしたら事件の解決に――」
「必要ないな。俺が命じられているのは、この結界を作った安倍珠江の殺害だけだ」
「――なっ!」
俺と住良木の話を聞いていた厚木が絶句する。
「君は、いま……今、何と言ったんだ?」
「だから、この結界を作った首謀者を殺すと言っただけだ。爺さんだって言っていたよな? この結界は作った術者を殺せば消えると――。だから、それに沿ってプランを立てて殺す事にしただけだ」
「そうじゃない」
「そうじゃない? なら、何なんだ?」
「だから、君は人を殺すことに対して、その年齢で罪悪感を――、罪を覚えないのか? と、言ったんだ」
「はぁー」
――面倒だな。
「いいか? 爺さん。問題を解決するに当たって、シンプルな解決方法が望まれるのは、その方が論理的だからだ。そもそも、この結界を作った術者は、俺を試す為に、このような手段をとったんだ。つまりだな……」
俺は瞳を細め呟く。
「俺の敵だってことだ。敵は殺す。絶対にな――。生かしておけば、後から身内が危険に晒されることになる。そのくらいの理屈は理解できるだろう?」
「神薙も――、神社庁も、彼と行動を供にしているという事は、同じ理屈ということか?」
「同じかどうかで聞かれますと、正直困りますが、福音の箱はパンドラの箱の複製品なのは、厚木さんもご理解されていると思いますが? そして、パンドラの箱を模倣して作られた以上、世界に干渉する力を福音の箱は有しております。すでに、世界への干渉は始まっており、日本国政府は、深刻に事態を受け止め岩手県内の神職に対して以来をし、霊脈を介して結界を展開――、福音の箱が作り出した異界が広がる力を押し留めている状態です」
「そこまで事態が……」
「ご理解頂けて幸いです。そして、日本国政府が下した決断は、術者の暗殺にて事態の収拾を図るという方法です」
「だが……、それでも……、このような年若い学生に暗殺を頼むとは……」
「厚木さん。一人の命で数十万、数百万の命が救われることは正しいことだと思われます。それに、どんな理由があろうとも、バチカンへ輸送予定であった福音の箱を、安倍珠江は盗み出し儀式を行ったことは許されることではありません。すでに被害者が出ている以上、たとえ生きて捉えたとしても死罪は確定しています。それも法で裁かれることなく、始末されます。ですので、桂木殿を攻め立てるのはお門違いも甚だしいと言わざるを得ません」
俺が言おうとした正論を、住良木が語るのを見ると――、俺としては……。
「まぁ、そういうことだ。爺さん一人だと、この空間では生きていけないと思うが、どうする? 俺達と同行するか?」
俺の言葉に黙って厚木は首を縦に振った。
言いよどむ厚木に俺は溜息を漏らす。
まぁ、別に話してくれなくても問題ない。
俺がやる事は決まっているからな。
「何か事情があるのですか?」
俺の考えを他所に、住良木が尋ねるが――、厚木は首を横に振る。
「桂木殿」
「どうして、そこで俺に話を振る?」
俺に尋問でもしろと? 別に俺に喧嘩を売ってきたわけではないんだし、金を貰っている訳でもないし、何より尋問しなくても阿倍珠江を殺せば、この怪異は終わるのだから余計な労力を割く必要はない。
「桂木殿は、得意ですよね」
「お前は、俺を便利な何かと勘違いしているようだが、変なところに労力を費やすつもりはないし、いまのこの時間だって、外の神主達が霊脈に必死に干渉して結界の拡大を堰き止めているんだから、無駄にするわけにはいかないだろう?」
「ですが……、何か事情があるのでしたら事件の解決に――」
「必要ないな。俺が命じられているのは、この結界を作った安倍珠江の殺害だけだ」
「――なっ!」
俺と住良木の話を聞いていた厚木が絶句する。
「君は、いま……今、何と言ったんだ?」
「だから、この結界を作った首謀者を殺すと言っただけだ。爺さんだって言っていたよな? この結界は作った術者を殺せば消えると――。だから、それに沿ってプランを立てて殺す事にしただけだ」
「そうじゃない」
「そうじゃない? なら、何なんだ?」
「だから、君は人を殺すことに対して、その年齢で罪悪感を――、罪を覚えないのか? と、言ったんだ」
「はぁー」
――面倒だな。
「いいか? 爺さん。問題を解決するに当たって、シンプルな解決方法が望まれるのは、その方が論理的だからだ。そもそも、この結界を作った術者は、俺を試す為に、このような手段をとったんだ。つまりだな……」
俺は瞳を細め呟く。
「俺の敵だってことだ。敵は殺す。絶対にな――。生かしておけば、後から身内が危険に晒されることになる。そのくらいの理屈は理解できるだろう?」
「神薙も――、神社庁も、彼と行動を供にしているという事は、同じ理屈ということか?」
「同じかどうかで聞かれますと、正直困りますが、福音の箱はパンドラの箱の複製品なのは、厚木さんもご理解されていると思いますが? そして、パンドラの箱を模倣して作られた以上、世界に干渉する力を福音の箱は有しております。すでに、世界への干渉は始まっており、日本国政府は、深刻に事態を受け止め岩手県内の神職に対して以来をし、霊脈を介して結界を展開――、福音の箱が作り出した異界が広がる力を押し留めている状態です」
「そこまで事態が……」
「ご理解頂けて幸いです。そして、日本国政府が下した決断は、術者の暗殺にて事態の収拾を図るという方法です」
「だが……、それでも……、このような年若い学生に暗殺を頼むとは……」
「厚木さん。一人の命で数十万、数百万の命が救われることは正しいことだと思われます。それに、どんな理由があろうとも、バチカンへ輸送予定であった福音の箱を、安倍珠江は盗み出し儀式を行ったことは許されることではありません。すでに被害者が出ている以上、たとえ生きて捉えたとしても死罪は確定しています。それも法で裁かれることなく、始末されます。ですので、桂木殿を攻め立てるのはお門違いも甚だしいと言わざるを得ません」
俺が言おうとした正論を、住良木が語るのを見ると――、俺としては……。
「まぁ、そういうことだ。爺さん一人だと、この空間では生きていけないと思うが、どうする? 俺達と同行するか?」
俺の言葉に黙って厚木は首を縦に振った。
0
お気に入りに追加
108
あなたにおすすめの小説
18禁NTR鬱ゲーの裏ボス最強悪役貴族に転生したのでスローライフを楽しんでいたら、ヒロイン達が奴隷としてやって来たので幸せにすることにした
田中又雄
ファンタジー
『異世界少女を歪ませたい』はエロゲー+MMORPGの要素も入った神ゲーであった。
しかし、NTR鬱ゲーであるためENDはいつも目を覆いたくなるものばかりであった。
そんなある日、裏ボスの悪役貴族として転生したわけだが...俺は悪役貴族として動く気はない。
そう思っていたのに、そこに奴隷として現れたのは今作のヒロイン達。
なので、酷い目にあってきた彼女達を精一杯愛し、幸せなトゥルーエンドに導くことに決めた。
あらすじを読んでいただきありがとうございます。
併せて、本作品についてはYouTubeで動画を投稿しております。
より、作品に没入できるようつくっているものですので、よければ見ていただければ幸いです!
妻を寝取ったパーティーメンバーに刺殺された俺はもう死にたくない。〜二度目の俺。最悪から最高の人生へ〜
橋本 悠
ファンタジー
両親の死、いじめ、NTRなどありとあらゆる`最悪`を経験し、終いにはパーティーメンバーに刺殺された俺は、異世界転生に成功した……と思いきや。
もしかして……また俺かよ!!
人生の最悪を賭けた二周目の俺が始まる……ってもうあんな最悪見たくない!!!
さいっっっっこうの人生送ってやるよ!!
──────
こちらの作品はカクヨム様でも連載させていただいております。
先取り更新はカクヨム様でございます。是非こちらもよろしくお願いします!
【R18】スライムにマッサージされて絶頂しまくる女の話
白木 白亜
ファンタジー
突如として異世界転移した日本の大学生、タツシ。
世界にとって致命的な抜け穴を見つけ、召喚士としてあっけなく魔王を倒してしまう。
その後、一緒に旅をしたスライムと共に、マッサージ店を開くことにした。卑猥な目的で。
裏があるとも知れず、王都一番の人気になるマッサージ店「スライム・リフレ」。スライムを巧みに操って体のツボを押し、角質を取り、リフレッシュもできる。
だがそこは三度の飯よりも少女が絶頂している瞬間を見るのが大好きなタツシが経営する店。
そんな店では、膣に媚薬100%の粘液を注入され、美少女たちが「気持ちよくなって」いる!!!
感想大歓迎です!
※1グロは一切ありません。登場人物が圧倒的な不幸になることも(たぶん)ありません。今日も王都は平和です。異種姦というよりは、スライムは主人公の補助ツールとして扱われます。そっち方面を期待していた方はすみません。
スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活
昼寝部
ファンタジー
この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。
しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。
そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。
しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。
そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。
これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。
勇者に闇討ちされ婚約者を寝取られた俺がざまあするまで。
飴色玉葱
ファンタジー
王都にて結成された魔王討伐隊はその任を全うした。
隊を率いたのは勇者として名を挙げたキサラギ、英雄として誉れ高いジークバルト、さらにその二人を支えるようにその婚約者や凄腕の魔法使いが名を連ねた。
だがあろうことに勇者キサラギはジークバルトを闇討ちし行方知れずとなってしまう。
そして、恐るものがいなくなった勇者はその本性を現す……。
甘い誘惑
さつらぎ結雛
恋愛
幼馴染だった3人がある日突然イケナイ関係に…
どんどん深まっていく。
こんなにも身近に甘い罠があったなんて
あの日まで思いもしなかった。
3人の関係にライバルも続出。
どんどん甘い誘惑の罠にハマっていく胡桃。
一体この罠から抜け出せる事は出来るのか。
※だいぶ性描写、R18、R15要素入ります。
自己責任でお願い致します。
序盤でボコられるクズ悪役貴族に転生した俺、死にたくなくて強くなったら主人公にキレられました。え? お前も転生者だったの? そんなの知らんし〜
水間ノボル🐳
ファンタジー
↑「お気に入りに追加」を押してくださいっ!↑
★2024/2/25〜3/3 男性向けホットランキング1位!
★2024/2/25 ファンタジージャンル1位!(24hポイント)
「主人公が俺を殺そうとしてくるがもう遅い。なぜか最強キャラにされていた~」
『醜い豚』
『最低のゴミクズ』
『無能の恥晒し』
18禁ゲーム「ドミナント・タクティクス」のクズ悪役貴族、アルフォンス・フォン・ヴァリエに転生した俺。
優れた魔術師の血統でありながら、アルフォンスは豚のようにデブっており、性格は傲慢かつ怠惰。しかも女の子を痛ぶるのが性癖のゴミクズ。
魔術の鍛錬はまったくしてないから、戦闘でもクソ雑魚であった。
ゲーム序盤で主人公にボコられて、悪事を暴かれて断罪される、ざまぁ対象であった。
プレイヤーをスカッとさせるためだけの存在。
そんな破滅の運命を回避するため、俺はレベルを上げまくって強くなる。
ついでに痩せて、女の子にも優しくなったら……なぜか主人公がキレ始めて。
「主人公は俺なのに……」
「うん。キミが主人公だ」
「お前のせいで原作が壊れた。絶対に許さない。お前を殺す」
「理不尽すぎません?」
原作原理主義の主人公が、俺を殺そうとしてきたのだが。
※ カクヨム様にて、異世界ファンタジージャンル表紙入り。5000スター、10000フォロワーを達成!
ごめんみんな先に異世界行ってるよ1年後また会おう
味噌汁食べれる
ファンタジー
主人公佐藤 翔太はクラスみんなより1年も早く異世界に、行ってしまう。みんなよりも1年早く異世界に行ってしまうそして転移場所は、世界樹で最強スキルを実でゲット?スキルを奪いながら最強へ、そして勇者召喚、それは、クラスのみんなだった。クラスのみんなが頑張っているときに、主人公は、自由気ままに生きていく
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる