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第四章 囚われし呪詛村の祟り編
第165話
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「赤い空? 何だ、これは……」
「桂木君」
空を見上げながら呟いたところで――、馬小屋の中から妹を抱きかかえて姿を見せた厚木さん。
どうやら妹は意識を失っているようで、何が起きたのか分からないが、俺はすぐに駆け寄る。
そして、厚木さんから妹を預かり妹の首筋に手を当てながら、細胞と組織を確認するが異常は見当たらないが、生命力だけが急速に衰えていくのを確認できた。
「胡桃ちゃんの容態は、すぐに問題は起きないと思うがの」
「それは、俺が判断することだ」
言葉を返しながらも、俺は周囲を確認しつつ言葉を紡ぐ。
「一体、何が起きているんだ?」
「――私にも分からないが、その様子だと君も気が付いているだろう?」
「何を言って……」
「ここまで来て演技をするとはの」
「演技だと?」
何を言っている?
「桂木優斗。年齢は16歳。神の力を得た霊能力者で間違いないかの?」
その老人の言葉に、俺は警戒心を一気に引き上げる。
こいつは、俺の正体を知っている。
どこまで知っているかは不明だが……、少なくとも警察関係者か――、もしくは……。
「……あんた、知っていて何も言わなかったのか?」
「聞かれなかったのう」
「……」
どうやら、情報を提供するつもりはないらしい。
それなら、今は――。
俺は妹を抱き抱えながら立ち上がる。
まずは、このおかしな空間から離脱することが先決だ。
俺の見立てでは、常人では10分も、この世界に居たら世界に生命力を喰い尽くされる。
「どこに行くつもりかな?」
「とりあえず、この空間から離脱する」
「それは無理だ」
「何故だ?」
「お主も神の力を得ているのだから、霊能力者としての経験は浅くても感覚で理解できるはずだ」
「だから、何を言って……」
「ここは本来の世界とは隔絶された場所になる。少なくとも術者を見つけなければ、この結界を解くことは出来ん」
「それは分からないだろ」
「これだけの呪詛。普通の手段で構築された結界とは思えん」
「そうかよ。まぁ、向こうがどういう意図で攻めて来ているかは知らないが、まずは結界から出ることを最優先にしないとどうもならない」
「だから脱出することはできないと言っているだろうに」
「やってみないと分からないだろう?」
「これだけの強力な呪詛、範囲を決めた限定的な結界と一緒に発動せねば、どれだけの力が必要か……」
「今は、議論している時間は勿体ない。俺は安全策を取らせてもらう」
「だから無駄だと……」
「俺は、他人の命令を聞くつもりはない」
「分かった。だが、確実な方法を提案したい」
「提案だと?」
「まずは、身の安全を確保しなければいけないからのう。とりあえず付いてきなさい」
「俺には時間が無いと、さっき言ったが?」
「分かっておる。だからこそ、身の安全の確認が取れた後で、どちらが攻撃を受けているのか確認する。間違ってはおらんだろう?」
「――チッ」
俺は、妹の体を抱きかかえながら、自身の体内で作り上げた生体電流を生命エネルギーへと変換し――、妹の体の波長と合わせ、供給する。
「ほう……。器用なことをする。それも神から得た力というモノかな?」
「さあな」
「ふむ……」
「それよりも早くしてくれ」
「わかっておる」
1分ほど歩いた場所の2階建ての建物に到着したあとは、地下へと通される。
地下は剥き出しのコンクリートが打ち付けられただけの部屋が広がっている。
そして中心部のコンクリートの地面には直径10メートルほどの五芒星の魔法陣が描かれており――、
「結界か?」
「うむ。限定的なモノであるが、30分程度であるなら、この高濃度な瘴気に満たされた空間でも生命を維持する事が出来る」
「30分か……」
「本来であるなら、100年間は耐えられる結界だが、この高濃度の瘴気では30分が限界だの」
「なるほど……。つまり30分以内に、何とかすればいいということか?」
「――いや。君は神域を展開できるのだろう? 神域で結界の強化と維持をしつつ、外にいる陰陽連の人間が何とかしてくれるのを待つのが一番現実的だの。それに異変に気が付いてくれれば、珠江様が助けに来てくれる。これだけの空間を作り出し攻撃を仕掛けてきている相手。そこまで広範囲を汚染するような攻撃を持続できるとは思えん。せいぜい半径500メートル、時間としても一日維持できればいいと推測しておる」
つまり、時間を稼げば何とかなるということか……。
それよりも――。
「珠江? 珠江って、安倍珠江のことか?」
「もしや、気が付いていなかったのか? 安倍珠江様は、安倍晴明様の直系の子孫で、希代の陰陽術師だということを」
「陰陽術師?」
「その様子、本当に気が付いていなかったのか……」
「悪いな。俺は、そういうモノには疎いからな」
そもそも霊力とか、魔力とか、そんな超常現象な意味不明なモノを持ち出されても困る。
俺の力は、あくまでも物理現象の延長線上に存在している力に過ぎないからだ。
「……では、君は神域を、どのように制御しているのだ?」
「答えるつもりはない。そもそも、アンタは安倍先生と仲が良いみたいだが、どういう関係だ?」
「……私は、陰陽連の元・陰陽師だ」
「桂木君」
空を見上げながら呟いたところで――、馬小屋の中から妹を抱きかかえて姿を見せた厚木さん。
どうやら妹は意識を失っているようで、何が起きたのか分からないが、俺はすぐに駆け寄る。
そして、厚木さんから妹を預かり妹の首筋に手を当てながら、細胞と組織を確認するが異常は見当たらないが、生命力だけが急速に衰えていくのを確認できた。
「胡桃ちゃんの容態は、すぐに問題は起きないと思うがの」
「それは、俺が判断することだ」
言葉を返しながらも、俺は周囲を確認しつつ言葉を紡ぐ。
「一体、何が起きているんだ?」
「――私にも分からないが、その様子だと君も気が付いているだろう?」
「何を言って……」
「ここまで来て演技をするとはの」
「演技だと?」
何を言っている?
「桂木優斗。年齢は16歳。神の力を得た霊能力者で間違いないかの?」
その老人の言葉に、俺は警戒心を一気に引き上げる。
こいつは、俺の正体を知っている。
どこまで知っているかは不明だが……、少なくとも警察関係者か――、もしくは……。
「……あんた、知っていて何も言わなかったのか?」
「聞かれなかったのう」
「……」
どうやら、情報を提供するつもりはないらしい。
それなら、今は――。
俺は妹を抱き抱えながら立ち上がる。
まずは、このおかしな空間から離脱することが先決だ。
俺の見立てでは、常人では10分も、この世界に居たら世界に生命力を喰い尽くされる。
「どこに行くつもりかな?」
「とりあえず、この空間から離脱する」
「それは無理だ」
「何故だ?」
「お主も神の力を得ているのだから、霊能力者としての経験は浅くても感覚で理解できるはずだ」
「だから、何を言って……」
「ここは本来の世界とは隔絶された場所になる。少なくとも術者を見つけなければ、この結界を解くことは出来ん」
「それは分からないだろ」
「これだけの呪詛。普通の手段で構築された結界とは思えん」
「そうかよ。まぁ、向こうがどういう意図で攻めて来ているかは知らないが、まずは結界から出ることを最優先にしないとどうもならない」
「だから脱出することはできないと言っているだろうに」
「やってみないと分からないだろう?」
「これだけの強力な呪詛、範囲を決めた限定的な結界と一緒に発動せねば、どれだけの力が必要か……」
「今は、議論している時間は勿体ない。俺は安全策を取らせてもらう」
「だから無駄だと……」
「俺は、他人の命令を聞くつもりはない」
「分かった。だが、確実な方法を提案したい」
「提案だと?」
「まずは、身の安全を確保しなければいけないからのう。とりあえず付いてきなさい」
「俺には時間が無いと、さっき言ったが?」
「分かっておる。だからこそ、身の安全の確認が取れた後で、どちらが攻撃を受けているのか確認する。間違ってはおらんだろう?」
「――チッ」
俺は、妹の体を抱きかかえながら、自身の体内で作り上げた生体電流を生命エネルギーへと変換し――、妹の体の波長と合わせ、供給する。
「ほう……。器用なことをする。それも神から得た力というモノかな?」
「さあな」
「ふむ……」
「それよりも早くしてくれ」
「わかっておる」
1分ほど歩いた場所の2階建ての建物に到着したあとは、地下へと通される。
地下は剥き出しのコンクリートが打ち付けられただけの部屋が広がっている。
そして中心部のコンクリートの地面には直径10メートルほどの五芒星の魔法陣が描かれており――、
「結界か?」
「うむ。限定的なモノであるが、30分程度であるなら、この高濃度な瘴気に満たされた空間でも生命を維持する事が出来る」
「30分か……」
「本来であるなら、100年間は耐えられる結界だが、この高濃度の瘴気では30分が限界だの」
「なるほど……。つまり30分以内に、何とかすればいいということか?」
「――いや。君は神域を展開できるのだろう? 神域で結界の強化と維持をしつつ、外にいる陰陽連の人間が何とかしてくれるのを待つのが一番現実的だの。それに異変に気が付いてくれれば、珠江様が助けに来てくれる。これだけの空間を作り出し攻撃を仕掛けてきている相手。そこまで広範囲を汚染するような攻撃を持続できるとは思えん。せいぜい半径500メートル、時間としても一日維持できればいいと推測しておる」
つまり、時間を稼げば何とかなるということか……。
それよりも――。
「珠江? 珠江って、安倍珠江のことか?」
「もしや、気が付いていなかったのか? 安倍珠江様は、安倍晴明様の直系の子孫で、希代の陰陽術師だということを」
「陰陽術師?」
「その様子、本当に気が付いていなかったのか……」
「悪いな。俺は、そういうモノには疎いからな」
そもそも霊力とか、魔力とか、そんな超常現象な意味不明なモノを持ち出されても困る。
俺の力は、あくまでも物理現象の延長線上に存在している力に過ぎないからだ。
「……では、君は神域を、どのように制御しているのだ?」
「答えるつもりはない。そもそも、アンタは安倍先生と仲が良いみたいだが、どういう関係だ?」
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