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第三章 呪われし異界の鉄道駅編

第125話

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「どういう理屈だよ、それは……」

 俺は呆れ溜息をつく。
 そうしている間に、純也がカーレースで俺の車を抜き――、純也の画面上には1位の文字が表示された。

「よっしゃー! 俺の勝ちだな! 優斗に、勝つなんて久しぶりだな!」
「そうか?」
「そうだよ! 覚えてないのかよ」
「まぁ、そうだな……」

 そんな事があったのか。
 まるで覚えてないな。

「――で、これからどうするよ?」
「どうするって、お前が俺を呼んだんだろうが――、きちんと接待しろよな」
「お前は会社の重役か何かかよ」
「まぁ――、そう言うわけじゃないん――」

 言いかけたところで、後ろから歩いてきた4人の男達が、俺が座っていたシートに手を乗せてくる。 

「おいおい。優斗じゃん! 何で、俺達の場所にいるんだよ!」
「……」

 声をかけてきた男を見上げる。
 男は金髪で、耳にピアスをつけていて腕にはタトゥーを入れているようだが――、まだ顔は幼い。
 年は、俺とそう変わらないだろう。

「おやおや。優斗ちゃんったらビビって無言になっちゃたのかなー?」
「おい! お前ら!」
「何だよ! 純也もいるのかよ!」
「誰だ? お前ら」

 まったく身に覚えの無い男達。
 服装からして神社庁でも、警察庁の人間でもないだろう。
 何せ若すぎる。

「優斗、とりあえず出ようぜ!」
「そうだな」
 
 まぁ、知らない奴と会話しても時間の浪費だからな。
 俺は座席から立ち上がる。
 身長は4人とも俺より10センチくらいは高いか?
 戦闘力は、冒険者ランクで言うと駆け出しのFランククラスだな。
 
「おい! 待てよ!」

 純也に続いて店の出口へと向かい男達の横を通りすぎようとした瞬間に、俺の肩を男が掴んでくる。

「何の用だ?」
「決まってんだろ! 金だよ! 金! 金を払えってこと!」
「そうだそうだ! 別の学校に逃げたからって、俺達に払う税金は、きちんと取り立てないとな!」

 俺の問いかけに、俺に話しかけてきた男達が、笑いながら恫喝してくるが――。

「税金? お前らは徴税人か何かなのか? その身なりで徴税人をしている人間なんて見た事が無いが?」
「何だよ! お前!」

 男達は、俺の返答が気にいらなかったのか襟を掴んでくる。

「優斗! 富野! お前、優斗から手を離せよ!」

 前を歩いていた純也が怒りの表情で、俺と富野という男の間に割って入ってくる。
 その際に、襟から無理矢理に手を離されたこともあり、幾つかシャツのボタンが外れた。

「純也! また! 俺達の邪魔をするつもりかよ!」
「邪魔も何も、お前らが優斗を虐めたから――、だから、俺が守るんだよ!」
「ほんっと! うぜーわ! お前! おい! お前ら! 先輩達を呼んで、純也をボコるぞ! 港! 先輩に電話しろや!」
「わかったっすよ! 富野さん!」
「小倉と渡辺は純也の足止めをしておけよ! 俺が優斗を自殺を考えるまで殴ってやるかんな!」
「「わかりましたっ!」」

 富野という男の指示で、港という茶髪の男が電話をかける。
 
「おい! 優斗! ここは俺が何とかするから、お前は逃げろ!」
「純也は、どうするつもりだ?」
「俺のことはいいから、早く!」
「分かった。警察を呼んでくるから」
「ああ、任せた」

 俺は、走ってゲームセンターから出る。
 その際に、俺の前に富野という男が立ちふさがってきたが、素人同然のフットワークなぞ、まったく意味はない。
 躱し、外に出たあとは京成千葉駅方面へと向かう。
 理由は、交番があるからだが――、それと――もう一つ。
 俺は、袋小路に移動する。

「はぁはぁはぁ……、ようやく追いついたぞ。優斗! お前が、高校に上がってからの調子はどうよ? 虐めは無くなったか? まぁ! 今日からは、また俺様が教育してやるがな!」
「ふむ……」
「何だよ! その態度は! 気に入らねーな!」
「――いや。何――、お前のことをまったく覚えていないから、どういう人間関係なのか観察していたが、お前は俺に暴力を振るっていた【敵】という事でいいのか?」
「何を……言って……」
「ほら、あれだ」

 俺は、誰一人、一般人の目の届かない袋小路を見渡しながら、言葉を続ける。

「何の関係もない一般人を殺したら後味が悪いだろう?」

 俺は笑みを浮かべる。
 どうやら、相手は俺の敵だと言う事が分かるどころか、俺を虐めていた相手だと分かったからだ。
 ――なら、敵には遠慮はいらない。

「――なっ……な、何を……言ってやがるんだよ!」

 走り俺に近づいてくる富野という男。
 そして、俺に右拳を振り下ろしてくるが――、俺は、その右拳を左手で掴み――握りつぶすと同時に、手刀で男の喉を潰して声を上げられなくする。

「……が、あ、あああああ……」
「さて――、どうするか」

 苦悶の表情で、両膝をアスファルトの上につきながら瞳からは涙を流している男を見下ろしつつ、そんな事を考える。

「死体の処理は簡単だが――」

 人間の肉体なんて、俺の力を使えば簡単に原子レベルで分解できるからな。
 
「他の連中も生かしておくと、後々、足がつきそうだな」

 俺の話を聞いていた富野が表情を強張らせてふらつきながら逃げようとするが、俺は男の両足を下段で折り倒れた富野の頭を踏みつける。
 ミシミシという心地良い音が聞こえてくるが――。

「た、たしゅけ……」
「少し黙っていろ」

 男の右腕間接を踏みつけ粉砕――、骨が皮膚を突き破り、血がアスファルトの黒を赤黒く染めていく。

「――となると、その先輩含めて皆殺しコースだな」
「アアアアアアアッ、たすけて……、もうしませんから……」

 俺が考えを語った瞬間、濁った絶叫とも悲鳴とも言える小さな声が耳に聞こえてくるが――、こんな事は異世界ではよくあった事だ。

「いまさら謝られても困るな。俺に喧嘩を売ってきたということは敵ということだろう? 敵なら殺して後顧の憂いを断つのが最良だと思うがな。まぁ――」
 
 俺は手の平を男の身体に触れる――、そして……。

「とりあえず、こいつから処分しておくか」
「あああっ……、たすけ……」

 何か言っているが、俺には届かない。
 敵なのだから――。
 そう思い、力を行使しようとしたところで――、

「それ以上は、やめなさい。桂木優斗君」

 富野という男を消し飛ばそうとしたところで、俺に制止の言葉をかけてきたのは警察庁の人間――、神谷であった。
 
 

 
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