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第三章 呪われし異界の鉄道駅編
第122話
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「住良木さん、あとで少し話をしましょうね」
「――え? わ、私が悪かったりしますか? きちんと桂木殿に、神社庁へのスカウトをしましたよね? 桂木殿」
「まぁ、そうだな」
俺は後頭部を掻きながら、救いを求めるような目で見てきた住良木に応じる。
「とりあえずだ。別に縁が切れるって訳じゃないんだから、スポットで仕事を回してくれ。まぁ、今回は、住良木の顔を立てると言う事で何でも一つだけ仕事を無料で引き受けるから」
「桂木殿……」
「はぁ――。仕方ありませんね。そこまで住良木さんを庇うと言う事はそう言う事なのでしょう。今回は、これで折れるとしましょう」
「――なら携帯の方に関しては」
「それは、御持ちください。こちらから連絡を入れる際に必要となると思いますので」
「分かった」
俺は、住良木から渡されていた携帯を上着のポケットに入れると立ち上がる。
「じゃ、俺は帰る」
「ご自宅までお送りしましょうか?」
「――いや。ちょっと用事があってな」
「用事とは?」
「東雲が、俺の家に直接来たことで、家族にあらぬ疑いの目を向けられてな――」
「ああ。なるほど……そういうことですか。つまり私が桂木さんのご自宅に伺った正当な理由が必要という訳ですね?」
「そんなところだな。一応、派遣先の担当ってことで話はしてあるが、妹が納得してくれないんだな――これが」
「つまり桂木さんが派遣会社に登録しているという証拠……、つまり契約書か証明書が必要ということですか? それでしたら、神社庁の方でご用意致しますけど、どうしますか? こちらの方としても、桂木さんに仕事を頼むにしても、まったく無料という形でお仕事を依頼するのは気が引けますので」
「なるほど……」
警察庁か山崎の会社あたりに派遣登録らしい書類を作ってもらおうと考えていたが、神社庁で用意してくれるのなら悪くはないな。
「たしかに、それなら携帯電話を持っている理由にもなるか」
「はい。一応、神社庁は公務員という体裁をとっていますが、仕事の中には人手不足の時に外部の霊能力者にスポット依頼と言う事で仕事を回すこともありますので、そう言ったシステムも構築していますから、公的書類もありますので、問題ないと思われます」
「色々とやっているんだな」
「そうですね。人の噂が怪異を引き起こす事もありますから。それに、これからは夏場に向けて多くの怪異が生まれますから」
「ですよね……暑くなってからの怪異の発生件数とか、普段は犬猿の仲の地域保全公務課とも連携しますからね」
「余計な事言わなくていいの。――では、桂木さん、書類を御持ちしますので少しお待ちください。住良木さん、急いで持ってきて」
「すぐに持ってきます」
パーティションで仕切られた部屋から出ていく住良木。
「ところで桂木さん」
「――ん? 何か、住良木に聞かれたくない事か?」
「いえ。そうではなくて……、桂木さんは守護霊などを見ることは出来ないのですか? 強い霊力を持っていると報告は受けているのですが」
「守護霊か……」
俺には霊力というのが、どういったものか全く想像がつかない事もあり、守護霊や霊を近くに配置されたところで見えないというか感じとることが出来ないと言った方が近い。
あくまでも俺の力の源は物理現象によるものであって、超常現象とは全く異なる。
そして、俺が見る事が出来るのは人に害意があり、尚且つ物理現象に干渉できるほどの力を持ったモノに限られる。
相手が物理現象に干渉できるのなら、物理現象という理を武器として使っている俺は対応する事ができるからだ。
「そういうのは見えないな」
「本当ですか? 住良木さんから、桂木さんは強い霊力を持ち神域を展開できると伺っていましたけど……、住良木さんの言葉が本当なら見えないとおかしいはずのですけど……」
「まぁ、見える時と見えない時があるみたいな?」
とりあえず曖昧に答えることにする。
その方が住良木の評価というか俺の扱いを落すような事はないだろうし。
しばらくして、住良木が書類を持ってくると、俺は派遣という形で登録し――、一枚のカードを受け取る。
「これは?」
カードには、『お助けコールセンター事務所』と書かれている。
怪しさ満載の名前だ。
この事務所名を考えたやつは、センスが無さすぎだろう。
「神社庁の表の顔のフロント企業の社員証になります。もちろん、そちらに書かれている電話番号は、物産系に委託したキチンとしたコールセンターに繋がるようになっていますので、ご安心ください」
「なるほど……。――で、実際は、どんな業務をしているんだ?」
「一応は、国が母体として経営していまして、悩み相談室みたいな感じですね。連絡を受けるのはあくまでも一般の方で、委託した企業からの上がってきた情報を見て霊障が関与している疑いがあった場合、神社庁として対処する形をとっています」
「ふーん」
紅は、神社庁について思うところがあるのか色々と言っていたし、東雲も選民思想というかネガティブな印象を受けたが、キチンと仕事はしているのか。
「――え? わ、私が悪かったりしますか? きちんと桂木殿に、神社庁へのスカウトをしましたよね? 桂木殿」
「まぁ、そうだな」
俺は後頭部を掻きながら、救いを求めるような目で見てきた住良木に応じる。
「とりあえずだ。別に縁が切れるって訳じゃないんだから、スポットで仕事を回してくれ。まぁ、今回は、住良木の顔を立てると言う事で何でも一つだけ仕事を無料で引き受けるから」
「桂木殿……」
「はぁ――。仕方ありませんね。そこまで住良木さんを庇うと言う事はそう言う事なのでしょう。今回は、これで折れるとしましょう」
「――なら携帯の方に関しては」
「それは、御持ちください。こちらから連絡を入れる際に必要となると思いますので」
「分かった」
俺は、住良木から渡されていた携帯を上着のポケットに入れると立ち上がる。
「じゃ、俺は帰る」
「ご自宅までお送りしましょうか?」
「――いや。ちょっと用事があってな」
「用事とは?」
「東雲が、俺の家に直接来たことで、家族にあらぬ疑いの目を向けられてな――」
「ああ。なるほど……そういうことですか。つまり私が桂木さんのご自宅に伺った正当な理由が必要という訳ですね?」
「そんなところだな。一応、派遣先の担当ってことで話はしてあるが、妹が納得してくれないんだな――これが」
「つまり桂木さんが派遣会社に登録しているという証拠……、つまり契約書か証明書が必要ということですか? それでしたら、神社庁の方でご用意致しますけど、どうしますか? こちらの方としても、桂木さんに仕事を頼むにしても、まったく無料という形でお仕事を依頼するのは気が引けますので」
「なるほど……」
警察庁か山崎の会社あたりに派遣登録らしい書類を作ってもらおうと考えていたが、神社庁で用意してくれるのなら悪くはないな。
「たしかに、それなら携帯電話を持っている理由にもなるか」
「はい。一応、神社庁は公務員という体裁をとっていますが、仕事の中には人手不足の時に外部の霊能力者にスポット依頼と言う事で仕事を回すこともありますので、そう言ったシステムも構築していますから、公的書類もありますので、問題ないと思われます」
「色々とやっているんだな」
「そうですね。人の噂が怪異を引き起こす事もありますから。それに、これからは夏場に向けて多くの怪異が生まれますから」
「ですよね……暑くなってからの怪異の発生件数とか、普段は犬猿の仲の地域保全公務課とも連携しますからね」
「余計な事言わなくていいの。――では、桂木さん、書類を御持ちしますので少しお待ちください。住良木さん、急いで持ってきて」
「すぐに持ってきます」
パーティションで仕切られた部屋から出ていく住良木。
「ところで桂木さん」
「――ん? 何か、住良木に聞かれたくない事か?」
「いえ。そうではなくて……、桂木さんは守護霊などを見ることは出来ないのですか? 強い霊力を持っていると報告は受けているのですが」
「守護霊か……」
俺には霊力というのが、どういったものか全く想像がつかない事もあり、守護霊や霊を近くに配置されたところで見えないというか感じとることが出来ないと言った方が近い。
あくまでも俺の力の源は物理現象によるものであって、超常現象とは全く異なる。
そして、俺が見る事が出来るのは人に害意があり、尚且つ物理現象に干渉できるほどの力を持ったモノに限られる。
相手が物理現象に干渉できるのなら、物理現象という理を武器として使っている俺は対応する事ができるからだ。
「そういうのは見えないな」
「本当ですか? 住良木さんから、桂木さんは強い霊力を持ち神域を展開できると伺っていましたけど……、住良木さんの言葉が本当なら見えないとおかしいはずのですけど……」
「まぁ、見える時と見えない時があるみたいな?」
とりあえず曖昧に答えることにする。
その方が住良木の評価というか俺の扱いを落すような事はないだろうし。
しばらくして、住良木が書類を持ってくると、俺は派遣という形で登録し――、一枚のカードを受け取る。
「これは?」
カードには、『お助けコールセンター事務所』と書かれている。
怪しさ満載の名前だ。
この事務所名を考えたやつは、センスが無さすぎだろう。
「神社庁の表の顔のフロント企業の社員証になります。もちろん、そちらに書かれている電話番号は、物産系に委託したキチンとしたコールセンターに繋がるようになっていますので、ご安心ください」
「なるほど……。――で、実際は、どんな業務をしているんだ?」
「一応は、国が母体として経営していまして、悩み相談室みたいな感じですね。連絡を受けるのはあくまでも一般の方で、委託した企業からの上がってきた情報を見て霊障が関与している疑いがあった場合、神社庁として対処する形をとっています」
「ふーん」
紅は、神社庁について思うところがあるのか色々と言っていたし、東雲も選民思想というかネガティブな印象を受けたが、キチンと仕事はしているのか。
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