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第二章 逆さ鳥居の神社編
第88話
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「どういうことなの! 話しが違うわ!」
耳を澄ましたところで、山城綾子の叫びが聞こえてくる。
「幸子」
「何よ? ――と、いうか、貴方、女性の名前を呼ぶのに抵抗感ないのね。その年齢なら、もう少し照れると思うのだけれど?」
「今は、細かい話をしている暇はない」
「それよりも頼みがある」
「何よ?」
「お前、たしか理事長と面識があるよな?」
「あるけど……、それが何かあるの?」
「理事長に連絡をして、学校関係者を学校の敷地内から速やかに避難誘導するように伝えてくれないか?」
「――どうして?」
「ここが高校の理科室の真下だからだ」
「え? どうして、そんなことが分かるの?」
「歩幅で何となくだ」
「はぁー。わかったわ。どうせ、貴方のことだから、この場所で何かあったら学校にも被害がでると思っているのでしょう? でも、ここで電話をすると、音が反響してしまうから」
「さっきの逆さ鳥居まで戻って電話してくれ。一応、魔物の気配は無いから問題ないはずだ」
「本当に? 貴方、本当に何者なの? ――って、聞いても答えるつもりはないのよね?」
「分かっているなら聞くな」
「はいはい。でも、神に私も聞きたいことがあるから――」
「大丈夫だ。神なら俺に伝手がある。そいつを紹介してやる」
「伝手って……」
肩を落とし、頷く紅幸子。
「それじゃ、あとは任せたわ」
「ああ」
紅幸子が足音を極力立てないように逆さ鳥居の方へと戻っていくのを確認したあと、身体強化した俺の聴覚が音を拾う。
「先に契約を破ったのは、其方であろう? 巫女よ」
「何のことなの?」
「汝の母親である巫女は、我が力を、汝を救う為に利用し、我は巫女の願いに答え汝の病を転化させた。汝の病を、汝を産み落とした巫女が引き受けることを条件にだ」
「それは知っているわ。小さい頃に、ここに連れてきてもらったから」
「――ならば、汝が母を救いたいという願いはどうなのだ?」
俺は石壁に背中を預けながら、山城綾子の声が聞こえる大空洞へと視線を向ける。
大空洞――、強化した視線の先には、高さ10メートルはあろう巨大なピラミッドのようなモノが存在しており、そのピラミッドの頂上付近には青い火の玉が揺らめき存在していた。
「あの揺らめいているのが神か?」
ウィルオーウィスプのような存在に見えるが、内包しているエネルギーが桁違いだ。
エネルギーの強さから見たら異世界で殺した『死と戦いの神グラフト』と同等。
「厄介だな」
いまの俺の肉体だと使える力は制限が掛っている。
本来の鍛え抜かれた身体なら――。
「願ったわ! 私に転化してって! お母さんが苦しむ姿は見たくないの! もう、ずっとお母さんは寝たきりだから! だから! 助けてください!」
「巫女よ。山城の血筋を引く巫女よ。汝らは、我を崇拝していた血縁の者であるから、その願いを聞き届けていた。そして、その体を貸す条件に我は汝の願いを聞き届けたであろう?」
「それは……」
「汝は、そのことを了承したはずであったはずだ。なのに、汝は化け物に庇護を求めた。これは明らかな契約違反である」
「だから、お母さんの命を奪ったの!?」
「それは違う。汝の生命エネルギーを、汝を産み落とした者に分け与える事で延命していたのだ。だが――、汝を庇護していた者により、妨害された。その結果、死という結果に繋がったに過ぎない」
つまり、最初から山城綾子は、何が原因か知っていたということか?
ただ、全てを知らされていた訳ではなかったと……。
「……わ、私の生命を? お母さんに、分け与えていたの?」
「そうだ。無から有を作りだすことは、神であろうと簡単に行うことは出来ない」
「だから……私の命を……分け与えて……いたのね……。そしたら桂木君が、私と一緒にいたのは……」
「汝の母の寿命を短くしたに過ぎない」
「そんな……。私! そんな事になっているなんて知らなくて!」
「知っていようと知らずとも汝は契約をした。そして――、我が神使を殺させた。それが全てである」
「それじゃ! 私の命を使えば、お母さんを助けられるのですか!」
「すでに減衰した汝の魂に、そこまでの力はない。それに、すでに汝を産み落とした者は死んだ」
「――!」
大きく目を見開き膝から崩れ落ちる山城綾子。
「あ、あああああああああああ……」
声にならない声を山城綾子が上げる――。
喉の奥がつまり胸中で声が滞り胸に手を当て蹲る彼女の姿を見て俺は――。
「契約は終わった。汝の肉体をもらい受けるとする。汝も、もう苦しまずに済むであろう? その肉体は、我が力となり、我が一部となる」
耳を澄ましたところで、山城綾子の叫びが聞こえてくる。
「幸子」
「何よ? ――と、いうか、貴方、女性の名前を呼ぶのに抵抗感ないのね。その年齢なら、もう少し照れると思うのだけれど?」
「今は、細かい話をしている暇はない」
「それよりも頼みがある」
「何よ?」
「お前、たしか理事長と面識があるよな?」
「あるけど……、それが何かあるの?」
「理事長に連絡をして、学校関係者を学校の敷地内から速やかに避難誘導するように伝えてくれないか?」
「――どうして?」
「ここが高校の理科室の真下だからだ」
「え? どうして、そんなことが分かるの?」
「歩幅で何となくだ」
「はぁー。わかったわ。どうせ、貴方のことだから、この場所で何かあったら学校にも被害がでると思っているのでしょう? でも、ここで電話をすると、音が反響してしまうから」
「さっきの逆さ鳥居まで戻って電話してくれ。一応、魔物の気配は無いから問題ないはずだ」
「本当に? 貴方、本当に何者なの? ――って、聞いても答えるつもりはないのよね?」
「分かっているなら聞くな」
「はいはい。でも、神に私も聞きたいことがあるから――」
「大丈夫だ。神なら俺に伝手がある。そいつを紹介してやる」
「伝手って……」
肩を落とし、頷く紅幸子。
「それじゃ、あとは任せたわ」
「ああ」
紅幸子が足音を極力立てないように逆さ鳥居の方へと戻っていくのを確認したあと、身体強化した俺の聴覚が音を拾う。
「先に契約を破ったのは、其方であろう? 巫女よ」
「何のことなの?」
「汝の母親である巫女は、我が力を、汝を救う為に利用し、我は巫女の願いに答え汝の病を転化させた。汝の病を、汝を産み落とした巫女が引き受けることを条件にだ」
「それは知っているわ。小さい頃に、ここに連れてきてもらったから」
「――ならば、汝が母を救いたいという願いはどうなのだ?」
俺は石壁に背中を預けながら、山城綾子の声が聞こえる大空洞へと視線を向ける。
大空洞――、強化した視線の先には、高さ10メートルはあろう巨大なピラミッドのようなモノが存在しており、そのピラミッドの頂上付近には青い火の玉が揺らめき存在していた。
「あの揺らめいているのが神か?」
ウィルオーウィスプのような存在に見えるが、内包しているエネルギーが桁違いだ。
エネルギーの強さから見たら異世界で殺した『死と戦いの神グラフト』と同等。
「厄介だな」
いまの俺の肉体だと使える力は制限が掛っている。
本来の鍛え抜かれた身体なら――。
「願ったわ! 私に転化してって! お母さんが苦しむ姿は見たくないの! もう、ずっとお母さんは寝たきりだから! だから! 助けてください!」
「巫女よ。山城の血筋を引く巫女よ。汝らは、我を崇拝していた血縁の者であるから、その願いを聞き届けていた。そして、その体を貸す条件に我は汝の願いを聞き届けたであろう?」
「それは……」
「汝は、そのことを了承したはずであったはずだ。なのに、汝は化け物に庇護を求めた。これは明らかな契約違反である」
「だから、お母さんの命を奪ったの!?」
「それは違う。汝の生命エネルギーを、汝を産み落とした者に分け与える事で延命していたのだ。だが――、汝を庇護していた者により、妨害された。その結果、死という結果に繋がったに過ぎない」
つまり、最初から山城綾子は、何が原因か知っていたということか?
ただ、全てを知らされていた訳ではなかったと……。
「……わ、私の生命を? お母さんに、分け与えていたの?」
「そうだ。無から有を作りだすことは、神であろうと簡単に行うことは出来ない」
「だから……私の命を……分け与えて……いたのね……。そしたら桂木君が、私と一緒にいたのは……」
「汝の母の寿命を短くしたに過ぎない」
「そんな……。私! そんな事になっているなんて知らなくて!」
「知っていようと知らずとも汝は契約をした。そして――、我が神使を殺させた。それが全てである」
「それじゃ! 私の命を使えば、お母さんを助けられるのですか!」
「すでに減衰した汝の魂に、そこまでの力はない。それに、すでに汝を産み落とした者は死んだ」
「――!」
大きく目を見開き膝から崩れ落ちる山城綾子。
「あ、あああああああああああ……」
声にならない声を山城綾子が上げる――。
喉の奥がつまり胸中で声が滞り胸に手を当て蹲る彼女の姿を見て俺は――。
「契約は終わった。汝の肉体をもらい受けるとする。汝も、もう苦しまずに済むであろう? その肉体は、我が力となり、我が一部となる」
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