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第二章 逆さ鳥居の神社編
第78話
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病室前まで戻ると、まだ寝ているのか規則正しい呼吸が聞こえてくる。
そこで、また電話が鳴る。
「山崎か?」
「はい。桂木さん、一体何をしてるんですか?」
「何をとは?」
「堅気に見えない人間が桂木さんの家の近くを見張っているみたいなんですが? しかも片手では数えきれない人数ですよ」
「ああ、神社庁の連中だ。いま霊障って言うのか? そういう問題に関わっている被害者を俺の自宅で保護しているんだ」
「――ま、まさか……桂木さんの本当の力が神社庁にバレた訳では?」
「そんなヘマな事はしない」
返答しながらも家の近くで山崎と合流するのは悪手だと思い口を開く。
「山崎。合流場所だが、東千葉駅付近とかは大丈夫か? 時間としては午後9時頃が好ましいんだが――」
「別に構いませんよ」
「そうか。すまないな」
電話を切る。
それにしても――、神社庁の連中。俺の家近くを警護している連中は冒険者ランクで言えばCランク程度だが人間としては十分に強い。
それを、相手に気づかれることなく察するとは山崎の傭兵をしていたという話は嘘ではないようだな。
山城綾子が起きるまで、しばらく病室入口で待つ。
時間としては2時間ほど経過したころだろうか? ようやく身動ぎしたところで、俺は病室のドアをノックする。
「……ん」
寝惚けた様子で、俺を見てくる綾子。
「すまない。お前の父親と話していて時間が掛かってしまってな」
「え?」
俺が話しかけたことで、ようやく現状を理解したのか焦って立ち上がる綾子。
その際に、急に起きたことで眩暈を起こしたのか彼女の体は、自身の母親の体を覆うように倒れていく。
「おい。慌てて立ち上がるな」
「ごめんなさい。それよりも助かったわ」
身体強化を行い、20メートル近くの距離を刹那の時間で縮めた俺は何とか山城綾子が倒れる前に、その体を受け止めることに成功する。
「気にするな」
「それより桂木君」
「何だ?」
「さっき、病室入口に居なかった?」
「勘違いだろ。眩暈を起こすくらい意識がハッキリしていなかったんだからな」
「……う、うん。あれ? これって、コート?」
「ずいぶんと良い感じに寝ていたからな。だが、風邪を引くと俺の家にも迷惑がかかるからコートを掛けておいた」
「そうなのね……。それで、お父さんは何て?」
「ああ。お前を俺の家に泊めている事について謝罪してきた」
「そう」
「――で、どうするんだ? 病院に見舞いに来るという予定は完了したんだろう?」
「そうね。今日は、帰りましょう」
「ああ」
俺は、山城綾子である母親の方へと視線を向ける。
そして、あと数日の命であると言う事を、体から発している微弱な生体電流から察知した。
山城家の用意した車に乗り自宅に戻ったあとは――。
「あ! お兄ちゃん! お帰りなさい!」
家に入ると、まず出迎えたのは妹の胡桃。
「優斗! お帰りなさい! 私にする? 私にする? それとも私に!」
「お兄ちゃん! まずはご飯です!」
「えっと……、本当に神楽坂さん、来たのね……」
「来ましたけど何か? 私は優斗に許可を取りましたし、山城先輩の許可は必要ないですよね?」
「とりあえず、まずは風呂からだな。綾子は風呂に先に入ってくれ」
「――え? ご飯は良いの?」
「病院に行ってきたんだ。まずは風呂に入ってきてくれ」
「分かったわ」
綾子も、外出したから風呂に入りたいのだろう。
とくに何も言わずに脱衣所へと向かう。
そして、俺は玄関から一番近い自分の部屋へと視線を向ける。
そこには、都のアタッシュケースが置かれていた。
「――で、どうして俺の部屋に都の荷物が置かれているんだ?」
「え? だって! 優斗が、優斗の部屋で暮らしていいって言っていたから? 言っていたよね?」
「そういえば言った気がするな……」
「つまり同棲ってことよね?」
「何故に、そこから同棲の話に飛躍する?」
「大丈夫! 困るのは最初だけだから!」
「お兄ちゃん! 胡桃は、良い事を考えたのです!」
「何だ? こんどは?」
「お兄ちゃんが、胡桃と一緒に、胡桃のベッドで寝れば解決するの!」
「なるほど……。その手が!」
「ちょっと! 胡桃ちゃん! 話しが違うわよ!」
「ふふーん。お兄ちゃんの部屋で、お兄ちゃんのベッドで寝ることは、お兄ちゃんが許可出しましたけど、お兄ちゃんとの添い寝セットは許可していませんから!」
「グヌヌヌヌ」
都が、妹のことを睨みつけるが――。
「胡桃」
「何ですか? お兄ちゃん!」
「お前が都と一緒に、俺のベッドで寝れば全て解決だな」
「「えええええー」」
どうして、胡桃も都も不満そうな表情で大声を上げるのか。
俺は至って男女同衾はダメだと常識的に判断して発言しただけに過ぎない訳だが……。
そこで、また電話が鳴る。
「山崎か?」
「はい。桂木さん、一体何をしてるんですか?」
「何をとは?」
「堅気に見えない人間が桂木さんの家の近くを見張っているみたいなんですが? しかも片手では数えきれない人数ですよ」
「ああ、神社庁の連中だ。いま霊障って言うのか? そういう問題に関わっている被害者を俺の自宅で保護しているんだ」
「――ま、まさか……桂木さんの本当の力が神社庁にバレた訳では?」
「そんなヘマな事はしない」
返答しながらも家の近くで山崎と合流するのは悪手だと思い口を開く。
「山崎。合流場所だが、東千葉駅付近とかは大丈夫か? 時間としては午後9時頃が好ましいんだが――」
「別に構いませんよ」
「そうか。すまないな」
電話を切る。
それにしても――、神社庁の連中。俺の家近くを警護している連中は冒険者ランクで言えばCランク程度だが人間としては十分に強い。
それを、相手に気づかれることなく察するとは山崎の傭兵をしていたという話は嘘ではないようだな。
山城綾子が起きるまで、しばらく病室入口で待つ。
時間としては2時間ほど経過したころだろうか? ようやく身動ぎしたところで、俺は病室のドアをノックする。
「……ん」
寝惚けた様子で、俺を見てくる綾子。
「すまない。お前の父親と話していて時間が掛かってしまってな」
「え?」
俺が話しかけたことで、ようやく現状を理解したのか焦って立ち上がる綾子。
その際に、急に起きたことで眩暈を起こしたのか彼女の体は、自身の母親の体を覆うように倒れていく。
「おい。慌てて立ち上がるな」
「ごめんなさい。それよりも助かったわ」
身体強化を行い、20メートル近くの距離を刹那の時間で縮めた俺は何とか山城綾子が倒れる前に、その体を受け止めることに成功する。
「気にするな」
「それより桂木君」
「何だ?」
「さっき、病室入口に居なかった?」
「勘違いだろ。眩暈を起こすくらい意識がハッキリしていなかったんだからな」
「……う、うん。あれ? これって、コート?」
「ずいぶんと良い感じに寝ていたからな。だが、風邪を引くと俺の家にも迷惑がかかるからコートを掛けておいた」
「そうなのね……。それで、お父さんは何て?」
「ああ。お前を俺の家に泊めている事について謝罪してきた」
「そう」
「――で、どうするんだ? 病院に見舞いに来るという予定は完了したんだろう?」
「そうね。今日は、帰りましょう」
「ああ」
俺は、山城綾子である母親の方へと視線を向ける。
そして、あと数日の命であると言う事を、体から発している微弱な生体電流から察知した。
山城家の用意した車に乗り自宅に戻ったあとは――。
「あ! お兄ちゃん! お帰りなさい!」
家に入ると、まず出迎えたのは妹の胡桃。
「優斗! お帰りなさい! 私にする? 私にする? それとも私に!」
「お兄ちゃん! まずはご飯です!」
「えっと……、本当に神楽坂さん、来たのね……」
「来ましたけど何か? 私は優斗に許可を取りましたし、山城先輩の許可は必要ないですよね?」
「とりあえず、まずは風呂からだな。綾子は風呂に先に入ってくれ」
「――え? ご飯は良いの?」
「病院に行ってきたんだ。まずは風呂に入ってきてくれ」
「分かったわ」
綾子も、外出したから風呂に入りたいのだろう。
とくに何も言わずに脱衣所へと向かう。
そして、俺は玄関から一番近い自分の部屋へと視線を向ける。
そこには、都のアタッシュケースが置かれていた。
「――で、どうして俺の部屋に都の荷物が置かれているんだ?」
「え? だって! 優斗が、優斗の部屋で暮らしていいって言っていたから? 言っていたよね?」
「そういえば言った気がするな……」
「つまり同棲ってことよね?」
「何故に、そこから同棲の話に飛躍する?」
「大丈夫! 困るのは最初だけだから!」
「お兄ちゃん! 胡桃は、良い事を考えたのです!」
「何だ? こんどは?」
「お兄ちゃんが、胡桃と一緒に、胡桃のベッドで寝れば解決するの!」
「なるほど……。その手が!」
「ちょっと! 胡桃ちゃん! 話しが違うわよ!」
「ふふーん。お兄ちゃんの部屋で、お兄ちゃんのベッドで寝ることは、お兄ちゃんが許可出しましたけど、お兄ちゃんとの添い寝セットは許可していませんから!」
「グヌヌヌヌ」
都が、妹のことを睨みつけるが――。
「胡桃」
「何ですか? お兄ちゃん!」
「お前が都と一緒に、俺のベッドで寝れば全て解決だな」
「「えええええー」」
どうして、胡桃も都も不満そうな表情で大声を上げるのか。
俺は至って男女同衾はダメだと常識的に判断して発言しただけに過ぎない訳だが……。
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