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第二章 逆さ鳥居の神社編
第77話
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「桂木さんは、神道に関しては詳しくは?」
「まったく知らないな」
「分かりました。それでは、後程、説明に伺いたいと思うのですが――」
「電話口では難しいことなのか?」
「資料がありますので」
「分かった。それじゃ、あとで俺が住んでいる公団住宅近くで待ち合わせるというのはどうだ?」
「それでは、それでお願いします」
山崎からの電話が切れる。
「お兄ちゃん! 聞いてる?」
どうやら、俺と山崎が会話している間に、都と話は終わっていたようだ。
「ああ、聞いているぞ?」
「それで、お兄ちゃんは都さんが一緒に暮らすのは許可だしたの?」
「だから、出したって言っているだろ」
「むー、わかったの……。都さん、お兄ちゃんの部屋で寝泊まりしてもいいの」
「本当っ!」
「お兄ちゃんが許可したって言ってたから……、でも! 変なことしたら絶対にダメだからね!」
「分かっているわ」
電話口から、都と妹の声が聞こえてくるが、都が俺の部屋に泊まるような許可を出した覚えはないんだが……。
「お兄ちゃん」
「どうした? いま変な話が聞こえてきたが――」
ここは、ハッキリと俺の部屋に泊まることは許可出していないと伝えないといけない。
「都さんが、200万円払うって……」
「ふっ、仕方ないな。それなら、それで!」
冒険者たるモノ! クライアントからの要望に応えるのは常識であり筋だからな。
お金で、自分のプライドを売るような真似では決してない。
あくまでもクライアントの指示であり、気持ちを尊重しただけのこと。
「とりあえず、これで、しばらくは生活が楽になるね」
「そういえば、そんな話があったな」
まったく、親が辺境の奥地に行かずに、きちんと定期的に生活費を振り込んでおいてくれているのなら、問題なかったんだが……。
それにしても、俺の家に泊まりたい為だけにお金を払うとか、金持ちの考えることはよく分からないな。
「胡桃」
「何?」
「とりあえず100万円にしておけ」
「――え? 200万円で約束しちゃたけど……」
「今、泊っている山城先輩は100万円だからな。金額で差をつけると、依頼者をエコひいきしなくてはいけなくなる」
「依頼者って……」
「とりあえず分かったな?」
「うん……」
通話を切ったあとは、ズボンのポケットに携帯を突っ込む。
まったく、少しは静かに生活したいものだ。
「桂木殿」
「――ん? ああ、住良木か」
「はい。どこかに電話だったのですか?」
俺に話しかけてきたのは、普段は巫女服を着こなしている女性――、住良木鏡花。
「少し妹から電話があってな」
「ああ。神楽坂グループの御令嬢が、桂木殿のご自宅にアタッシュケースを持って姿を見せたという情報は伺っておりましたが、その事と関係が?」
「まあな」
俺は肩を竦める。
「だいたい、一連のことは、そちらの方で把握しているんだろう? 遠回しな聞き方は、趣味が悪いぞ?」
「これは、申し訳ありません。それよりも、やはり知っておられましたか……」
「当たり前だ。俺の家の周辺を警護してくれているのに、病院にまで来るのに付いて来ないはずはないからな」
「そういうことですか」
少し残念そうな反応を住良木は見せる。
まぁ、実際のところは手練れと言ってもCランク相当の冒険者を10人ほど、山王総合病院の敷地内に配置していると言ったのは、気配から察していた。
伊達に、相手も人を護衛するという立場の人間ではない。
プロはプロなりに、それなりの技術というのが存在するのだろう。
「当たっていたか?」
「はい。それと、これを――」
「USBメモリー?」
「はい。神社庁の奥の院からの情報です。全て開示許可が下りなかったため、情報の全てではありませんが、一連の怪異を沈める手立てになるかと――」
「なるほどな……。このことは、山城綾子には?」
「まだ伝えておりません。山城理事には、後程、説明する予定です」
「どうして、俺に先にもってきたんだ?」
「桂木殿が、神域を展開する際に、どのような神域を展開するのかを無意識下でも構いませんので、理解を深めておくと有益に働きますので」
「つまり、何かあった時の為に、俺に情報開示するということか」
「はい。ただ、奥の院は、情報開示については出し渋っておりますので、全てが分かったという訳では……」
「――いや、十分だ。俺は、その手に関してはまったく知らないからな。少しでも情報を得られるのなら、問題ない」
「そう言ってくださると助かります。それでは、桂木殿、何かありましたら連絡をください」
「ああ」
俺は頷く。
そして思い出す。
「先ほどから何度か桂木殿に連絡をしたのですが、連絡が通じず直接コンタクトを取らせて頂きましたので」
「そういえば忘れてきたな。自宅に」
「携帯は携帯してください」
「気を付ける」
「お願いします」
頭を下げて去っていくワンピース姿の住良木。
見送ったあと、俺はUSBメモリーをズボンの中へ入れ病室へ向かった。
「まったく知らないな」
「分かりました。それでは、後程、説明に伺いたいと思うのですが――」
「電話口では難しいことなのか?」
「資料がありますので」
「分かった。それじゃ、あとで俺が住んでいる公団住宅近くで待ち合わせるというのはどうだ?」
「それでは、それでお願いします」
山崎からの電話が切れる。
「お兄ちゃん! 聞いてる?」
どうやら、俺と山崎が会話している間に、都と話は終わっていたようだ。
「ああ、聞いているぞ?」
「それで、お兄ちゃんは都さんが一緒に暮らすのは許可だしたの?」
「だから、出したって言っているだろ」
「むー、わかったの……。都さん、お兄ちゃんの部屋で寝泊まりしてもいいの」
「本当っ!」
「お兄ちゃんが許可したって言ってたから……、でも! 変なことしたら絶対にダメだからね!」
「分かっているわ」
電話口から、都と妹の声が聞こえてくるが、都が俺の部屋に泊まるような許可を出した覚えはないんだが……。
「お兄ちゃん」
「どうした? いま変な話が聞こえてきたが――」
ここは、ハッキリと俺の部屋に泊まることは許可出していないと伝えないといけない。
「都さんが、200万円払うって……」
「ふっ、仕方ないな。それなら、それで!」
冒険者たるモノ! クライアントからの要望に応えるのは常識であり筋だからな。
お金で、自分のプライドを売るような真似では決してない。
あくまでもクライアントの指示であり、気持ちを尊重しただけのこと。
「とりあえず、これで、しばらくは生活が楽になるね」
「そういえば、そんな話があったな」
まったく、親が辺境の奥地に行かずに、きちんと定期的に生活費を振り込んでおいてくれているのなら、問題なかったんだが……。
それにしても、俺の家に泊まりたい為だけにお金を払うとか、金持ちの考えることはよく分からないな。
「胡桃」
「何?」
「とりあえず100万円にしておけ」
「――え? 200万円で約束しちゃたけど……」
「今、泊っている山城先輩は100万円だからな。金額で差をつけると、依頼者をエコひいきしなくてはいけなくなる」
「依頼者って……」
「とりあえず分かったな?」
「うん……」
通話を切ったあとは、ズボンのポケットに携帯を突っ込む。
まったく、少しは静かに生活したいものだ。
「桂木殿」
「――ん? ああ、住良木か」
「はい。どこかに電話だったのですか?」
俺に話しかけてきたのは、普段は巫女服を着こなしている女性――、住良木鏡花。
「少し妹から電話があってな」
「ああ。神楽坂グループの御令嬢が、桂木殿のご自宅にアタッシュケースを持って姿を見せたという情報は伺っておりましたが、その事と関係が?」
「まあな」
俺は肩を竦める。
「だいたい、一連のことは、そちらの方で把握しているんだろう? 遠回しな聞き方は、趣味が悪いぞ?」
「これは、申し訳ありません。それよりも、やはり知っておられましたか……」
「当たり前だ。俺の家の周辺を警護してくれているのに、病院にまで来るのに付いて来ないはずはないからな」
「そういうことですか」
少し残念そうな反応を住良木は見せる。
まぁ、実際のところは手練れと言ってもCランク相当の冒険者を10人ほど、山王総合病院の敷地内に配置していると言ったのは、気配から察していた。
伊達に、相手も人を護衛するという立場の人間ではない。
プロはプロなりに、それなりの技術というのが存在するのだろう。
「当たっていたか?」
「はい。それと、これを――」
「USBメモリー?」
「はい。神社庁の奥の院からの情報です。全て開示許可が下りなかったため、情報の全てではありませんが、一連の怪異を沈める手立てになるかと――」
「なるほどな……。このことは、山城綾子には?」
「まだ伝えておりません。山城理事には、後程、説明する予定です」
「どうして、俺に先にもってきたんだ?」
「桂木殿が、神域を展開する際に、どのような神域を展開するのかを無意識下でも構いませんので、理解を深めておくと有益に働きますので」
「つまり、何かあった時の為に、俺に情報開示するということか」
「はい。ただ、奥の院は、情報開示については出し渋っておりますので、全てが分かったという訳では……」
「――いや、十分だ。俺は、その手に関してはまったく知らないからな。少しでも情報を得られるのなら、問題ない」
「そう言ってくださると助かります。それでは、桂木殿、何かありましたら連絡をください」
「ああ」
俺は頷く。
そして思い出す。
「先ほどから何度か桂木殿に連絡をしたのですが、連絡が通じず直接コンタクトを取らせて頂きましたので」
「そういえば忘れてきたな。自宅に」
「携帯は携帯してください」
「気を付ける」
「お願いします」
頭を下げて去っていくワンピース姿の住良木。
見送ったあと、俺はUSBメモリーをズボンの中へ入れ病室へ向かった。
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