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第二章 逆さ鳥居の神社編
第66話
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風呂を出たと同時にインターホンが鳴る。
時刻は、すでに午後11時を過ぎている。
「お兄ちゃん……、こんな時間に誰かな?」
目を擦らせながら、部屋から出てくる妹。
「俺が対応しておくから、寝てていいぞ」
「うん……」
さすが我が妹は、夜に弱いということもあり、そして――、すでにお眠りモードに入っているようで、ふらふらと自室へ戻っていく。
「優斗君。誰か、尋ねてくる用事とかあるのかしら?」
それに対して、自宅から本を持ってきたのか、本に目を通していた山城綾子が凛とした様子で、俺に話しかけてきた。
「――さてな」
俺は肩を竦めながら、答えるが――、俺の方を見てきた山城綾子の顔が真っ赤に瞬間湯沸かし器のようにボン! と、擬音が聞こえるレベルで耳まで真っ赤になる。
「――ゆ、ゆう……優斗くん!」
「何でしょうか?」
「その……、家には異性いるということを――」
「たしかに妹は、分類上は雌ですね」
「そうじゃなくて! 服を着て! 服を!」
「――あ……」
そこまで言われて俺は気が付く。
外の様子の気配に気を取られていて、いつも通り腰にタオルを巻いたままでリビングに来たことを。
まぁ、インターホンが鳴ったこともあるから仕方ないだろう。
「優斗君……、いまは私もいるのよ?」
「そういえば、そうですね……」
山城綾子と話している間にも、インターホンが鳴る。
「優斗君。早く出た方がいいのでなくて?」
「たしかに――」
俺は玄関まで行きドアを開ける。
すると、そこには巫女服を来た住良木鏡花が立っていた。
彼女は、頭を下げると――。
「夜分に遅く失礼しま――きゃあああああああああ。変態がーっ!」
話している途中で顔を上げていく。
そして、叫びが聞こえてきた同時に、俺は強烈な痛みと共に玄関に崩れ落ちる。
「――あ……」
「くおおおおおおおお」
無防備のまま、股間に蹴りを喰らった俺は悶絶。
「だ、大丈夫ですか?」
「――ゆ、優斗君! 大丈夫!」
女性の絶叫と、そして俺の苦悶に満ちた声。
それらが混ざり合わさった事で、慌てて駆け寄ってくる山城綾子。
彼女は、俺が倒れている場面と、住良木鏡花の姿を交互に見たあと、俺を軽蔑するかのような眼差しで見下ろしてきた。
「お、お兄ちゃん! 大丈夫!」
そして――、その騒動には、さすがに目を覚ましたのは妹も走ってくると俺を見ると、みるみる顔色が険悪な表情へと変っていく。
「お兄ちゃんに手を出したのは誰ですか!」
「――え? そ、それは……」
あまりに妹のお怒りな様子に、しどろもどろになる住良木鏡花。
「どなたか知りませんけど! お兄ちゃんが、男としての機能を失ったらどうするんですか! そもそも、こんな夜分遅くに、自宅に訪ねてきて非常識だとは思わないのですか! しかも、お兄ちゃんに手を出すなんて万死に値するのです!」
「胡桃ちゃん。優斗は、裸でウロウロとしていたのよ?」
「自宅の中だからいいのです! そもそも、お兄ちゃんは、もとから、そんな感じですし!
別に問題ないのです!」
「――え? 私が、おかしいの? 一般の方のご家庭はお風呂のあとに服を着ないのが普通なの?」
「はい!」
自信満々に答える妹。
「そもそもいいですか? 眼福という言葉を知っていれば、お兄ちゃんの裸を合法的に視るチャンスじゃないですか! それを、わざわざ禁止しようなんて、間違っているのです!」
「えっと……、一般のご家庭だと、そんな感じなのかしら?」
「普通です。常識です」
妹が何か意味不明な力説をしている。
今度から服を着よう。
「おかしいから! そんなのおかしいからっ!」
必死に、住良木鏡花が妹の言葉を否定している。
「何がおかしいのですか! そこの、暴行犯の人!」
「暴行犯って……」
「ここは、お兄ちゃんと私の家なのです! そして、あなたは何の断りもなく来訪した人です! そして、お兄ちゃんに手を出した犯罪者なのです! わかりますか? あなたの言葉には、説得力は一切ないのです!」
「えっと……、どっちが正しいのかな?」
「山城さん。普通に一般家庭でも、異性がいる家では男性は裸でうろつくような事はしません」
「何を言っているのですか? この女は! 好意ある男の人が裸でうろついていたら、見るのは当たり前じゃないですか! じゃ、聞きますけど! 彼氏や旦那が、裸で部屋の中でうろついていたら、服を着てくださいって言いますか?」
「……たしかに……」
「山城さんは、何を納得しているのですか! もう! 桂木殿に会いに来たと言うのに……」
「とりあえず、今日はお帰り下さい。アポなしの――、しかも夜分遅くの訪問はお断りしています」
「――え? あ! ちょ、ちょっと! ま、まっ――」
バタンと閉まり、施錠されるドア。
「お兄ちゃん、大丈夫?」
「俺は大丈夫だが……」
あまりにも、あまりな超展開すぎる会話に、ちょっと引き気味だ。
妹は、どうやら俺が暴行を受けたと思い、怒って追い返すために意味不明な論理を展開して追い返したというのは分かったが……。
「胡桃、俺を大事に思ってくれるのは兄として嬉しいが……」
とりあえず妹には、過剰な言い回しは気を付けるように言っておかないとな。
好きな男性とか、彼氏とか、旦那とか、そういうモノと俺を一緒にされても困る。
中学3年生になったのだから、きちんと日本語は使わないとな。
兄と、彼氏と旦那は別物だと教えておかないと。
時刻は、すでに午後11時を過ぎている。
「お兄ちゃん……、こんな時間に誰かな?」
目を擦らせながら、部屋から出てくる妹。
「俺が対応しておくから、寝てていいぞ」
「うん……」
さすが我が妹は、夜に弱いということもあり、そして――、すでにお眠りモードに入っているようで、ふらふらと自室へ戻っていく。
「優斗君。誰か、尋ねてくる用事とかあるのかしら?」
それに対して、自宅から本を持ってきたのか、本に目を通していた山城綾子が凛とした様子で、俺に話しかけてきた。
「――さてな」
俺は肩を竦めながら、答えるが――、俺の方を見てきた山城綾子の顔が真っ赤に瞬間湯沸かし器のようにボン! と、擬音が聞こえるレベルで耳まで真っ赤になる。
「――ゆ、ゆう……優斗くん!」
「何でしょうか?」
「その……、家には異性いるということを――」
「たしかに妹は、分類上は雌ですね」
「そうじゃなくて! 服を着て! 服を!」
「――あ……」
そこまで言われて俺は気が付く。
外の様子の気配に気を取られていて、いつも通り腰にタオルを巻いたままでリビングに来たことを。
まぁ、インターホンが鳴ったこともあるから仕方ないだろう。
「優斗君……、いまは私もいるのよ?」
「そういえば、そうですね……」
山城綾子と話している間にも、インターホンが鳴る。
「優斗君。早く出た方がいいのでなくて?」
「たしかに――」
俺は玄関まで行きドアを開ける。
すると、そこには巫女服を来た住良木鏡花が立っていた。
彼女は、頭を下げると――。
「夜分に遅く失礼しま――きゃあああああああああ。変態がーっ!」
話している途中で顔を上げていく。
そして、叫びが聞こえてきた同時に、俺は強烈な痛みと共に玄関に崩れ落ちる。
「――あ……」
「くおおおおおおおお」
無防備のまま、股間に蹴りを喰らった俺は悶絶。
「だ、大丈夫ですか?」
「――ゆ、優斗君! 大丈夫!」
女性の絶叫と、そして俺の苦悶に満ちた声。
それらが混ざり合わさった事で、慌てて駆け寄ってくる山城綾子。
彼女は、俺が倒れている場面と、住良木鏡花の姿を交互に見たあと、俺を軽蔑するかのような眼差しで見下ろしてきた。
「お、お兄ちゃん! 大丈夫!」
そして――、その騒動には、さすがに目を覚ましたのは妹も走ってくると俺を見ると、みるみる顔色が険悪な表情へと変っていく。
「お兄ちゃんに手を出したのは誰ですか!」
「――え? そ、それは……」
あまりに妹のお怒りな様子に、しどろもどろになる住良木鏡花。
「どなたか知りませんけど! お兄ちゃんが、男としての機能を失ったらどうするんですか! そもそも、こんな夜分遅くに、自宅に訪ねてきて非常識だとは思わないのですか! しかも、お兄ちゃんに手を出すなんて万死に値するのです!」
「胡桃ちゃん。優斗は、裸でウロウロとしていたのよ?」
「自宅の中だからいいのです! そもそも、お兄ちゃんは、もとから、そんな感じですし!
別に問題ないのです!」
「――え? 私が、おかしいの? 一般の方のご家庭はお風呂のあとに服を着ないのが普通なの?」
「はい!」
自信満々に答える妹。
「そもそもいいですか? 眼福という言葉を知っていれば、お兄ちゃんの裸を合法的に視るチャンスじゃないですか! それを、わざわざ禁止しようなんて、間違っているのです!」
「えっと……、一般のご家庭だと、そんな感じなのかしら?」
「普通です。常識です」
妹が何か意味不明な力説をしている。
今度から服を着よう。
「おかしいから! そんなのおかしいからっ!」
必死に、住良木鏡花が妹の言葉を否定している。
「何がおかしいのですか! そこの、暴行犯の人!」
「暴行犯って……」
「ここは、お兄ちゃんと私の家なのです! そして、あなたは何の断りもなく来訪した人です! そして、お兄ちゃんに手を出した犯罪者なのです! わかりますか? あなたの言葉には、説得力は一切ないのです!」
「えっと……、どっちが正しいのかな?」
「山城さん。普通に一般家庭でも、異性がいる家では男性は裸でうろつくような事はしません」
「何を言っているのですか? この女は! 好意ある男の人が裸でうろついていたら、見るのは当たり前じゃないですか! じゃ、聞きますけど! 彼氏や旦那が、裸で部屋の中でうろついていたら、服を着てくださいって言いますか?」
「……たしかに……」
「山城さんは、何を納得しているのですか! もう! 桂木殿に会いに来たと言うのに……」
「とりあえず、今日はお帰り下さい。アポなしの――、しかも夜分遅くの訪問はお断りしています」
「――え? あ! ちょ、ちょっと! ま、まっ――」
バタンと閉まり、施錠されるドア。
「お兄ちゃん、大丈夫?」
「俺は大丈夫だが……」
あまりにも、あまりな超展開すぎる会話に、ちょっと引き気味だ。
妹は、どうやら俺が暴行を受けたと思い、怒って追い返すために意味不明な論理を展開して追い返したというのは分かったが……。
「胡桃、俺を大事に思ってくれるのは兄として嬉しいが……」
とりあえず妹には、過剰な言い回しは気を付けるように言っておかないとな。
好きな男性とか、彼氏とか、旦那とか、そういうモノと俺を一緒にされても困る。
中学3年生になったのだから、きちんと日本語は使わないとな。
兄と、彼氏と旦那は別物だと教えておかないと。
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