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第一章 呪いのエレベーター編
第48話
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「そうじゃなくて! もう! お兄ちゃんの鈍感っ!」
妹は、頬を膨らませると冷蔵庫からプリンを取り出し、やけ食いを始める。
ちなみに、それは俺の分のプリンである。
「胡桃。それは、俺の――」
「慰謝料だから!」
「何の慰謝料だよ……」
俺は思わずツッコミを入れておいた。
そして一日は何事もなく過ぎていき――、夜中に自室で寝ていると部屋に入ってくる気配が――。
瞼を薄っすらと開けると妹が枕を片手に部屋に入ってきたようだ。
まったく……。
「うーん」
そんな声が聞こえてくる。
瞼を開ければ、妹が真横で寝ている。
目の前には、我が妹ながら美少女と言って差し支えない可愛い寝顔が見える。
同じ遺伝子から生まれたとは思えないほどだ。
「起きろ。胡桃」
「さむーい」
「そりゃ、外は雨が降っているからな」
もうすぐ5月になるが、夏までは2カ月近くある。
よって――、冬の寒さがまだ続いている。
そのせいもあって朝方は冷えるときは冷える。
「お兄ちゃん」
「何だ?」
「腕枕っていいよね」
「俺が寝ている間に、お前が勝手に腕枕したんじゃないのか? それと腕枕は、体には良くないからって、何かの本で読んだことがあるぞ?」
「そうなの?」
妹はキョトンとした瞳で俺を見てくると、俺の腕に頭を乗せたまま体をゴロンと一回転させて近寄ってくると抱き枕のように抱き付いてくる。
まるで、最近も同じことをされた既視感を覚えるが気のせいではないだろう。
「おい、早く起きないと遅刻するぞ?」
「うーん。そういえば今日から、お兄ちゃんも学校があるんだっけ?」
「そうだな」
俺が住んでいるのは、千葉駅からも少し距離がある。
千葉駅までは、バスを使っても徒歩を含めれば30分近くかかるし、何より山武郡の日向駅までは電車を乗り継いでも片道40分近くかかる。
つまり、片道2時間コース。
「休んじゃえば?」
「馬鹿を言うな」
俺は、妹の頭の下から右腕を引き抜く。
「もー!」
途端に不機嫌になる妹。
さっきまではニコニコしていたと言うのに、ほんと兄としては、ブラコンの毛があるような気がして心配な気がしてきた。
「とりあえずだ。俺は、急いで学校に行くから、お前もきちんと学校にいくんだぞ」
「はーい」
まだ時刻は午前6時少し過ぎ。
妹の通う中学校は近いので、二度寝の余裕があるのだろう。
学ランに着替えたあとは、家を出る。
「優斗、おはよう」
「――お、おう……」
何故か公団住宅の階段を下まで降りたら、都がカバンを手に待っていた。
「ど、どうした? いつもは千葉駅前で集合だろう?」
「……う、うん」
何故か分からないが頬を赤らめて頷く都。
そして――、そんな都の姿を見て、俺は気が付く。
それは天才的発想。
「もしかして風邪か?」
「違うからっ!」
「いや、顔が真っ赤だったからな……。まぁ、あれだ……健康に害が無いのなら別にいいんだが……。それよりも、何故に、ここで待っていたんだ? 此処だと寒いだろう?」
雨は降っているが、公団住宅の下には小さなホールがあり、そこで都は待っていたから濡れてはいない。
ただし、外気温は寒いから待つのは大変だったろう。
「今日は、寒いよね」
「ああ。だから、うちに直接来れば良かったんじゃないのか?」
「うーん。たぶんね……胡桃ちゃんに、わたしは嫌われていると思うから」
「胡桃が?」
「いや、それはないだろ」
都のことを呼び捨てにしている場面を見た事もないし、昨日だって朝も別段おかしいと思った振る舞いは無かったと思う。
異世界で30年以上、暮らしてきたほど人生経験豊かな俺が断言しているのだから、間違いはない。
妹は、頬を膨らませると冷蔵庫からプリンを取り出し、やけ食いを始める。
ちなみに、それは俺の分のプリンである。
「胡桃。それは、俺の――」
「慰謝料だから!」
「何の慰謝料だよ……」
俺は思わずツッコミを入れておいた。
そして一日は何事もなく過ぎていき――、夜中に自室で寝ていると部屋に入ってくる気配が――。
瞼を薄っすらと開けると妹が枕を片手に部屋に入ってきたようだ。
まったく……。
「うーん」
そんな声が聞こえてくる。
瞼を開ければ、妹が真横で寝ている。
目の前には、我が妹ながら美少女と言って差し支えない可愛い寝顔が見える。
同じ遺伝子から生まれたとは思えないほどだ。
「起きろ。胡桃」
「さむーい」
「そりゃ、外は雨が降っているからな」
もうすぐ5月になるが、夏までは2カ月近くある。
よって――、冬の寒さがまだ続いている。
そのせいもあって朝方は冷えるときは冷える。
「お兄ちゃん」
「何だ?」
「腕枕っていいよね」
「俺が寝ている間に、お前が勝手に腕枕したんじゃないのか? それと腕枕は、体には良くないからって、何かの本で読んだことがあるぞ?」
「そうなの?」
妹はキョトンとした瞳で俺を見てくると、俺の腕に頭を乗せたまま体をゴロンと一回転させて近寄ってくると抱き枕のように抱き付いてくる。
まるで、最近も同じことをされた既視感を覚えるが気のせいではないだろう。
「おい、早く起きないと遅刻するぞ?」
「うーん。そういえば今日から、お兄ちゃんも学校があるんだっけ?」
「そうだな」
俺が住んでいるのは、千葉駅からも少し距離がある。
千葉駅までは、バスを使っても徒歩を含めれば30分近くかかるし、何より山武郡の日向駅までは電車を乗り継いでも片道40分近くかかる。
つまり、片道2時間コース。
「休んじゃえば?」
「馬鹿を言うな」
俺は、妹の頭の下から右腕を引き抜く。
「もー!」
途端に不機嫌になる妹。
さっきまではニコニコしていたと言うのに、ほんと兄としては、ブラコンの毛があるような気がして心配な気がしてきた。
「とりあえずだ。俺は、急いで学校に行くから、お前もきちんと学校にいくんだぞ」
「はーい」
まだ時刻は午前6時少し過ぎ。
妹の通う中学校は近いので、二度寝の余裕があるのだろう。
学ランに着替えたあとは、家を出る。
「優斗、おはよう」
「――お、おう……」
何故か公団住宅の階段を下まで降りたら、都がカバンを手に待っていた。
「ど、どうした? いつもは千葉駅前で集合だろう?」
「……う、うん」
何故か分からないが頬を赤らめて頷く都。
そして――、そんな都の姿を見て、俺は気が付く。
それは天才的発想。
「もしかして風邪か?」
「違うからっ!」
「いや、顔が真っ赤だったからな……。まぁ、あれだ……健康に害が無いのなら別にいいんだが……。それよりも、何故に、ここで待っていたんだ? 此処だと寒いだろう?」
雨は降っているが、公団住宅の下には小さなホールがあり、そこで都は待っていたから濡れてはいない。
ただし、外気温は寒いから待つのは大変だったろう。
「今日は、寒いよね」
「ああ。だから、うちに直接来れば良かったんじゃないのか?」
「うーん。たぶんね……胡桃ちゃんに、わたしは嫌われていると思うから」
「胡桃が?」
「いや、それはないだろ」
都のことを呼び捨てにしている場面を見た事もないし、昨日だって朝も別段おかしいと思った振る舞いは無かったと思う。
異世界で30年以上、暮らしてきたほど人生経験豊かな俺が断言しているのだから、間違いはない。
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