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第一章 呪いのエレベーター編
第20話
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「ど、どういうことだ? どうして!」
心構えをしていたであろう山崎が叫ぶ。
そしてエレベーターの外へと拳銃を片手に出ていく。
もちろんボストンバックをエレベーターの中に置いたまま。
その後ろ姿を見た俺は溜息をつく。
今さっき、エレベーターに乗ってきた悪霊(レイス)を見て、少し不審に思わなかったのか? と考えながら。
とりあえず俺は、山崎がエレベーター内の床に置いたボストンバックを持ちエレベーターの外へと出る。
するとエレベーターのドアは閉まっていき最後には音も立てずに閉まる。
「山崎」
ボストンバックを床に置きながら、周りを見渡している男へと声をかけると、山崎は俺に視線を向けてきた。
「なんで、そんなに落ち着いていられるんですか?? ここは、どうみても普通のタワーマンションの通路で……え?」
話している途中で山崎の言葉が疑問形に変わる。
それも、そのはずで――、エレベーターの扉が閉まると同時に周囲の光景が一変したからだ。
壁は、タワーマンションの通路で使用されるような磨かれた白の大理石ではなく、土を掘って作ったような簡素で粗末な壁へと姿をかえていた。
一言で言うのなら鉱山の採掘場の跡地と言ったところだろう。
ただ一つ相違点がるとすれば、鼓動を繰り返す人体で言うところの血管のようなモノが壁に浮かび上がり動いているということくらいか。
「な、なん……周囲の様子が……」
「少しは落ち着け」
「これが落ち着いていられる訳が――」
「戦争で戦ってきたんだろう? だったら、落ち着いて対処できなければ死ぬぞ?」
「すみません」
「いい。よくあることだからな」
俺はボストンバックを山崎に渡す。
「桂木さんは、ずいぶんと落ちついているんですね」
「まあな。よくあることだ」
異世界でダンジョンを探索していた時は、テレポート壁嵌めの罠とかあったからな。
あの時と比べたら可愛いものだ。
「よくあるって……、まるで桂木さんは、こういう場面を何回も潜り抜けてきたみたいな事言いますね」
「そうか? それにしても血管が浮かび上がっている迷宮は、久しぶりに見たな」
悪霊などが好んで使う迷宮には、この手の物が多いが、エレベーター内の水先案内人といい、何かしらの繋がりがあるとみて間違いない。
「久しぶりって……」
考察をしていると、引き攣った表情を見せる山崎。
やれやれ、連れてきたのは失敗だったか?
「とくにかく自分達では対処できないので帰りましょう」
「帰る? どこにだ?」
「――ですから! その降りて来たエレベーターで!」
山崎はエレベーターの昇降ボタンを押すが反応が返ってくることはない。
「どういうことだ? どうして動かない!?」
何度もボタンを押す山崎を横目に俺は壁で脈打つ血管に触れる。
すると、ドクンッ! と、言う音が指先を通じて伝わってくる。
「ふむ……」
「山崎さん! 何をしているんですか! ここは予想以上にヤバイところですって!」
「そりゃ、そうだろうな。擬態までして俺達をエレベーターの外に誘い出したんだからな」
「どうして、そこまで冷静にって! 桂木さん! 何をしているんですか!」
山崎と会話している間にも、俺は壁に浮かび上がってきる血管を指先で貫き赤く滴る血らしきものを舐める。
「ふむ……」
「ふむって! ――い、一体何を! こ、こんな得体の知れない場所の物を口につけるとかありえないですよ!」
「食べて見ないと分からない事もあるからな」
とくに、俺は、こう言ったオカルトに関してはまったく分からない。
少しでも情報収集を得る為には多少は体を動かすことは重要だろう。
それよりも……。
「これは血液だな。しかも人間のだ」
心構えをしていたであろう山崎が叫ぶ。
そしてエレベーターの外へと拳銃を片手に出ていく。
もちろんボストンバックをエレベーターの中に置いたまま。
その後ろ姿を見た俺は溜息をつく。
今さっき、エレベーターに乗ってきた悪霊(レイス)を見て、少し不審に思わなかったのか? と考えながら。
とりあえず俺は、山崎がエレベーター内の床に置いたボストンバックを持ちエレベーターの外へと出る。
するとエレベーターのドアは閉まっていき最後には音も立てずに閉まる。
「山崎」
ボストンバックを床に置きながら、周りを見渡している男へと声をかけると、山崎は俺に視線を向けてきた。
「なんで、そんなに落ち着いていられるんですか?? ここは、どうみても普通のタワーマンションの通路で……え?」
話している途中で山崎の言葉が疑問形に変わる。
それも、そのはずで――、エレベーターの扉が閉まると同時に周囲の光景が一変したからだ。
壁は、タワーマンションの通路で使用されるような磨かれた白の大理石ではなく、土を掘って作ったような簡素で粗末な壁へと姿をかえていた。
一言で言うのなら鉱山の採掘場の跡地と言ったところだろう。
ただ一つ相違点がるとすれば、鼓動を繰り返す人体で言うところの血管のようなモノが壁に浮かび上がり動いているということくらいか。
「な、なん……周囲の様子が……」
「少しは落ち着け」
「これが落ち着いていられる訳が――」
「戦争で戦ってきたんだろう? だったら、落ち着いて対処できなければ死ぬぞ?」
「すみません」
「いい。よくあることだからな」
俺はボストンバックを山崎に渡す。
「桂木さんは、ずいぶんと落ちついているんですね」
「まあな。よくあることだ」
異世界でダンジョンを探索していた時は、テレポート壁嵌めの罠とかあったからな。
あの時と比べたら可愛いものだ。
「よくあるって……、まるで桂木さんは、こういう場面を何回も潜り抜けてきたみたいな事言いますね」
「そうか? それにしても血管が浮かび上がっている迷宮は、久しぶりに見たな」
悪霊などが好んで使う迷宮には、この手の物が多いが、エレベーター内の水先案内人といい、何かしらの繋がりがあるとみて間違いない。
「久しぶりって……」
考察をしていると、引き攣った表情を見せる山崎。
やれやれ、連れてきたのは失敗だったか?
「とくにかく自分達では対処できないので帰りましょう」
「帰る? どこにだ?」
「――ですから! その降りて来たエレベーターで!」
山崎はエレベーターの昇降ボタンを押すが反応が返ってくることはない。
「どういうことだ? どうして動かない!?」
何度もボタンを押す山崎を横目に俺は壁で脈打つ血管に触れる。
すると、ドクンッ! と、言う音が指先を通じて伝わってくる。
「ふむ……」
「山崎さん! 何をしているんですか! ここは予想以上にヤバイところですって!」
「そりゃ、そうだろうな。擬態までして俺達をエレベーターの外に誘い出したんだからな」
「どうして、そこまで冷静にって! 桂木さん! 何をしているんですか!」
山崎と会話している間にも、俺は壁に浮かび上がってきる血管を指先で貫き赤く滴る血らしきものを舐める。
「ふむ……」
「ふむって! ――い、一体何を! こ、こんな得体の知れない場所の物を口につけるとかありえないですよ!」
「食べて見ないと分からない事もあるからな」
とくに、俺は、こう言ったオカルトに関してはまったく分からない。
少しでも情報収集を得る為には多少は体を動かすことは重要だろう。
それよりも……。
「これは血液だな。しかも人間のだ」
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