433 / 437
第433話 大寒波襲来(14)
しおりを挟む
ナイルさんとメディーナさんにお風呂を勧めたあと、俺は一人、居間でパソコンを起動する。
機械音と共に、パソコンのOSが立ち上がる。
すると雪音さんが、お盆を手に居間に入ってくると、ちゃぶ台の上にお盆を置くと、「五郎さん、何をしているのですか?」と、興味深々と言った様子で話しかけてきた。
「今度、ルイズ辺境伯領の主都ブランデンに商店街を作ろうと思っているのですが、それのための勉強ですね」
「勉強ですか?」
「はい」
近づいてくる雪音さんは、俺の横に腰を下ろすとデスクトップのモニターをのぞき込んでくる。
「ギャルリ・ヴェロ=ドダですか。ここって、とっても綺麗な調和の取れたアーケード街ですよね……」
そう雪音さんが、俺がモニター画面上に映し出したフランスのパリ観光スポットの一つである場所を見て呟く。
「雪音さんは行った事があるんですか?」
「はい。大学生の時に一度だけ行きました。五郎さんも、海外で仕事していらっしゃたんですよね? 行ったことはないのですか?」
「――いえいえ、自分は、体調管理やコースの確認とか、通訳とか会社関係の付き合いとかパーティで殆ど時間が無かったですから」
「そうなのですか?」
「はい」
「それにしても、商店街ですか……。たしかに異世界でデパートなんて作ったら利権問題で大変な事になりそうですものね」
「はい。うまく既存の商人とやっていけないかと思っています」
「利益調整で大変な事になりそうですね」
「その辺は、藤和さんに任せようと思っていますので」
「藤和さんには、あくまでも商品の搬入、最終的な判断は五郎さんがした方がいいと思います。何かあれば責任を持つのは五郎さんになりますから」
「それを言われると、そうですよね……」
雪音さんの言葉に俺は苦笑いする。
「そういえば、桜は、もう寝ているんですか?」
「はい。五郎さんが帰宅するのを待っていましたけど睡魔には勝てなくて、寝ていました」
その雪音さんの言葉に思わず笑みが浮かんでしまう。
「どうかしましたか?」
「――いえ。こうして雪音さんと二人で桜の話をするのは久しぶりだと思いまして」
俺は雪音さんが差し出した湯飲みを手にして、注いでくれたお茶を飲みつつ答えた。
「そういえば、ここ最近は、ずっと忙しかったですものね」
俺の受け答えに雪音さんも答えてくる。
「そうですね。そういえば、雪音さ――」
そこまで言いかけたところで、居間にフーちゃんが入ってくるとコタツの中へと潜り込んでいく。
「どうかしましたか? 五郎さん」
「いま、フーちゃんはコタツの中に……」
話の腰を折られた俺は溜息交じりに応じる。
「さっき桜ちゃんと一緒にお布団に入っていたのに、もしかして五郎さんが気になってきたとか?」
「それはないですね」
いままでフーちゃんが俺にデレた事は一度たりともない。
「たぶん雪音さんの近くに居ればご飯でももらえると思ってきたんですよ」
「そうですかね?」
「間違いないです」
「ふふっ、それよりも私も異世界にもう一度行ってみたいです」
「異世界にですか? 雪音さんから異世界に行くって随分と積極的ですね」
「はい。結婚するとなったら両家との結婚ともなりますから、お爺ちゃんやお婆ちゃんと一緒に辺境伯様に挨拶しなくてはいけませんから」
「あ、そうですね」
そういえば、俺からの挨拶だけを考えていたが、雪音さんからうちの家の方への挨拶もあって然るべきだった。
まぁ、地球側の月山家の方に関しては、俺と桜以外の肉親はいないし、妹の安否も分かっていない状況だから挨拶するとしたら異世界側の方しかないからな。
「分かりました。辺境伯には自分から話しを通しておきます」
「はい。お願いします。それにしても、辺境伯へは何を手土産にしていいのか考えてしまいますね。下手に、文明の利器を渡してしまうとアレですから、珍しい消耗品何かを渡した方がいいですよね?」
「そうですね……」
正直、異世界人の知識は侮れないし、学習能力に関しても注意した方がいい。
そうなると……。
「食べ物がいいかも知れないですね」
「やっぱり、五郎さんも、そう思いますか?」
「はい。この際、羊羹とかも良いかもしれないですね」
「そうですね」
「わんっ!」
「――ど、どうした? フーちゃん」
「何かあったの? フーちゃん」
両家の結婚前の挨拶について雪音さんとい話をしていたところで、それを中断させるかのように、フーちゃんが吠えてきたように感じたが、きっとの気のせいだろう。
「わんっわんっ!」
俺の問いかけにこたえるつもりは無いのか、フーちゃんは、数回吠えるとコタツの中へと潜っていく。
「何と言うか、あれですね」
「フーちゃんは、かまってもらいたいのかも知れないですね」
横に座っていた雪音さんは立ち上がるとコタツの布団を持ち上げる。
するとコタツの中心で臥せって寝ているフーちゃんの姿が。
雪音さんは、フーちゃんを抱きかかえるとコタツの中に入る。
「何か疲れて寝ているみたいです」
「そうですか?」
子犬だと、電池が切れたように寝るから、たぶんそういうことだろう。
それにしても、雪音さんとせっかく話していたのに、フーちゃんの邪魔で……。
まぁ、フーちゃんは犬だから邪魔をしようとしたわけではないと思うが……。
機械音と共に、パソコンのOSが立ち上がる。
すると雪音さんが、お盆を手に居間に入ってくると、ちゃぶ台の上にお盆を置くと、「五郎さん、何をしているのですか?」と、興味深々と言った様子で話しかけてきた。
「今度、ルイズ辺境伯領の主都ブランデンに商店街を作ろうと思っているのですが、それのための勉強ですね」
「勉強ですか?」
「はい」
近づいてくる雪音さんは、俺の横に腰を下ろすとデスクトップのモニターをのぞき込んでくる。
「ギャルリ・ヴェロ=ドダですか。ここって、とっても綺麗な調和の取れたアーケード街ですよね……」
そう雪音さんが、俺がモニター画面上に映し出したフランスのパリ観光スポットの一つである場所を見て呟く。
「雪音さんは行った事があるんですか?」
「はい。大学生の時に一度だけ行きました。五郎さんも、海外で仕事していらっしゃたんですよね? 行ったことはないのですか?」
「――いえいえ、自分は、体調管理やコースの確認とか、通訳とか会社関係の付き合いとかパーティで殆ど時間が無かったですから」
「そうなのですか?」
「はい」
「それにしても、商店街ですか……。たしかに異世界でデパートなんて作ったら利権問題で大変な事になりそうですものね」
「はい。うまく既存の商人とやっていけないかと思っています」
「利益調整で大変な事になりそうですね」
「その辺は、藤和さんに任せようと思っていますので」
「藤和さんには、あくまでも商品の搬入、最終的な判断は五郎さんがした方がいいと思います。何かあれば責任を持つのは五郎さんになりますから」
「それを言われると、そうですよね……」
雪音さんの言葉に俺は苦笑いする。
「そういえば、桜は、もう寝ているんですか?」
「はい。五郎さんが帰宅するのを待っていましたけど睡魔には勝てなくて、寝ていました」
その雪音さんの言葉に思わず笑みが浮かんでしまう。
「どうかしましたか?」
「――いえ。こうして雪音さんと二人で桜の話をするのは久しぶりだと思いまして」
俺は雪音さんが差し出した湯飲みを手にして、注いでくれたお茶を飲みつつ答えた。
「そういえば、ここ最近は、ずっと忙しかったですものね」
俺の受け答えに雪音さんも答えてくる。
「そうですね。そういえば、雪音さ――」
そこまで言いかけたところで、居間にフーちゃんが入ってくるとコタツの中へと潜り込んでいく。
「どうかしましたか? 五郎さん」
「いま、フーちゃんはコタツの中に……」
話の腰を折られた俺は溜息交じりに応じる。
「さっき桜ちゃんと一緒にお布団に入っていたのに、もしかして五郎さんが気になってきたとか?」
「それはないですね」
いままでフーちゃんが俺にデレた事は一度たりともない。
「たぶん雪音さんの近くに居ればご飯でももらえると思ってきたんですよ」
「そうですかね?」
「間違いないです」
「ふふっ、それよりも私も異世界にもう一度行ってみたいです」
「異世界にですか? 雪音さんから異世界に行くって随分と積極的ですね」
「はい。結婚するとなったら両家との結婚ともなりますから、お爺ちゃんやお婆ちゃんと一緒に辺境伯様に挨拶しなくてはいけませんから」
「あ、そうですね」
そういえば、俺からの挨拶だけを考えていたが、雪音さんからうちの家の方への挨拶もあって然るべきだった。
まぁ、地球側の月山家の方に関しては、俺と桜以外の肉親はいないし、妹の安否も分かっていない状況だから挨拶するとしたら異世界側の方しかないからな。
「分かりました。辺境伯には自分から話しを通しておきます」
「はい。お願いします。それにしても、辺境伯へは何を手土産にしていいのか考えてしまいますね。下手に、文明の利器を渡してしまうとアレですから、珍しい消耗品何かを渡した方がいいですよね?」
「そうですね……」
正直、異世界人の知識は侮れないし、学習能力に関しても注意した方がいい。
そうなると……。
「食べ物がいいかも知れないですね」
「やっぱり、五郎さんも、そう思いますか?」
「はい。この際、羊羹とかも良いかもしれないですね」
「そうですね」
「わんっ!」
「――ど、どうした? フーちゃん」
「何かあったの? フーちゃん」
両家の結婚前の挨拶について雪音さんとい話をしていたところで、それを中断させるかのように、フーちゃんが吠えてきたように感じたが、きっとの気のせいだろう。
「わんっわんっ!」
俺の問いかけにこたえるつもりは無いのか、フーちゃんは、数回吠えるとコタツの中へと潜っていく。
「何と言うか、あれですね」
「フーちゃんは、かまってもらいたいのかも知れないですね」
横に座っていた雪音さんは立ち上がるとコタツの布団を持ち上げる。
するとコタツの中心で臥せって寝ているフーちゃんの姿が。
雪音さんは、フーちゃんを抱きかかえるとコタツの中に入る。
「何か疲れて寝ているみたいです」
「そうですか?」
子犬だと、電池が切れたように寝るから、たぶんそういうことだろう。
それにしても、雪音さんとせっかく話していたのに、フーちゃんの邪魔で……。
まぁ、フーちゃんは犬だから邪魔をしようとしたわけではないと思うが……。
166
お気に入りに追加
1,954
あなたにおすすめの小説
最強の英雄は幼馴染を守りたい
なつめ猫
ファンタジー
異世界に魔王を倒す勇者として間違えて召喚されてしまった桂木(かつらぎ)優斗(ゆうと)は、女神から力を渡される事もなく一般人として異世界アストリアに降り立つが、勇者召喚に失敗したリメイラール王国は、世界中からの糾弾に恐れ優斗を勇者として扱う事する。
そして勇者として戦うことを強要された優斗は、戦いの最中、自分と同じように巻き込まれて召喚されてきた幼馴染であり思い人の神楽坂(かぐらざか)都(みやこ)を目の前で、魔王軍四天王に殺されてしまい仇を取る為に、復讐を誓い長い年月をかけて戦う術を手に入れ魔王と黒幕である女神を倒す事に成功するが、その直後、次元の狭間へと呑み込まれてしまい意識を取り戻した先は、自身が異世界に召喚される前の現代日本であった。
どうやら異世界ではないらしいが、魔法やレベルがある世界になったようだ
ボケ猫
ファンタジー
日々、異世界などの妄想をする、アラフォーのテツ。
ある日突然、この世界のシステムが、魔法やレベルのある世界へと変化。
夢にまで見たシステムに大喜びのテツ。
そんな中、アラフォーのおっさんがレベルを上げながら家族とともに新しい世界を生きていく。
そして、世界変化の一因であろう異世界人の転移者との出会い。
新しい世界で、新たな出会い、関係を構築していこうとする物語・・・のはず・・。
おっさんの異世界建国記
なつめ猫
ファンタジー
中年冒険者エイジは、10年間異世界で暮らしていたが、仲間に裏切られ怪我をしてしまい膝の故障により、パーティを追放されてしまう。さらに冒険者ギルドから任された辺境開拓も依頼内容とは違っていたのであった。現地で、何気なく保護した獣人の美少女と幼女から頼られたエイジは、村を作り発展させていく。
【完結】異世界で小料理屋さんを自由気ままに営業する〜おっかなびっくり魔物ジビエ料理の数々〜
櫛田こころ
ファンタジー
料理人の人生を絶たれた。
和食料理人である女性の秋吉宏香(あきよしひろか)は、ひき逃げ事故に遭ったのだ。
命には関わらなかったが、生き甲斐となっていた料理人にとって大事な利き腕の神経が切れてしまい、不随までの重傷を負う。
さすがに勤め先を続けるわけにもいかず、辞めて公園で途方に暮れていると……女神に請われ、異世界転移をすることに。
腕の障害をリセットされたため、新たな料理人としての人生をスタートさせようとした時に、尾が二又に別れた猫が……ジビエに似た魔物を狩っていたところに遭遇。
料理人としての再スタートの機会を得た女性と、猟りの腕前はプロ級の猫又ぽい魔物との飯テロスローライフが始まる!!
おっかなびっくり料理の小料理屋さんの料理を召し上がれ?
解呪の魔法しか使えないからとSランクパーティーから追放された俺は、呪いをかけられていた美少女ドラゴンを拾って最強へと至る
早見羽流
ファンタジー
「ロイ・クノール。お前はもう用無しだ」
解呪の魔法しか使えない初心者冒険者の俺は、呪いの宝箱を解呪した途端にSランクパーティーから追放され、ダンジョンの最深部へと蹴り落とされてしまう。
そこで出会ったのは封印された邪龍。解呪の能力を使って邪龍の封印を解くと、なんとそいつは美少女の姿になり、契約を結んで欲しいと頼んできた。
彼女は元は世界を守護する守護龍で、英雄や女神の陰謀によって邪龍に堕とされ封印されていたという。契約を結んだ俺は彼女を救うため、守護龍を封印し世界を牛耳っている女神や英雄の血を引く王家に立ち向かうことを誓ったのだった。
(1話2500字程度、1章まで完結保証です)
捨て子の僕が公爵家の跡取り⁉~喋る聖剣とモフモフに助けられて波乱の人生を生きてます~
伽羅
ファンタジー
物心がついた頃から孤児院で育った僕は高熱を出して寝込んだ後で自分が転生者だと思い出した。そして10歳の時に孤児院で火事に遭遇する。もう駄目だ! と思った時に助けてくれたのは、不思議な聖剣だった。その聖剣が言うにはどうやら僕は公爵家の跡取りらしい。孤児院を逃げ出した僕は聖剣とモフモフに助けられながら生家を目指す。
転生幼女具現化スキルでハードな異世界生活
高梨
ファンタジー
ストレス社会、労働社会、希薄な社会、それに揉まれ石化した心で唯一の親友を守って私は死んだ……のだけれども、死後に閻魔に下されたのは願ってもない異世界転生の判決だった。
黒髪ロングのアメジストの眼をもつ美少女転生して、
接客業後遺症の無表情と接客業の武器営業スマイルと、勝手に進んで行く周りにゲンナリしながら彼女は異世界でくらします。考えてるのに最終的にめんどくさくなって突拍子もないことをしでかして周りに振り回されると同じくらい周りを振り回します。
中性パッツン氷帝と黒の『ナンでも?』できる少女の恋愛ファンタジー。平穏は遙か彼方の代物……この物語をどうぞ見届けてくださいませ。
無表情中性おかっぱ王子?、純粋培養王女、オカマ、下働き大好き系国王、考え過ぎて首を落としたまま過ごす医者、女装メイド男の娘。
猫耳獣人なんでもござれ……。
ほの暗い恋愛ありファンタジーの始まります。
R15タグのように15に収まる範囲の描写がありますご注意ください。
そして『ほの暗いです』
王太子様に婚約破棄されましたので、辺境の地でモフモフな動物達と幸せなスローライフをいたします。
なつめ猫
ファンタジー
公爵令嬢のエリーゼは、婚約者であるレオン王太子に婚約破棄を言い渡されてしまう。
二人は、一年後に、国を挙げての結婚を控えていたが、それが全て無駄に終わってしまう。
失意の内にエリーゼは、公爵家が管理している辺境の地へ引き篭もるようにして王都を去ってしまうのであった。
――そう、引き篭もるようにして……。
表向きは失意の内に辺境の地へ篭ったエリーゼは、多くの貴族から同情されていたが……。
じつは公爵令嬢のエリーゼは、本当は、貴族には向かない性格だった。
ギスギスしている貴族の社交の場が苦手だったエリーゼは、辺境の地で、モフモフな動物とスローライフを楽しむことにしたのだった。
ただ一つ、エリーゼには稀有な才能があり、それは王国で随一の回復魔法の使い手であり、唯一精霊に愛される存在であった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる