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第432話 大寒波襲来(13)
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「……」
「どうかしましたか?」
「――いえ。何でもありません。ただ――、貴族の方に対して偏見を持っていたようです。ゴロウ様のような方もいらっしゃるのだと――」
「そ、そうですか。それでは許してもらえますか?」
「はい! ただ一つだけ条件が……。あっ! 臣下の身で、厚かま――」
俺は彼女が謝罪しようとしたのを手で制する。
「ターナさんは、正確には俺の臣下ではなく祖父の臣下であり、俺はまだ正式にはルイズ辺境伯領を継ぐ事が決まってはいません。ですから臣下でもありませんから、一々、いまは身分に関しては気にしなくていいです。いいですね?」
「――あ、はい! 申し訳ありません」
なんとなく命令になってしまった事に若干、思うところはあったが……。
「――で、条件と言うのは何でしょうか?」
「あの! 私も! 副隊長と一緒に、ゴロウ様の護衛につきたいのです!」
「それは異世界に来ると言う事ですか?」
「はい!」
「まぁ、別に良いと思いますけど……、軍の人事に関してはノーマン辺境伯様の管轄ですよね? 俺が、口出しをすると、色々と問題があると思いますが?」
「分かっています。ただ、ゴロウ様が許可を出したという事をノーマン様が知ってくだされば――」
そうは言われてもな……。
ナイルさんの不在を、このターナという女性が支えたとなると二人を欠いた騎士団は大変な事になるのでは?
そういう思いが過ってしまうが。
どちらにしてもノーマン辺境伯は許可は出さないだろう。
なら、俺が許可を出すくらいは問題ないか。
「分かりました。――ただ、異世界での任務は大変ですよ?」
商品の品出しから接客に掃除と仕事の幅は広い。
一筋縄ではいかないだろう。
ナイルさんや、メディーナさんも慣れるまで時間がかかったからな。
「ありがとうございます。ゴロウ様」
「ただ無理を言わないでくださいね」
「分かっています。ノーマン様には上申するだけです」
「それならいいんですが……」
「ご安心ください!」
意気込んで返事をしてくるから余計に心配だ。
何とか誤解を解いて、店前に到着したのは1時間後。
すでに異世界に来てから4時間近くは経過している。
「ゴロウ様!」
店舗前に到着したところで、待っていたメディーナさんが啓礼をして挨拶をしてくる。
「お待たせしました」
「――いえ! 手が空かないとの事でしたので、何か重要な事があるという事は理解していました。そのため、多少時間がかかるという事は分かっていましたので、気にしないでください。それよりも……、どうして補佐官が一緒にいるのですか?」
ナイルさんを見たあと、ターナさんの方を見たメディーナさんが、そんな事を口にするが――、
「メディーナ弓兵士、何か問題でも?」
「――いえ! 何でもありません! 補佐官が動いているという事でしたら、重要な事が起きたと――」
「――そ、そうね。それよりも、ゴロウ様の護衛はきちんとできているのかしら? メディーナ」
「問題ありません!」
「そう。それではゴロウ様、ナイル副隊長をよろしくお願いします」
頭を下げてきた彼女に――、「分かりました」と、返事をしたあと、俺はナイルさんとメディーナさんを連れて店の中に入ったあとシャッターを閉めた。
「はぁ……」
「どうかしましたか? ゴロウ様」
「――いえ。色々とあったなと思いまして」
主にナイルさんとターナさんに関してのことだが、それは男女の問題に関することであって部外者である俺が口を出すことは間違っている。
黙っている方がいいだろう。
「それよりも、さっさと帰りましょう。二人とも魔力の回復はもう済んでいますか?」
これで、まだ! と、言われたら困ったところだが、二人の返事はすでに魔力充電は終わっているという事だったのでバックヤードを通り、扉を開けて外へと出た。
最初に扉から出ると、サクッ! と、言う音が足元から聞こえてきた。
そして、その音と共に俺は気が付く。
雪が視界いっぱいに降り注いでいることに。
「これは――」
「ゴロウ様、どうかされましたか?」
続いて、俺と手を繋いでいたナイルさんも扉を通りバックヤード側から出てくる。
「す、すごい……。こんなに雪が降っているなんて……」
「ナイルさん、メディーナさんを連れてきます」
「はい」
返事を帰してきたナイルさんから手を離しバックヤード側へと移動する。
「メディーナさん、手を」
「はい。お願いします」
彼女の手を握りバックヤード側の扉から地球側へと移動する。
そして、メディーナさんの手を引っ張りバックヤード側から引き出したところで、俺は扉を閉める。
「こ、これは!?」
「これは雪です。それよりも、随分と勢いよく雪が降っていますね」
「二人とも、とりあえず家に戻りましょう」
「はっ!」
「分かりました」
ナイルさんとメディーナさんを連れて母屋へ向かう。
そして玄関前に到着したところで戸を開けた。
「あ、五郎さん、お帰りなさい。随分と時間がかかったのですね」
もうすぐ深夜を過ぎようとしていたところなのに、雪音さんは寝ずに待っていてくれたようで――、むしろ大きな音を立てると寝ているかも知れない桜を起こすかも知れないと思って待っていてくれたのかも知れない。
「どうかしましたか?」
「――いえ。何でもありません。ただ――、貴族の方に対して偏見を持っていたようです。ゴロウ様のような方もいらっしゃるのだと――」
「そ、そうですか。それでは許してもらえますか?」
「はい! ただ一つだけ条件が……。あっ! 臣下の身で、厚かま――」
俺は彼女が謝罪しようとしたのを手で制する。
「ターナさんは、正確には俺の臣下ではなく祖父の臣下であり、俺はまだ正式にはルイズ辺境伯領を継ぐ事が決まってはいません。ですから臣下でもありませんから、一々、いまは身分に関しては気にしなくていいです。いいですね?」
「――あ、はい! 申し訳ありません」
なんとなく命令になってしまった事に若干、思うところはあったが……。
「――で、条件と言うのは何でしょうか?」
「あの! 私も! 副隊長と一緒に、ゴロウ様の護衛につきたいのです!」
「それは異世界に来ると言う事ですか?」
「はい!」
「まぁ、別に良いと思いますけど……、軍の人事に関してはノーマン辺境伯様の管轄ですよね? 俺が、口出しをすると、色々と問題があると思いますが?」
「分かっています。ただ、ゴロウ様が許可を出したという事をノーマン様が知ってくだされば――」
そうは言われてもな……。
ナイルさんの不在を、このターナという女性が支えたとなると二人を欠いた騎士団は大変な事になるのでは?
そういう思いが過ってしまうが。
どちらにしてもノーマン辺境伯は許可は出さないだろう。
なら、俺が許可を出すくらいは問題ないか。
「分かりました。――ただ、異世界での任務は大変ですよ?」
商品の品出しから接客に掃除と仕事の幅は広い。
一筋縄ではいかないだろう。
ナイルさんや、メディーナさんも慣れるまで時間がかかったからな。
「ありがとうございます。ゴロウ様」
「ただ無理を言わないでくださいね」
「分かっています。ノーマン様には上申するだけです」
「それならいいんですが……」
「ご安心ください!」
意気込んで返事をしてくるから余計に心配だ。
何とか誤解を解いて、店前に到着したのは1時間後。
すでに異世界に来てから4時間近くは経過している。
「ゴロウ様!」
店舗前に到着したところで、待っていたメディーナさんが啓礼をして挨拶をしてくる。
「お待たせしました」
「――いえ! 手が空かないとの事でしたので、何か重要な事があるという事は理解していました。そのため、多少時間がかかるという事は分かっていましたので、気にしないでください。それよりも……、どうして補佐官が一緒にいるのですか?」
ナイルさんを見たあと、ターナさんの方を見たメディーナさんが、そんな事を口にするが――、
「メディーナ弓兵士、何か問題でも?」
「――いえ! 何でもありません! 補佐官が動いているという事でしたら、重要な事が起きたと――」
「――そ、そうね。それよりも、ゴロウ様の護衛はきちんとできているのかしら? メディーナ」
「問題ありません!」
「そう。それではゴロウ様、ナイル副隊長をよろしくお願いします」
頭を下げてきた彼女に――、「分かりました」と、返事をしたあと、俺はナイルさんとメディーナさんを連れて店の中に入ったあとシャッターを閉めた。
「はぁ……」
「どうかしましたか? ゴロウ様」
「――いえ。色々とあったなと思いまして」
主にナイルさんとターナさんに関してのことだが、それは男女の問題に関することであって部外者である俺が口を出すことは間違っている。
黙っている方がいいだろう。
「それよりも、さっさと帰りましょう。二人とも魔力の回復はもう済んでいますか?」
これで、まだ! と、言われたら困ったところだが、二人の返事はすでに魔力充電は終わっているという事だったのでバックヤードを通り、扉を開けて外へと出た。
最初に扉から出ると、サクッ! と、言う音が足元から聞こえてきた。
そして、その音と共に俺は気が付く。
雪が視界いっぱいに降り注いでいることに。
「これは――」
「ゴロウ様、どうかされましたか?」
続いて、俺と手を繋いでいたナイルさんも扉を通りバックヤード側から出てくる。
「す、すごい……。こんなに雪が降っているなんて……」
「ナイルさん、メディーナさんを連れてきます」
「はい」
返事を帰してきたナイルさんから手を離しバックヤード側へと移動する。
「メディーナさん、手を」
「はい。お願いします」
彼女の手を握りバックヤード側の扉から地球側へと移動する。
そして、メディーナさんの手を引っ張りバックヤード側から引き出したところで、俺は扉を閉める。
「こ、これは!?」
「これは雪です。それよりも、随分と勢いよく雪が降っていますね」
「二人とも、とりあえず家に戻りましょう」
「はっ!」
「分かりました」
ナイルさんとメディーナさんを連れて母屋へ向かう。
そして玄関前に到着したところで戸を開けた。
「あ、五郎さん、お帰りなさい。随分と時間がかかったのですね」
もうすぐ深夜を過ぎようとしていたところなのに、雪音さんは寝ずに待っていてくれたようで――、むしろ大きな音を立てると寝ているかも知れない桜を起こすかも知れないと思って待っていてくれたのかも知れない。
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