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第422話 大寒波襲来(3)
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「いえ。特には何も――。それよりも、もう夜も遅いですから寝た方がいいのでは? 魔力が枯渇しなかったと言っても、それなりの魔力を消費していますよね?」
「そうですね……」
「それか一度、ルイズ辺境伯領に行きますか?」
「……それが良いかも知れないですね」
「そうですか。――ではナイルさんが戻ってきたら一緒に行きますか」
「はい。それでは、外行きの服に着替えてきます」
「分かりました」
メディーナさんは頭を下げると、メディーナさんとナイルさんの為に当てがっている客間の一室に入っていく。
俺は、珍しく一緒に付いてくるフーちゃんと共に、玄関から台所へと向かう。
台所では、雪音さんが料理をしていた。
夕食は食べたばかりだというのに……。
「雪音さん」
「はい。話は聞いていました。異世界に行って魔力の回復をしてくるのですよね?」
俺は頷く。
「それで雪音さんは……ローストポークを作っているんですか?」
「はい。フーちゃんは、一杯食べますから。それに根室さんから、たくさん豚肉をもらいましたし、この前、血抜きしたイノシシの肉も何十キロと余っていますから」
「そういえば、そんなことが……」
あったよなと――、思い出しつつ、
「分かりました。それでは――」
俺はコタツで寝ている桜を見てから、俺の肩の上に乗っているフーちゃんを床に降ろす。
「桜とフーちゃんをお願いします」
「はい! 任されました。それと藤和さんには、今回の納品分は現金で支払いをしておきました」
「了解です。それと……」
一瞬、俺は、言葉を区切る。
そして、軽く咳をしたあと、
「雪音さん」
「はい?」
料理をしていた雪音さんが手を止めて、振り返ってくる。
俺の声のトーンが少し変わったことに気が付いたのかも知れない。
「どうかしましたか?」
「いえ。じつは……、藤和さんが来ていた時に話していた内容のことですが……」
そこまで言ったところで、雪音さんは察してくれたようで、自身の手を洗いタオルで拭くと――、
「五郎さん。とりあえず座ってください。お茶でも淹れますから」
そう話を切り出してきた。
雪音さんは、テキパキとお茶の準備をすると湯飲みを二つ、台所に置かれているテーブルの上に置くと、椅子に座るようにと促してくる。
勧められたまま、椅子に座ったところで、湯飲みのお茶を淹れた雪音さんもテーブル席に座る。
「それで、五郎さん。お話というのは何でしょうか?」
真剣な表情で聞いてくる雪音さん。
俺は頷き――、
「結婚式の話です。時期についてというか、プロポーズも結納も済ませていないのに、申し訳なく思っています。寝耳に水だと思っているとおもいますが……」
一瞬の沈黙。
相手に話をバトンタッチしたことで生まれた空白。
それは短い時間ではあるが、体感的には、それはそれは長いモノで――、俺は間を取り繕う為に、雪音さんが淹れてくれたお茶を啜る。
「寝耳に水というか、いつかはそういう時が来るとは思っていました。ただ……意外だったのは――」
「意外だったのは?」
「えっと……、エルム王国側の意思を介在させない点が、気になりました」
「それって、ルイーズ王女殿下の事ですか?」
「はい。異世界側と交流していく上で、こちらの日本側と異世界側を最優先にするとしましたら、相手の顔を立てるという意味合いも込めてエルム王国側からの要望を先に確認するのが当然だと思いましたので……。五郎さんの結婚に関しては、エルム王国側からは何も言ってきてはいないのですか?」
「特に何も言って来てはいないですね……」
「そうですか……。もしかしてルイーズ王女殿下は王宮側から、あまり良いように思われてはいないのかも知れないですね」
「それは何度も聞いています。現国王の庶子だと」
「そういうことですか……」
「何か?」
「いえ。ただ、それでも政略結婚という側面が今回は強いです。そう考えますと、内心ではどう思っていようと対外的にキチンとした体裁を整えるのが必要になってくると思います。そうなると、それなりに準備期間が必要になってきます」
「……それはそうですね」
雪音さんの言う通り、ルイーズ王女殿下は、庶子だとしても、貴族に侮られている存在としても、きちんと国を挙げて祝うのが国として王宮としての在り方だろう。
だが、そういうことは一切なかった。
むしろ、ルイーズ王女殿下を異世界側――、地球側の迎賓館に受け入れて以降、エルム王国側からは殆ど接触がないし、何の要求もない。
「いくら五郎さんと婚約をしたと言っても、普通なら王宮側からは接触してくるのが普通だと思いますのに……、異世界の王宮側は分からないことだらけですね」
「そうですね」
「もしかしたら何か考えがあって、故意的に接触してこないだけの可能性もありますから、断定はできませんけど……、一番可能性としてありそうなのが貴族の反感を買わないために、口出しをせずに五郎さんに全てを一任してきている可能性がありそうです」
「それって、何かあった時に、全ての責任を俺に押し付けるとか?」
「それが一番近いかも知れないです」
「ですよね……」
「そうですね……」
「それか一度、ルイズ辺境伯領に行きますか?」
「……それが良いかも知れないですね」
「そうですか。――ではナイルさんが戻ってきたら一緒に行きますか」
「はい。それでは、外行きの服に着替えてきます」
「分かりました」
メディーナさんは頭を下げると、メディーナさんとナイルさんの為に当てがっている客間の一室に入っていく。
俺は、珍しく一緒に付いてくるフーちゃんと共に、玄関から台所へと向かう。
台所では、雪音さんが料理をしていた。
夕食は食べたばかりだというのに……。
「雪音さん」
「はい。話は聞いていました。異世界に行って魔力の回復をしてくるのですよね?」
俺は頷く。
「それで雪音さんは……ローストポークを作っているんですか?」
「はい。フーちゃんは、一杯食べますから。それに根室さんから、たくさん豚肉をもらいましたし、この前、血抜きしたイノシシの肉も何十キロと余っていますから」
「そういえば、そんなことが……」
あったよなと――、思い出しつつ、
「分かりました。それでは――」
俺はコタツで寝ている桜を見てから、俺の肩の上に乗っているフーちゃんを床に降ろす。
「桜とフーちゃんをお願いします」
「はい! 任されました。それと藤和さんには、今回の納品分は現金で支払いをしておきました」
「了解です。それと……」
一瞬、俺は、言葉を区切る。
そして、軽く咳をしたあと、
「雪音さん」
「はい?」
料理をしていた雪音さんが手を止めて、振り返ってくる。
俺の声のトーンが少し変わったことに気が付いたのかも知れない。
「どうかしましたか?」
「いえ。じつは……、藤和さんが来ていた時に話していた内容のことですが……」
そこまで言ったところで、雪音さんは察してくれたようで、自身の手を洗いタオルで拭くと――、
「五郎さん。とりあえず座ってください。お茶でも淹れますから」
そう話を切り出してきた。
雪音さんは、テキパキとお茶の準備をすると湯飲みを二つ、台所に置かれているテーブルの上に置くと、椅子に座るようにと促してくる。
勧められたまま、椅子に座ったところで、湯飲みのお茶を淹れた雪音さんもテーブル席に座る。
「それで、五郎さん。お話というのは何でしょうか?」
真剣な表情で聞いてくる雪音さん。
俺は頷き――、
「結婚式の話です。時期についてというか、プロポーズも結納も済ませていないのに、申し訳なく思っています。寝耳に水だと思っているとおもいますが……」
一瞬の沈黙。
相手に話をバトンタッチしたことで生まれた空白。
それは短い時間ではあるが、体感的には、それはそれは長いモノで――、俺は間を取り繕う為に、雪音さんが淹れてくれたお茶を啜る。
「寝耳に水というか、いつかはそういう時が来るとは思っていました。ただ……意外だったのは――」
「意外だったのは?」
「えっと……、エルム王国側の意思を介在させない点が、気になりました」
「それって、ルイーズ王女殿下の事ですか?」
「はい。異世界側と交流していく上で、こちらの日本側と異世界側を最優先にするとしましたら、相手の顔を立てるという意味合いも込めてエルム王国側からの要望を先に確認するのが当然だと思いましたので……。五郎さんの結婚に関しては、エルム王国側からは何も言ってきてはいないのですか?」
「特に何も言って来てはいないですね……」
「そうですか……。もしかしてルイーズ王女殿下は王宮側から、あまり良いように思われてはいないのかも知れないですね」
「それは何度も聞いています。現国王の庶子だと」
「そういうことですか……」
「何か?」
「いえ。ただ、それでも政略結婚という側面が今回は強いです。そう考えますと、内心ではどう思っていようと対外的にキチンとした体裁を整えるのが必要になってくると思います。そうなると、それなりに準備期間が必要になってきます」
「……それはそうですね」
雪音さんの言う通り、ルイーズ王女殿下は、庶子だとしても、貴族に侮られている存在としても、きちんと国を挙げて祝うのが国として王宮としての在り方だろう。
だが、そういうことは一切なかった。
むしろ、ルイーズ王女殿下を異世界側――、地球側の迎賓館に受け入れて以降、エルム王国側からは殆ど接触がないし、何の要求もない。
「いくら五郎さんと婚約をしたと言っても、普通なら王宮側からは接触してくるのが普通だと思いますのに……、異世界の王宮側は分からないことだらけですね」
「そうですね」
「もしかしたら何か考えがあって、故意的に接触してこないだけの可能性もありますから、断定はできませんけど……、一番可能性としてありそうなのが貴族の反感を買わないために、口出しをせずに五郎さんに全てを一任してきている可能性がありそうです」
「それって、何かあった時に、全ての責任を俺に押し付けるとか?」
「それが一番近いかも知れないです」
「ですよね……」
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