田舎の雑貨店~姪っ子とのスローライフ~

なつめ猫

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第413話 男性には秘密の会話

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 月山雑貨店の駐車場に車を停めたあと、俺達は車から降りる。
 先に運転席から降りたところで、メディーナさんとアリアさんが、車の中で会話をしている。
 そして、何度かメディーナさんが頷いたところで車から降りてきた。
 
「ゴロウ様」
「どうかしましたか?」
「じつは、アリアからユキネ様にお願いしたい事があると」
「雪音さんに?」
「はい」
 
 そのメディーナさんの言葉に一瞬思考し――、
 
「分かりました。雪音さんを連れてきますので、少し待っていてもらえますか?」
「それでは、そのようにアリアには伝えておきます」
「お願いします」
 
 俺に頼める内容なら、わざわざ雪音さんを指定してはこない。
 それなのに雪音さんと話し合いの場を持ちたいと言う事は、雪音さんじゃないと話せない内容があるということだ。
 
 母屋に戻り、玄関の戸を開ける。
 
「五郎さん。どうかしましたか? もう、ルイーズ王女殿下の方の用事は終わったのですか?」
 
 トタトタと小走りで玄関まで来た雪音さんが話しかけてきた。
 丁度いい。
 
「いえ。じつは、アリアさんが雪音さんに話したい事があるらしく、少し時間とか大丈夫ですか?」
「私にですか?」
 
 首を傾げる雪音さん。
 どうやら彼女にも理由は分からないらしい。
 
「とくに何かアポとかは取っていませんけど……」
 
 雪音さんは、呟きながらブーツを履いて玄関から出る。
 二人で店先の駐車場に到着したところで、メディーナさんだけでなくアリアさんも車から降りており、俺達の姿を確認したところで近寄ってきた。
 
「ユキネ様。お忙しいところを申し訳ありません」
 
 アリアさんが頭を下げてくる。
 
「いえ。お気になさらず。それよりも、何か問題でもありましたか?」
「えっと……、それは――」
 
 困ったような表情で、アリアさんが俺の方を見てくる。
 どうやら、この場に俺が居るのは好ましくないようだ。
 
「雪音さん。自分は、店の中に居るので何かあったら言ってください」
 
 とりあえず、俺は場を離れることにして店の中へと入る。
 すると、店番をしていた根室さんが、俺の方を見てくる、
 
「月山さん、どうかしたのですか? さっきから、異世界から来られた方が、店内を見てきていましたけど……」
「さあ? 俺も、よくは知らないんですが、店先に到着したところで、雪音さんと会話をしたいと言われてしまって、ハブられました」
「まぁ――、そうなのですか?」
「ですね」
 
 俺は頷く。
 事情は知らないが、メディーナさんや雪音さんと言った女性陣同士で話が出来るのだから、男の俺には聞かれなくない事なのだろう。
 そう邪推してしまうが――、
 
「あ、そういえば、問屋の方から連絡がありました。午後に、店に納品に来られるとのことです」
「そうですか」
 
 昨日の今日だというのに、随分と対応が早いな。
 まぁ、納品の速さに関しては、そのフットワークの軽さが毎回助かってはいるが。
 
「それでは、午後ですね」
「はい。午後だと言っていました」
 
 根室さんと会話をしながら店内を見渡せば、客は疎ら。
 先日の大入りの時とは雲泥の差だ。
 
「あの! 五郎さん!」
 
 一人考えていると、雪音さんが店内に入ってくると俺の名前を呼んできた。
 
「はい?」
「今日って、ホームセンターに行くことって出来ますか?」
「今日は納品日だと藤和さんから連絡があったみたいですよ?」
「はい。それは重々承知していますけど、車の運転できる人は五郎さんしかいませんから」
 
 ――ん? つまり、どこか遠くに行きたいと?
 しかも、会話の流れからアリアさんからの要請だと考えるのが自然だろう。
 
「ホームセンターに何か買いにいくんですか?」
「えっと……その………」
 
 俺の質問に困った表情になる雪音さん。
 その様子からして――、
 
「それって男の俺には言い難いことですか?」
「そうです」
「そうですか」
 
 それだけで何となく察することが出来た。
 男の俺に説明できないが、女性同士なら話を共有できる内容。
 それは――、一つしか思いつかない。
 
「分かりました。それではホームセンターまでの車の運転は任せてください」
「ありがとうございます。それでは、アリアさんに伝えておきますので、ゴロウ様は少し待っていてください」
 
 雪音さんが店から出ていきアリアさんへと話しかけているのを確認しつつ――、
 
「根室さん。自分は今日は納品に立ち会えないのでナイルさんと共に立ち会ってもらえますか?」
「分かりました」
「あの! 五郎さん」
 
 根室さんに納品の立ち会いをお願いしたところで戻ってきた雪音さん。
 
「すぐに出発することって出来ますか?」
「出来ますが……」
「それでは、私は着替えてきますので、待っていてください」
 
 小走りで店の外へ出ていく雪音さん。
 どうやら母屋に戻って準備をするらしい。
 俺は雪音さんが戻ってくる間に、車のエンジンをかけて出発する準備を整える。
 エンジンをかけたあとは、ホームセンターの場所を検索して一番近い場所をカーナビに表示する。
 
「あのゴロウ様」
 
 俺が車に乗り込んだあと、すぐに車内に入ってきたメディーナさんとアリアさん。
 その片割れであるアリアさんが話しかけてきた。
 
 
 
 
 
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