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第410話 王女殿下驚く。
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「……」
「ゴロウ様?」
「申し訳ありません。ルイーズ王女殿下」
俺の返事に、頬を膨らますルイーズ王女殿下。
そして、ルイーズ王女殿下の――、彼女の後ろに立っているエメラスさんは呆れた表情を俺に見せるが――、その表情をルイーズ王女殿下は見ることはない。
「申し訳ありません。まだ、コレは極秘事項ですが、ルイズ辺境伯領を将来は自分が継ぐ予定となりましたので、まだ結婚も済んでいない王女殿下を名前で呼ぶ事は憚られることをご理解ください」
俺の言葉にルイーズ王女殿下が、きょとんとした表情を見せる。
そして、エメラスさんの方を見た。
「ねえ? エメラス」
「はい。ルイーズ様」
「今、ゴロウ様は、ルイズ辺境伯領を将来は治める為に貴族になられると言っていたような……」
「はい。私も確かに聞きました。間違いではないようです」
「そ、そうよね……。あの、ゴロウ様?」
エメラスさんから、俺へと視線を戻したルイーズ王女殿下が、俺に話しかけてくる。
「何でしょうか?」
「それってルイズ辺境伯領を治めると言う事でよろしいのですよね?」
「そうなりますね」
「それって、エルム王国の貴族になるという……」
「そうですね。まぁ、こちらの世界との二足の草鞋という事になりますが」
「そう……なのね……」
「何か問題でも?」
「――いえ。そんなことは……」
何とも言えない表情で、それだけを呟き無言になってしまうルイーズ王女殿下。
俺は、どうしたものかとエメラスさんの方を見ると、彼女は――、
「ゴロウ様。ルイーズ様の身分は庶子と言う事もあり、とても不安定です。それは、ご存知でいらっしゃると思いますが?」
そうエメラスさんは話を切り出してくる。
「それは……。ただ、自分のところに嫁ぐと言う事が決まってからは、王家が後ろ盾になっているのでは?」
「ゴロウ様、それはあくまでも詭弁です。何よりも、ゴロウ様は此方の世界の貴族。向こうでは、ルイズ辺境伯領のお孫ではありましたが、そこには貴族籍というモノが付与されておりませんでした。だからこそ、王家はルイーズ様を嫁がせる事に対して許可を出したのです。自国の貴族ではなく他国の貴族に嫁がせることで、取引きの――交渉の材料にすること――、そして自国内の貴族には、庶子には貴族籍を与えないという名目も作れたのです」
「それって、つまり俺の所に嫁ぐから王家の駒としては利用はするけど貴族籍は他国に嫁ぐから要らないよな? って、事ですか?」
「そうなります。ですから、ルイーズ様は、名目上の王家の一員ではありますが王宮側が切ろうと思えば、いつでも切れるという不安定な御立場でもあるのです。何よりルイーズ様が生まれ育った村でも、そのような扱いですから、庶子が暮らしていた村という事で、村への当たりは強いです」
「なるほど……」
思っていたよりも貴族の身分というのは、大きな影響力があるモノなんだな。
だから、貴族位を俺に与えるって事で懐柔しようとしてきた訳か。
俺は、蹴ったが――。
「ルイーズ様。嫁ぎ先であるゴロウ様がルイズ辺境伯領の領主になられると言う事は、伯爵位も同時に継承されるということになります。本当に、おめでとうございます」
「ええ、そうね。これで私が暮らしていた村も周りの村から忌避される事もなくなりますものね」
「はい。それにしても、ゴロウ様」
「なんですか? エメラスさん」
「ゴロウ様は、辺境伯領を継がれることは、もうノーマン様には?」
「伝えてありますし、許可も取っています。王家からの許可も下りると思っています。それなりの品物も献上する予定ですから」
「なるほど……、流石はゴロウ様ですね」
エメラスさんは何とも頷きながら、俺を褒めてくる。
「そうですか?」
「そうです。このような大きな建物――、3人しか暮らしていないのに用意頂いているのですから。それに何よりも、家電製品という魔道具を惜しげもなく用意してくださっていますから。ゴロウ様ほどの財力があるのでしたら、王家が理解を示すという可能性も高そうです」
「そうですね。なるべく出来るようにします」
「ねえ? エメラス」
「はい。どうかされましたか? ルイーズ様」
「そうすると、私って伯爵夫人になるのかしら?」
「はい。ただ、正妻は――」
「あ……」
途端にルイーズ王女殿下の表情が曇るが、正妻は雪音さんで決定しているので、そこの序列は変更するつもりはない。
「大丈夫です。ルイーズ様。ゴロウ様が、伯爵位を得ると言う事は、第二夫人であっても伯爵夫人ですから」
「そうよね」
「はい!」
エメラスさんが落ち込んだ表情のルイーズ王女殿下を励ますと、「それで、ゴロウ様」と、俺に話しかけてくる。
「はい?」
「本日、来られた要件というのは伯爵位と辺境伯領を継がれるという報告だったのですか?」
「いえ。それは、本題ではないですね」
「――え? これほどの大事な話が本題ではないのですか?」
「そうですね」
そもそも、俺はルイズ辺境伯領を継ぐことを報告する為に王女殿下に会いに来たわけではないし。
「ゴロウ様?」
「申し訳ありません。ルイーズ王女殿下」
俺の返事に、頬を膨らますルイーズ王女殿下。
そして、ルイーズ王女殿下の――、彼女の後ろに立っているエメラスさんは呆れた表情を俺に見せるが――、その表情をルイーズ王女殿下は見ることはない。
「申し訳ありません。まだ、コレは極秘事項ですが、ルイズ辺境伯領を将来は自分が継ぐ予定となりましたので、まだ結婚も済んでいない王女殿下を名前で呼ぶ事は憚られることをご理解ください」
俺の言葉にルイーズ王女殿下が、きょとんとした表情を見せる。
そして、エメラスさんの方を見た。
「ねえ? エメラス」
「はい。ルイーズ様」
「今、ゴロウ様は、ルイズ辺境伯領を将来は治める為に貴族になられると言っていたような……」
「はい。私も確かに聞きました。間違いではないようです」
「そ、そうよね……。あの、ゴロウ様?」
エメラスさんから、俺へと視線を戻したルイーズ王女殿下が、俺に話しかけてくる。
「何でしょうか?」
「それってルイズ辺境伯領を治めると言う事でよろしいのですよね?」
「そうなりますね」
「それって、エルム王国の貴族になるという……」
「そうですね。まぁ、こちらの世界との二足の草鞋という事になりますが」
「そう……なのね……」
「何か問題でも?」
「――いえ。そんなことは……」
何とも言えない表情で、それだけを呟き無言になってしまうルイーズ王女殿下。
俺は、どうしたものかとエメラスさんの方を見ると、彼女は――、
「ゴロウ様。ルイーズ様の身分は庶子と言う事もあり、とても不安定です。それは、ご存知でいらっしゃると思いますが?」
そうエメラスさんは話を切り出してくる。
「それは……。ただ、自分のところに嫁ぐと言う事が決まってからは、王家が後ろ盾になっているのでは?」
「ゴロウ様、それはあくまでも詭弁です。何よりも、ゴロウ様は此方の世界の貴族。向こうでは、ルイズ辺境伯領のお孫ではありましたが、そこには貴族籍というモノが付与されておりませんでした。だからこそ、王家はルイーズ様を嫁がせる事に対して許可を出したのです。自国の貴族ではなく他国の貴族に嫁がせることで、取引きの――交渉の材料にすること――、そして自国内の貴族には、庶子には貴族籍を与えないという名目も作れたのです」
「それって、つまり俺の所に嫁ぐから王家の駒としては利用はするけど貴族籍は他国に嫁ぐから要らないよな? って、事ですか?」
「そうなります。ですから、ルイーズ様は、名目上の王家の一員ではありますが王宮側が切ろうと思えば、いつでも切れるという不安定な御立場でもあるのです。何よりルイーズ様が生まれ育った村でも、そのような扱いですから、庶子が暮らしていた村という事で、村への当たりは強いです」
「なるほど……」
思っていたよりも貴族の身分というのは、大きな影響力があるモノなんだな。
だから、貴族位を俺に与えるって事で懐柔しようとしてきた訳か。
俺は、蹴ったが――。
「ルイーズ様。嫁ぎ先であるゴロウ様がルイズ辺境伯領の領主になられると言う事は、伯爵位も同時に継承されるということになります。本当に、おめでとうございます」
「ええ、そうね。これで私が暮らしていた村も周りの村から忌避される事もなくなりますものね」
「はい。それにしても、ゴロウ様」
「なんですか? エメラスさん」
「ゴロウ様は、辺境伯領を継がれることは、もうノーマン様には?」
「伝えてありますし、許可も取っています。王家からの許可も下りると思っています。それなりの品物も献上する予定ですから」
「なるほど……、流石はゴロウ様ですね」
エメラスさんは何とも頷きながら、俺を褒めてくる。
「そうですか?」
「そうです。このような大きな建物――、3人しか暮らしていないのに用意頂いているのですから。それに何よりも、家電製品という魔道具を惜しげもなく用意してくださっていますから。ゴロウ様ほどの財力があるのでしたら、王家が理解を示すという可能性も高そうです」
「そうですね。なるべく出来るようにします」
「ねえ? エメラス」
「はい。どうかされましたか? ルイーズ様」
「そうすると、私って伯爵夫人になるのかしら?」
「はい。ただ、正妻は――」
「あ……」
途端にルイーズ王女殿下の表情が曇るが、正妻は雪音さんで決定しているので、そこの序列は変更するつもりはない。
「大丈夫です。ルイーズ様。ゴロウ様が、伯爵位を得ると言う事は、第二夫人であっても伯爵夫人ですから」
「そうよね」
「はい!」
エメラスさんが落ち込んだ表情のルイーズ王女殿下を励ますと、「それで、ゴロウ様」と、俺に話しかけてくる。
「はい?」
「本日、来られた要件というのは伯爵位と辺境伯領を継がれるという報告だったのですか?」
「いえ。それは、本題ではないですね」
「――え? これほどの大事な話が本題ではないのですか?」
「そうですね」
そもそも、俺はルイズ辺境伯領を継ぐことを報告する為に王女殿下に会いに来たわけではないし。
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