409 / 437
第409話 王女殿下との対話
しおりを挟む
――翌日、店を開けたあと根室さんとナイルさんに店のことを任せたあと、俺はエルム王国の迎賓館兼大使館へ向けて車を走らせていた。
「ゴロウ様。どうして、私が一緒に同行を?」
不思議そうな表情で、助手席に座っていたメディーナさんが話しかけてくる。
「それは男手が必要ですから」
「男手ですか? 私も騎士団に所属している身、大抵の男には遅れは取らないと自負しておりますが?」
「まぁ、そうなんですけどね。店を経営していく上で、男性の手というか存在というのは、必ず必要なんですよ。特に日本ではね」
店を経営していくだけでない。
どこの会社であってもクレーム担当者に男が多く起用されているのは、男の方が仕事に対しては役職や抱えている責任感というのが古来より徹底的と言っていいほど周知されているからだ。
そして、男の姿が目に入るだけで問題を起こそうとする輩を抑止する力にもなる。
「日本では必要なのですか?」
「まぁ、そうですね」
「なるほど……。分かりました。それでは、副隊長に代わりましてゴロウ様の護衛を務めあげます!」
「そこまで気負わなくて大丈夫ですよ」
俺は車のギアを2速に変えて、山の上の――、迎賓館へと通じる道を上がっていく。
「それにしても以前から思っておりましたが、この車という乗りモノは馬よりも早く走れるのですね」
「そうですね」
俺はメディーナさんの質問に頷きながら――、
「このワゴンRに搭載されている660CCエンジンは直列3気筒の直噴ターボで64馬力ですから……、馬よりも遥かに馬力はありますね」
「ゴロウ様。馬力というのは?」
「ああ。えっと……一馬力で馬一頭分という意味です。64馬力だと、馬に換算すると64頭分になりますね」
「――こ、この小さな車という乗りモノは、馬だと64頭分の力を有していると言う事ですか!?」
「そうですね」
俺は頷きつつ、コーナーを走り抜ける。
そうして、しばらく山道を走っていると道幅が広くなると同時に何十台も車が停められるスペースが確保されている駐車場へと到着する。
車から降りると、駐車場のスペースの隅の方に、枯れ葉が集められているのが目に入るし、駐車場は綺麗に片付けられていた。
「ここがエルム王国の大使館ですか」
メディーナさんが、目の前に聳え立つ建物を見上げながら感慨深そうに呟く。
おそらく、俺達が普段住んでいる月山雑貨店の裏手の母屋と比較しているのだろう。
きっとそうだ! たぶん、間違いない!
「そうなりますね。とりあえず、ここで見物していても何も始まりませんから、王女殿下に会いにいきましょうか」
「はい。それにしても――」
きょろきょろと周囲を見渡すメディーナさん。
「どうかしましたか?」
「――いえ。結界が……」
「結界?」
「いえ。何でもありません。それよりも、早く伺いましょう」
「そうですね」
俺は、頷き迎賓館の正面ドアの前に立ち、チャイムを鳴らす。
少し大きめの音が鳴り――、1分ほどが経過したところでガチャリと言う鍵を開ける音と共に両開きの扉が内側へと開く。
「お久しぶりでございます。ゴロウ様」
頭を下げて出迎えてきたのは、アリアさん。
辺境伯邸で働いていたメイドさんで、いまはルイーズ王女殿下の身の周りの世話をしている女性。
「王女殿下に会いに来たんだが、大丈夫ですか?」
一応、事前連絡をしていたが、とりあえず確認のために聞くが――、
「はい。すでにルイーズ様がお待ちしています。エメラス様と共に、お待ちしています」
「そうですか」
「それでは案内させて頂きます」
頭を上げたアリアさんが、2階へと続く階段の方へと歩きだす。
俺とメディーナさんは、背中を向けて歩いているアリアさんの後を付いていく。
「メディーナさんは、アリアさんとは面識はないんですか?」
「辺境伯軍の中でも副隊長以上でしたら報告のために辺境伯邸何度も行っていますから、その際に面識が出来ることはありますが、基本的に伝令役程度ですと、大勢いるメイドと顔見知りになる事は限り無く低いです」
「なるほどな」
階段を上がっていき客間の扉の前に到着する。
――コンコン
「アリアです。ゴロウ・ツキヤマ様が来られました」
「入ってもらって」
「はい。ゴロウ様、どうぞ。お付きの方は、廊下でお待ちください」
「分かりました。ゴロウ様、私は外で待機しております」
俺は無言で頷き客間に入る。
室内の調度品は以前に来た時と代わってはいない。
まぁ、そもそも調度品を買える手段はない訳だし、お金も渡してないからな。
俺は視線をルイーズ王女殿下へと向ける。
彼女は、黒髪に黒眼の日本人らしい見た目でハッ! とするほどの美少女。
普通にアイドルとしても通用するほど、そのスペックは高い。
そして、そんなルイーズ王女殿下の後ろに立っているのは、エメラス・フォン・クラウス。
クラウス侯爵家の御令嬢であり騎士。
ルイーズ王女殿下の護衛と言う事で日本に一緒にやってきた――、これまた美少女である。
「お久しぶりです。ルイーズ王女殿下」
「そのような堅苦しい挨拶は不要だと以前にお伝えいたしましたわ。ルイーズと、お呼びくださいませ」
「ゴロウ様。どうして、私が一緒に同行を?」
不思議そうな表情で、助手席に座っていたメディーナさんが話しかけてくる。
「それは男手が必要ですから」
「男手ですか? 私も騎士団に所属している身、大抵の男には遅れは取らないと自負しておりますが?」
「まぁ、そうなんですけどね。店を経営していく上で、男性の手というか存在というのは、必ず必要なんですよ。特に日本ではね」
店を経営していくだけでない。
どこの会社であってもクレーム担当者に男が多く起用されているのは、男の方が仕事に対しては役職や抱えている責任感というのが古来より徹底的と言っていいほど周知されているからだ。
そして、男の姿が目に入るだけで問題を起こそうとする輩を抑止する力にもなる。
「日本では必要なのですか?」
「まぁ、そうですね」
「なるほど……。分かりました。それでは、副隊長に代わりましてゴロウ様の護衛を務めあげます!」
「そこまで気負わなくて大丈夫ですよ」
俺は車のギアを2速に変えて、山の上の――、迎賓館へと通じる道を上がっていく。
「それにしても以前から思っておりましたが、この車という乗りモノは馬よりも早く走れるのですね」
「そうですね」
俺はメディーナさんの質問に頷きながら――、
「このワゴンRに搭載されている660CCエンジンは直列3気筒の直噴ターボで64馬力ですから……、馬よりも遥かに馬力はありますね」
「ゴロウ様。馬力というのは?」
「ああ。えっと……一馬力で馬一頭分という意味です。64馬力だと、馬に換算すると64頭分になりますね」
「――こ、この小さな車という乗りモノは、馬だと64頭分の力を有していると言う事ですか!?」
「そうですね」
俺は頷きつつ、コーナーを走り抜ける。
そうして、しばらく山道を走っていると道幅が広くなると同時に何十台も車が停められるスペースが確保されている駐車場へと到着する。
車から降りると、駐車場のスペースの隅の方に、枯れ葉が集められているのが目に入るし、駐車場は綺麗に片付けられていた。
「ここがエルム王国の大使館ですか」
メディーナさんが、目の前に聳え立つ建物を見上げながら感慨深そうに呟く。
おそらく、俺達が普段住んでいる月山雑貨店の裏手の母屋と比較しているのだろう。
きっとそうだ! たぶん、間違いない!
「そうなりますね。とりあえず、ここで見物していても何も始まりませんから、王女殿下に会いにいきましょうか」
「はい。それにしても――」
きょろきょろと周囲を見渡すメディーナさん。
「どうかしましたか?」
「――いえ。結界が……」
「結界?」
「いえ。何でもありません。それよりも、早く伺いましょう」
「そうですね」
俺は、頷き迎賓館の正面ドアの前に立ち、チャイムを鳴らす。
少し大きめの音が鳴り――、1分ほどが経過したところでガチャリと言う鍵を開ける音と共に両開きの扉が内側へと開く。
「お久しぶりでございます。ゴロウ様」
頭を下げて出迎えてきたのは、アリアさん。
辺境伯邸で働いていたメイドさんで、いまはルイーズ王女殿下の身の周りの世話をしている女性。
「王女殿下に会いに来たんだが、大丈夫ですか?」
一応、事前連絡をしていたが、とりあえず確認のために聞くが――、
「はい。すでにルイーズ様がお待ちしています。エメラス様と共に、お待ちしています」
「そうですか」
「それでは案内させて頂きます」
頭を上げたアリアさんが、2階へと続く階段の方へと歩きだす。
俺とメディーナさんは、背中を向けて歩いているアリアさんの後を付いていく。
「メディーナさんは、アリアさんとは面識はないんですか?」
「辺境伯軍の中でも副隊長以上でしたら報告のために辺境伯邸何度も行っていますから、その際に面識が出来ることはありますが、基本的に伝令役程度ですと、大勢いるメイドと顔見知りになる事は限り無く低いです」
「なるほどな」
階段を上がっていき客間の扉の前に到着する。
――コンコン
「アリアです。ゴロウ・ツキヤマ様が来られました」
「入ってもらって」
「はい。ゴロウ様、どうぞ。お付きの方は、廊下でお待ちください」
「分かりました。ゴロウ様、私は外で待機しております」
俺は無言で頷き客間に入る。
室内の調度品は以前に来た時と代わってはいない。
まぁ、そもそも調度品を買える手段はない訳だし、お金も渡してないからな。
俺は視線をルイーズ王女殿下へと向ける。
彼女は、黒髪に黒眼の日本人らしい見た目でハッ! とするほどの美少女。
普通にアイドルとしても通用するほど、そのスペックは高い。
そして、そんなルイーズ王女殿下の後ろに立っているのは、エメラス・フォン・クラウス。
クラウス侯爵家の御令嬢であり騎士。
ルイーズ王女殿下の護衛と言う事で日本に一緒にやってきた――、これまた美少女である。
「お久しぶりです。ルイーズ王女殿下」
「そのような堅苦しい挨拶は不要だと以前にお伝えいたしましたわ。ルイーズと、お呼びくださいませ」
178
お気に入りに追加
1,931
あなたにおすすめの小説
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
おっさんなのに異世界召喚されたらしいので適当に生きてみることにした
高鉢 健太
ファンタジー
ふと気づけば見知らぬ石造りの建物の中に居た。どうやら召喚によって異世界転移させられたらしかった。
ラノベでよくある展開に、俺は呆れたね。
もし、あと20年早ければ喜んだかもしれん。だが、アラフォーだぞ?こんなおっさんを召喚させて何をやらせる気だ。
とは思ったが、召喚した連中は俺に生贄の美少女を差し出してくれるらしいじゃないか、その役得を存分に味わいながら異世界の冒険を楽しんでやろう!
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
ユーヤのお気楽異世界転移
暇野無学
ファンタジー
死因は神様の当て逃げです! 地震による事故で死亡したのだが、原因は神社の扁額が当たっての即死。問題の神様は気まずさから俺を輪廻の輪から外し、異世界の神に俺をゆだねた。異世界への移住を渋る俺に、神様特典付きで異世界へ招待されたが・・・ この神様が超適当な健忘症タイプときた。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
キャンプに行ったら異世界転移しましたが、最速で保護されました。
新条 カイ
恋愛
週末の休みを利用してキャンプ場に来た。一歩振り返ったら、周りの環境がガラッと変わって山の中に。車もキャンプ場の施設もないってなに!?クマ出現するし!?と、どうなることかと思いきや、最速でイケメンに保護されました、
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
いきなり異世界って理不尽だ!
みーか
ファンタジー
三田 陽菜25歳。会社に行こうと家を出たら、足元が消えて、気付けば異世界へ。
自称神様の作った機械のシステムエラーで地球には帰れない。地球の物は何でも魔力と交換できるようにしてもらい、異世界で居心地良く暮らしていきます!
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
劣悪だと言われたハズレ加護の『空間魔法』を、便利だと思っているのは僕だけなのだろうか?
はらくろ
ファンタジー
海と交易で栄えた国を支える貴族家のひとつに、
強くて聡明な父と、優しくて活動的な母の間に生まれ育った少年がいた。
母親似に育った賢く可愛らしい少年は優秀で、将来が楽しみだと言われていたが、
その少年に、突然の困難が立ちはだかる。
理由は、貴族の跡取りとしては公言できないほどの、劣悪な加護を洗礼で授かってしまったから。
一生外へ出られないかもしれない幽閉のような生活を続けるよりも、少年は屋敷を出て行く選択をする。
それでも持ち前の強く非常識なほどの魔力の多さと、負けず嫌いな性格でその困難を乗り越えていく。
そんな少年の物語。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
異世界に落ちたら若返りました。
アマネ
ファンタジー
榊原 チヨ、87歳。
夫との2人暮らし。
何の変化もないけど、ゆっくりとした心安らぐ時間。
そんな普通の幸せが側にあるような生活を送ってきたのにーーー
気がついたら知らない場所!?
しかもなんかやたらと若返ってない!?
なんで!?
そんなおばあちゃんのお話です。
更新は出来れば毎日したいのですが、物語の時間は割とゆっくり進むかもしれません。
大工スキルを授かった貧乏貴族の養子の四男だけど、どうやら大工スキルは伝説の全能スキルだったようです
飼猫タマ
ファンタジー
田舎貴族の四男のヨナン・グラスホッパーは、貧乏貴族の養子。義理の兄弟達は、全員戦闘系のレアスキル持ちなのに、ヨナンだけ貴族では有り得ない生産スキルの大工スキル。まあ、養子だから仕方が無いんだけど。
だがしかし、タダの生産スキルだと思ってた大工スキルは、じつは超絶物凄いスキルだったのだ。その物凄スキルで、生産しまくって超絶金持ちに。そして、婚約者も出来て幸せ絶頂の時に嵌められて、人生ドン底に。だが、ヨナンは、有り得ない逆転の一手を持っていたのだ。しかも、その有り得ない一手を、本人が全く覚えてなかったのはお約束。
勿論、ヨナンを嵌めた奴らは、全員、ザマー百裂拳で100倍返し!
そんなお話です。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
異世界転移しましたが、面倒事に巻き込まれそうな予感しかしないので早めに逃げ出す事にします。
sou
ファンタジー
蕪木高等学校3年1組の生徒40名は突如眩い光に包まれた。
目が覚めた彼らは異世界転移し見知らぬ国、リスランダ王国へと転移していたのだ。
「勇者たちよ…この国を救ってくれ…えっ!一人いなくなった?どこに?」
これは、面倒事を予感した主人公がいち早く逃げ出し、平穏な暮らしを目指す物語。
なろう、カクヨムにも同作を投稿しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる